069. ボウガンでも可
青蘭中学校に向けて蓮真と洋子はひたすら歩いていく。その途中で畑と林に挟まれた道を通る。
「辺り一面自然って感じするね」
「はい」
「これ夜になったら真っ暗じゃないの」
「そうですね」
「一人で行くのはちょっと怖そう」
「一人のときはロケットランチャーのような護身具を持った方がいいですね」
「君の護身って違法性とか一切考えてないよね」
暫く歩いていくと右側に変電所が見えてきた。機械的な設備や電線が幾つも置かれたこの施設には時々電力会社の車が脇に停まっているが、従業員の姿は不思議と見かけずどこか無人の雰囲気が漂っている。
変電所の反対側には金属の壁で囲われた作業場のような場所が面しており、廃棄されたと見られる自転車等が横倒しに積み重なっている。
「住宅とかお店とか一軒も無いね」
「はい。でもここに自販機が」
蓮真が指さすのは道の作業場側にポツンと立っている飲み物の自動販売機だ。古めかしい建物が立ち並ぶ中でこの自販機だけ新品のように綺麗な姿をしている。
「飲み物は大丈夫ですか」
「あ、いいよ。自分で持ってきてるから」
洋子は手持ちのバッグから水筒を取り出す。そして
「ちょっと休憩させて」
と水筒の蓋へお茶を注ぎ、さっと飲み干した。
「蓮真君こそ何か飲まなくて平気なの?」
「今は大丈夫です」
「えー、ちゃんと水分は補給した方がいいよ」
「いや、本当に平気なんですが」
蓮真としては別に強がってるわけでもなく単に喉が渇いていないだけなのだが。洋子は手に握っている水筒の蓋を見つめて少しの間静止し、それからもう一杯分お茶を注いだ。
もう一杯飲むのかと思っていると洋子は蓋を蓮真の目の前に突き出した。
「ほら、これ」
「いや、そんな勿体ない」
「いいから」
そう押し切られては無下に断ることも難しく、蓮真はありがたくお茶を頂くことにする。洋子が口を付けたのとは反対側の縁に唇を当てて蓋を傾けるとほうじ茶の風味が口の中に広がり、冷たさが熱い体を癒していく。
「ありがとうございます」
「ん、別にいいよ」
蓮真が洋子に蓋を返すと洋子はその蓋を水筒に戻した。水筒をバッグにしまうと洋子は進路に顔を向けて「そんじゃ、行こっか」と急に歩くのを再開した。洋子はさっきよりも歩みが速くなっていた。




