050. 疲れが取り切れてないかも
休み明けに一年二組の教室で、
「この前会った洋子さん、いい人じゃん」
「そうだな」
愛花が蓮真に話しかけてきた。クリクリとした目から元気な光が宿っている。
「昨日も二人で遊んだけどホント楽しかった」
「ほう」
出会って一日二日で随分仲良くなったらしい。一種の才能ではないかと思う。
「あんな子と知り合いならもっと早く紹介してほしかったなー」
「一昨日からでも交流持ててよかったじゃねーか」
「うん、まあね。それはそうと五月雨君」
愛花の声の勢いが僅かに落ちた。
「洋子さんと連絡先交換してないんだってね」
「まあ、そうだな」
「それって何で?」
「必要ないから」
「どういうこと?」
「互いに用事も無いし、連絡を取り合うことが特に無い」
「……ふーん」
愛花の表情が次第に曇っていく。
「洋子さんに五月雨君の連絡先教えてもいい?」
「別にいいが、どうしてだ」
「今後何かの役に立つかもしれないし」
「?」
「とにかく連絡先教えていいなら伝えちゃうね」
愛花はそう言って席を立ち、クラスの友達の元へさっさと歩いていった。
夕方に自宅でダラダラ過ごしていると知らない電話番号から蓮真のスマホに発信が掛かった。蓮真はひとまず通話に出ることにした。
「はい、もしもし」
『もしもし、五月雨君でしょうか』
「はい」
それは聞き覚えのある少女の声だった。誰だったかと思い出す前に相手の方から名乗ってきた。
『こっちは相馬です。二日ぶりだね』
洋子の声から先ほどの緊張した張りは緩み、親しさを感じさせる響きが出てきた。
「どうも。中田から連絡先を聞きましたか」
『うん、そう。連絡先教えてくれるのOKしてくれたみたいでありがとね』
「いえ、別に」
『今日はこれといった用事は無いんだけどさ』
「はあ」
『これから何かあったら連絡するかもしれないから、よろしく』
「はい」
『じゃ、短いけどこれで』
「はい、おやすみなさい」
『ふふ、おやすみ』
通話が終わった。蓮真はとりあえず洋子の連絡先をスマホに保存した。




