073. 鳥目、というわけではない
深夜の公園で白い着物の不審者と出くわしてから一週間後、筝は懲りずに深夜の公園を訪ねていた。
今までに何度か同じような時間に同じような場所に来ているが、あのような体験をしたのは先週のアレが初めてだった。怖いもの見たさも相俟って三日前も来てみたが、あの不審者はいなかった。
やはりそうそう起こる出来事ではないのだと楽観的な考えで暗闇の公園を散策していると、またも不審者に出会ってしまった。
以前見たのと似たような背丈で白い着物なので十中八九以前の不審者と同一人物であろう。ソイツは広場をグルグルと特訓のようにランニングしている。着物がヒラヒラ舞いながら息を荒らげ走る光景などそうそうお目に掛かれないだろう。
前回もそうだがコイツはただ独り深夜でおちゃらけていたいだけなのでは。別にこちらに害を与えるつもりはないのでは。そう感じた筝はご尊顔でも拝んでやろうと白い着物が走っているコースの近くに待機してみた。
白い着物は筝に構わずコースに沿って近くまでやって来た。背丈からするに大人でないのは何となくわかっていた。顔は、特徴らしい特徴も無い平凡な少年という印象であった。筝とそんなに年齢が変わらないように思えた。
その男は筝には目もくれず遠ざかっていった。二三歩で届きそうな距離まで接近していたのに筝に気付かなかったということはあるまい。恐らく筝に興味が無かったのだ。
そう思うとこちらも変に構える必要は無いようだ。毎日出没するわけではないみたいだし筝もとりあえず無視することにした。
もしあの男が襲ってきたらこれを機会にスタンガンを試してみようと思ったが……当分そのチャンスは無さそうである。




