060. タイヤに巻くチェーンもアートに使えるのか
店の客は自分達三人だけらしい。愛花と洋子はアクセサリのあった場所へ蓮真を案内する。
「ほら、ここ」
「ほう」
そこにはネックレスやイヤリング等がずらりと掛けられていた。各々に金属の光沢を放ち、アクセサリの銀河がその店の壁に広がっている。
「この中から相馬さんやお前に合う奴を選べばいいのか?」
「うーんと、まず最初に私達が好きなのを選ぶから、それについて意見が欲しいかな」
結局愛花達が主体となってアクセサリを選ぶらしい。
「それって俺要らないんじゃないか」
「そんなことないよ。他の人からどう見えるかって自分じゃ中々わからないし」
そういうのが気になるのか。蓮真にはよくわからないが、それ以上深掘りしても詮無い気がして「そうか」と愛花達に任せることにした。
愛花と洋子が和気藹々とアクセサリを選ぶ中、蓮真は端に掛かっているチェーンに目がいった。何の飾りもついておらず小さな円柱形の器具に巻かれている。新しいアートを作るのに恰好の材料と思われた。
「五月雨君、これ」
「ん、ああ」
愛花が蓮真にネックレスを持った手を差し出した。鈍い金色に光る四つ葉のクローバーを模った飾りがついている。何となく愛花に似合いそうだ。
「いいと思うぞ」
「そう。ならこれ買おうかな」
愛花は差し出した手を胸元に寄せ、クローバーのネックレスを大事そうに握りしめた。
「洋子さんはどう?」
「あ、ちょっと待って」
と言いつつ蓮真の方へ近寄って
「五月雨君、これって私に似合うかな」
と先ほどの愛花よろしく手に持ったネックレスを蓮真の方に向けた。白銀に輝く金属で形作られた雫のオブジェに数個のガラスがくっついている。透明、水色、紺色とグラデーションを意識したように並び、宝石のような精緻なカットが施されている。
「そうですね。相馬さんにはピッタリかと」
「そう……。ありがとね」
洋子がしずしずと手を自分の胸元へ戻す。
「んじゃ、これにしよっと」
「そうだね」
二人とも蓮真の言葉に満足したようで会計を済ませた。
そして蓮真も先ほどのチェーンを購入していった。「それどうするの」と愛花が訊いてきたので「次のアートに使う」と答えたら彼女も「そっか」とこれ以上訊いてこなかった。




