080. 会場の隣に別荘を買うのはどうか
夏の陽が容赦無く照り付ける公園の隅に、蓮真と深言が休んでいた。二人は図書館で偶々会い、その帰りの途中の公園で一休みすることになったのである。深言がベンチに座り自販機で買ったアイスのバーを咥える間、蓮真は仁王立ちで腕組みをしてどこか遠くを見据えていた。
「もう少ししたら花火大会でしたっけ」
ふと思い出したことを深言は口にした。
「ん、来週だな」
「間近で見る打ち上げ花火はやはり綺麗なんでしょうね」
「ああ」
深言の持つアイスが周りの熱で柔らかくなっていく。
「何だ、花火大会行きたくなったのか」
「いえ別に。混雑の中を歩くのは面倒ですし」
アイスの表面から溶けた液が垂れてくる。深言は舌で掬い取っていく。
「家の近くで花火を打ち上げてくれたらベランダから鑑賞するでしょうけど。貴方は行くって言ってましたけど混雑とか平気なんですか」
「俺も避けたいクチだな」
「へえ……。それでも花火のために会場へ?」
「いや、会場へ行くとは決めてないぞ」
「へ?」
アイスの残り一口を咥えようとした深言が思わず止まる。
「花火大会に行くって言ってましたけど」
「花火は観に行くが、観る場所は考え中だ」
「はあ……」
要領を得ない深言。
「会場の他に綺麗に観られるスポットがあるってことですか?」
「多分な」
「多分……」
「探し回って無かったら仕方ないから会場まで歩くさ」
何とまあ無鉄砲なことである。蓮真らしいと言えばらしいのだが。
「いい場所が見つかるといいですね」
「ああ」
深言は崩壊寸前だった溶けかけのアイスを含み、そろそろ帰ろうとベンチを立ち上がった。




