054. テスト前は仮病で休もうかと思ったのはこのときから
玲が「あ、来週テストじゃん」とぼやいたことで蓮真はテストのスケジュールを思い出した。
「ああ、週明けからね」
深言がしれっと補足しながら本を読んでいる。玲が放課後の空き教室にたまに加わったときも彼女は特に玲とお喋りするわけでもなく、相変わらず読書を嗜むことが多い。
「うわ、すごい余裕」
「別に余裕ってわけでもないけど」
「中間のときも点数良かったんでしょー」
「そんなことないって」
深言が耳の辺りの髪を軽く手でかき上げる。深言の中間テストの成績はよく聞いてないが学年上位であっても別に驚かない。特に国語は高得点じゃないかと思う。
「それに五月雨君の方が頭良いんじゃないの」
深言が蓮真に言及してきた。玲の矛先を蓮真の方に向けさせたいらしい。
「あー、そうかもね」
玲が特に否定するでもなく言葉を続ける。
「前に勉強教えてもらったときでもスラスラ問題を解いてたし」
「へー」
玲が顔を深言に向けたまま蓮真に目を遣る。深言は読んでいる本から顔を上げて蓮真に向いた。
「やっぱ学業優秀だったんですね」
「どうだかな」
「それなら今度私の方のテスト勉強にも付き合ってもらいましょうかね」
「あ、じゃあ私も」
「待て待て。そんな急に言われてもな」
「別に今日とは言いませんよ」
「そうそう。明日とか明後日とか」
「どこで何時にやるんだよ」
「放課後の空き教室とかうってつけですよ」
「確かにね。他の人のことも気にしなくていいし」
二人の女子がニヤニヤした表情で食い下がってくる。これ以上どうこう言っても埒が明かない気がした蓮真は頭を僅かに垂れた。
「あー、わかったよ」
「やったー、これで今回も凌げそう」
「ありがとうございます」
外の方で小さい雲が覆っていた太陽がやにわに現れた。その光が玲と深言の方へ差し込み、彼女達を上手に照らしていた。




