061. 直射日光の当たる無風地帯に比べたらまだまだ
「暑い……」
「ホント……」
玲と深言が愚痴をこぼす。二人とも団扇を仰ぎながら顔に垂れる汗を手で拭う。
「エアコン動かせないのキツいね」
空き教室にエアコンは付いているものの当然稼働していない。操作に必要なリモコン等もここに置いてはいない。
「こんな暑さだってのに」
玲は蓮真の様子を眺めて一言。
「何でアンタは涼しい顔してんのさ」
蓮真は平気に寛いでいた。
「もっと暑い場所で過ごしたこともあるしな」
「これ以上に?」
「暑すぎてそこらの草木が自然発火してたな」
「それ人類が住めない領域では」
「まあ、全部嘘だけど」
「あのね」
女子達が暑さ故か喋る程にだらりとしてきた。
「キツいんだったら冷房の効いた教室に戻った方がいいんじゃないか」
蓮真からすれば今のこの空き教室でも十分過ごせるが、二人の場合このままだと体調を崩すかもしれない。
「ん、まあ」
「そう、ですね」
二人とも納得しているのか否かよくわからない返事をした。暑さで脳の働きでも鈍ったのかとも思ったが、それだけではない歯切れの悪さも感じた。
それはそれとして会話に戻る。
「夜になると一気に涼しくなるんだけどな」
「その頃には私達学校の外ですしね」
「ホント私達がいる間だけ涼しくなってほしい」
だらりとしながらも会話する元気はあるらしい。
「夜に出歩くことも無いしね」
「ほう、友達と柏部駅辺りで盛り上がったりしてるのかと」
柏部駅とは繁華街のあるこの辺りで栄えた駅である。土師器屋の最寄り駅もここに当たる。
「あんな場所夜に女子だけで出歩けるか」
人の出入りの激しい街だからか治安はあまり褒められた所ではない。特に夜はニュースの特集で取り上げられるぐらいに素行の悪い輩が屯しているらしい。蓮真は実際に夜に行ったことがないので全て伝聞となるが。
「まあ、高校生になったら行ってみたいと思うけど」
「おいおい」
玲の願望を聞いて心配にもなるが、自己責任かとも思い強く止めるのは遠慮しておいた。




