007. あの女子どっかで見たような
清野深言は図書室にて本を物色していた。
先日借りた本の内、何冊かは既に読み終えた。それらの本を返却するとともにまた面白そうな本を探し求めていた。
紙の匂い漂うこの空間が何とも言えず落ち着く。深言が本棚に並ぶ本を一冊一冊吟味していってるところで丁度本を取っていく手が視界に入ってきた。
いつの間にか他の利用者が近くにいたようだ。深言が邪魔になってはいけないと移動しようとしたとき、本を取った人がこの前図書室で見かけた男子だと気付いた。
深言はこの前初めて図書室を利用したばかり。ゆえに図書室で憶えた顔はまだまだ少ないが、図書室で図書室らしからぬ格好をしていた風変わりな男子については忘れる気がしなかった。(今日は普通の制服姿のようだ)
しかしその男子がどんな本に手を伸ばしたのだろうか。少し興味を持った深言は男子の手元にある本に注目して、自分もその本がとても面白そうだと直感した。
だがその本は先に男子が手に取った。そうなるとじれったくなり俄然その本への関心が増すのだが仕方ない。この男子が本を棚に戻すか、男子がもし借りるなら返すまで待つか。
そう思っていると男子は深言と手に取った本とを一瞥した後その本を棚にすっと戻し、そのまま去っていった。
深言は意外の感を抱いた。もしかして自分の気持ちが態度に出てしまっていたのか。それで男子が自分に気を遣ったのだろうか。
(悪いことしちゃったかな)
深言は男子にそう思いつつもとりあえず男子が戻した本を読んでみた。
直感の通り出だしから興味を引く文章が目に入り、即座に借りることにした。
(ありがとうさっきの人)
深言は心の中で感謝しつつ、続けて他の本を物色した。
結局あの後で今借りたいと思えた本はそれだけであり、深言は借りる手続きを済ませて図書室を出た。
図書室を巡っている間、例の男子とは鉢合わせなかった。深言に本を譲った後にすぐ帰ってしまったのかもしれない。
深言は自宅にて、今まで借りた本は一旦後回しにして今日借りた本を早速読んだ。借りてよかったと思うと同時に、あの男子とは本の趣味が合うんだろうかと取り留めのないことが頭をよぎった。




