071. 読書は暗い所の方が落ち着く
蓮真が近所の図書館にて面白そうな本を見つけて嗜んでいた頃、「おや」と小さな声が聞こえた。
「おお」
「どうも、奇遇ですね」
そこには深言がいた。学校のときと変わらず嫋やかな出で立ちで椅子に座る蓮真を見下ろしている。右手には本を一冊抱えている。
「お前もここに来てたのか」
「夏休みからは二日に一回ぐらい来てますよ」
「なるほど」
「それにしても校外で会うのは新鮮ですね」
「そうだな」
言われてみると学校以外の場所で深言と会うのは初めてかもしれない。いつもは制服姿の深言しか知らないが、今目の前にいる彼女は白みがかったブルーデニムに薄いブラウンで裾がフリルで装飾された半袖を身に着けている。如何にも涼しげで動きやすそうな軽装である。
深言は蓮真の隣に腰掛けて本をゆったりと開いた。他の利用者もいる手前これ以上の会話を控えていたら、深言も同様に考えていたのか以降は向こうから話しかけることもなく二人揃って読書に没頭した。
深言の本にちらと目を向けると蓮真が好きな作者の名前が僅かに確認できた。深言と空き教室にいたときにこの作者の本の話で盛り上がったことがある。空き教室の薄暗さが少し懐かしくなった。
冷房の効いた快適な空間の中、二人はただ本の世界に見入っていた。
蓮真がそろそろ帰ろうと立ち上がると、程なく深言も席を立った。読み終わるタイミングが重なったらしい。
蓮真が本を棚に戻して図書室の出口に行くと、そこに深言が佇んでいた。
「折角だし途中まで一緒に帰りませんか」
「おう、いいぞ」
「では、行きますか」
と呼び掛ける深言の顔はやや綻んでいた。出口が開くと真夏の暑さをたっぷり含んだ空気を全身に浴びた。




