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さみだれは晴れ  作者: 冴木甲士
中一 一学期
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53/100

053. 一度でいいから十人ぐらいでチャレンジしたい

「じゃあ行くぞ」と蓮真は右手にいる愛花にボールを一個放った。ボールが高い放物線を描きながら愛花の真ん前へとゆっくり落ちていくのを愛花が難なく捕らえる。

 今度は愛花が「はい、洋子さん」と洋子にボールを投げる。愛花のコントロールも良く、洋子が差し出した手の上へ落ちていって洋子が掴んだ。

 洋子が「はい」とすぐボールを蓮真に投げ返すが蓮真のやや左前の方へ逸れてしまう。それを蓮真が瞬時に移動してボールをキャッチすると、また愛花にスローする。そのボールがこれまた綺麗に愛花の前に運ばれる。

「それじゃ二個目」

「え、ちょっと」

 愛花がボールを掴んだ直後に蓮真が愛花に新たなボールを投げた。ボールが放物線に沿って動く間に愛花は急いで洋子に手持ちのボールをパスし、また自分に飛んできたボールをキャッチした。洋子も続けてボールを次々にリレーしていく。

 そんな調子で蓮真が徐々に数を増やす。愛花も洋子も言葉を発せずひたすらボールのキャッチとパスに全身を集中させた。そして五個目が放たれて間もなく洋子がボールを取り落とした。

「あ、ごめん」

 洋子の声を受けて蓮真も愛花も一旦ボール投げを止めた。残りの飛んでくるボールを蓮真が捕らえる。

「いや、大丈夫。でも難しいねコレ」

「うん、マジで集中しないと」

 二人の女子が話す中、蓮真が口を開く。

「とりあえず六個ぐらいにチャレンジしてみるか」

「「えっ」」

「今の調子なら行けると思うぞ」

「うーん、そうかもしれないけど」

 愛花が首を傾げ、「洋子さんはどう?」と確認する。洋子は

「そうだね……一旦やってみる?」

 と愛花に訊き返した。

「なら、チャレンジで」

 と答えた。

「じゃあ、皆で手持ちのボールを同時に投げるか」

「わかった」

 三人は同時にボールを跳ね上げた。


 そうして三人によるお手玉が再開された。暫く五個で挑戦してたが洋子があまり得意でないのか蓮真に投げるボールが時々あらぬ方向へ飛んでいった。それを蓮真が素早くボールの位置まで走って掴むと同時に愛花へ投げる。愛花に来るボールは寸分の狂いも無く丁度良い位置へと向かっていった。

「うわ、すご」と愛花がぼやきながら、洋子の方へボールを投げる。愛花の方も蓮真ほどではないにしろ洋子のすぐ前へボールが行くようにしたが、とあるボールが誤って洋子からやや後ろの位置に飛んでしまった。

「あ」と愛花が呟く間、洋子は反射的にボールへ向かって上体を反らす。その拍子にバランスを崩し、転ばんばかりに伸ばした方向へ体が傾いた。


 蓮真は倒れそうな洋子を受け止めた。


 蓮真は洋子の様子を見るやすぐに彼女の背後へ回り込んだ。洋子の倒れそうな後ろ頭がすぐ蓮真の胸の辺りにぶつかり、そのため洋子の怪我は避けられた。

「あ、ご、ごめん」

 と洋子はゆっくり蓮真から離れていった。

「いえ、そちらこそ大丈夫でしたか」

「だい、じょうぶ。ありがとね」

 洋子の言葉がたどたどしい。愛花はポカンと口を開けてその様子を眺めていた。

「うーん、今日はここまでにするか」

「え? ……ああうん、そうだね」

 愛花が返事する。洋子も愛花も疲れているようだし、このまま続けると事故が起きてもおかしくない。

「次やるときは十個にチャレンジするか」

「リベンジする気なんだ……」

 愛花が蓮真の話し相手になっている間、洋子はただただ無言に俯いていた。


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