070. 金網を昇り降りしてみたい
青蘭中学校に辿り着くと洋子は
「へー、ここが青蘭中かー」
と声を上げた。
「ええ、そうですね」
校門は部外者の侵入を許さないとばかりに閉ざされている。部活動は午前に限られているようで校内には生徒が一切見られなかった。
「折角だしもうちょっと全体を見てみたいなー」
「それなら校庭の方に行きますか」
「なるほど、そうしよっか」
二人は校門を離れ、学校の側の道路に沿って校庭に面した方へ移る。校庭と道路の間には高い金網で区切られており当然校庭へ入ることはできないが、校舎に第一体育館と校内の様子を一望できる。
「おー、広いねこの校庭」
「そうですかね」
「時雨中よりは広いよ」
「鳥取砂丘よりは狭いと思いますよ」
「大自然と比べたら勝ち目ないでしょ……」
洋子は片手で金網を掴んでいる。
「こっちの学校に通うのも楽しそうだね」
という呟きからは羨望が感じられた。
「……時雨中での生活は楽しくない、て話ですか?」
「え?」
質問の意味を掴みかねたように洋子が返す。少しして、
「あ、ち、違うよ! 今の中学校も楽しいからね!」
洋子は金網から離した手を左右に振った。
「ただ、愛花ちゃん達がいる学校生活もいいかな、て思っただけだよ」
「はぁ……」
「じゃ、じゃーもう行こっか」
「わかりました」
烏の鳴き声が遠くから聞こえる中、二人は来た道を戻っていった。




