056. 気晴らしに炭酸水を暴飲した
愛花は部活をしているらしく、クラスの帰りの挨拶が終わった後は大抵教室からすぐ姿を消す。しかしテストの一週間前はテスト勉強期間ということで部活動が一時休止となり、一緒に帰る友達と喋りながら悠々と帰っていくのを見ることがあった。
その愛花が今日は
「五月雨君、テスト勉強するから見てもらっていい?」
とお願いしてきた。
「断る」
「えー、この前勉強教えてくれるって約束したでしょ」
「そんなこと言ったか」
「言った! 中間テスト終わったときに」
蓮真は記憶を辿ってみる。中間テストにて愛花から絡まれて自分の点数とか教えたのは何となく憶えている。その後ぐらいに愛花が勉強でわからない所を教えてほしいとか何とかねだり、それを渋々引き受けたのをぼんやり思い出した。
「あー、勉強教えるとは言ったな」
「でしょ」
「でもわからない所があったら、だろ。今回のテスト範囲でそういうのがあるのか?」
「それはこれから勉強を始めるので何とも」
「おい」
「まあどうせわかんない所が出てくるから」
「もうちょっと自分の頭に自信持てよ」
蓮真は鞄を手に持った。
「それに昨日も知り合いに勉強教えて疲れてるんだよ」
「へー」
愛花は諦めることもなく
「じゃー明日以降、五月雨君が都合いいときでいいよ。休日も可」
と妥協になってない妥協をしてきた。蓮真は休日に予定を組み込まれてはかなわないと思い
「……なら明日の放課後、この教室で」
と答えておいた。
「ふふ、ありがとね。それじゃまた明日」
愛花はそう挨拶して別れた。その帰りの姿が強く照りつける真夏の太陽ぐらいには明るく憎たらしかった。




