083. 自分も映画見るのは久しぶりだった
柏部駅の構内にて蓮真は人を待っていた。数日前に一緒に映画を観に行かないかと誘われ、予定も空いていたのでとりあえず誘いに乗りここで待ち合わせすることになったのである。
スマホをいじりつつ時々改札の方を見遣っていると、洋子が改札から出てこちらに近づいてきた。
「へへ、待たせちゃった?」
「いや、そんなに」
洋子は黄色地でチェック柄のスカートに真っ白な半袖を身に着けていた。洋子の私服姿は散歩で見かけていた頃からちょくちょく見ていたが、そのときとはどこか異なる雰囲気を醸していた。
「じゃ、行こっか」
「はい」
洋子が歩き出すのに合わせて蓮真も動く。相変わらず人通りの多い街であり、夏休みの今は蓮真達と歳が同じくらいの少年少女も至る所で見かけた。青蘭中や時雨中の生徒も多数混じっているのだろう。
「映画行くの久しぶりなんだよね」
「あれ、そうなんですか」
「うん。小遣い的に中々キツくて」
「ああ、なるほど」
「蓮真君はお金大丈夫だったの?」
「……大丈夫ですよ」
「うん、気を遣わせちゃってゴメンね」
蓮真の表情を見た洋子が謝る。
「まあお金のことは置いといて、実は今日行く映画のことあまり知らないんですよね」
「えっそうなの?」
「ええ、アニメ映画ということぐらいしか」
「誘った私が言うのも何だけどよくOKしてくれたね」
「そういうわけであらすじとか登場人物とか教えてくれるとありがたいです」
「うん、いいよ」
そうして洋子は説明を始めた。彼女が元々好きな作品なのか色々と説明してくれる姿には今日の気温にも負けなそうな熱が感じられた。もっともその説明はわかりやすく、その作品のどこに魅力があるのか蓮真も何となく理解した気分になった。
説明の途中で映画館に着いたので、洋子は説明を止めて発券機に向かう。洋子の方で二人分の予約はしていたようで、スクリーンが見やすい位置の座席が取れたと説明してくれた。




