059. かき氷を食いまくりたい(奴におごらせようか)
『やあ五月雨君』
「やあ中田さん、それじゃあ」
『挨拶だけで切ろうとしないで』
流れるように通話を終わらせようとしたが失敗した。蓮真は引き続きスマホを耳に当てる。
『また買い物に付き合ってほしいんだけど』
「荷物持ちならごめんだぞ」
『あはは、別にそういうことじゃなくて。アクセサリとか見繕ってほしいんだ』
「俺が?」
『うん、いつかの木彫りとか可愛いものにセンスあるんじゃないかと思って』
いつぞやに愛花へやった猫の木彫りのことだろうか。それにしたって女性が身につける装飾品とは問われるセンスが丸っきり違うと思う。
「女物のアクセサリとか専門外だぞ」
『そう? まあでもいいよ、洋子さんと待ってるから』
「いや、承諾してないが」
『「どしきや」の前で明日の朝十時ね』
「はじきや、な」
『んじゃおやすみー』
こんな調子で金曜の夜の会話は終わった。
翌日、蓮真は行かなくていいかとも思ったが洋子に悪いとも思ったためとりあえず足を運んだ。この時期のこの時間帯はとにかく暑く、日陰の涼しさが貴重であった。
人の多さが生み出す暑苦しさを耐え土師器屋まで辿り着くと、愛花と洋子は店が作る日陰の中で待っていた。
「いやー、今日は暑いね」
「だから今日は家でのんびりしたかったんだけどな」
「そう、それは残念だね」
愛花は汗を搔きながら笑顔で蓮真を迎えた。何かの英単語がピンクのゴシック体文字で胸元に書かれた白地のTシャツに黒いショートパンツを穿いた服装は愛花の体型に不思議とフィットし、はしゃぎ回る小動物の元気さを連想させた。
「いやホント、呼び出しちゃってゴメンね」
洋子はライトグリーンのTシャツに黒いミニスカートを着けていた。この中で最年長なのもあってかとりわけ大人びて見え、それでいて如何にも涼しそうであった。
「相馬さんは気にしなくて大丈夫なんで」
「じゃー私も気にしなくて大丈夫だね」
「お前は俺達を巻き込んだ側ってことを理解してくれ」
蓮真は愛花と洋子とともに店の中へ入っていった。涼しさが移動の苦労に報いるように体に染みた。




