049. 明日の日曜はゆっくり休みたい
「……今日はデート? かな?」
洋子が途切れ途切れに言葉を繋いだ。
「いえ」
「違います」
愛花がまず否定し、続けて蓮真も否定した。
「以前一緒に行った店へ案内してくれって頼まれまして」
「はあ……そう」
「コイツは中田。自分と同じクラスです」
事情を端的に説明した後、洋子へ紹介した。今度は彼女を愛花へ紹介する。
「この人は相馬さん。ここらを廻ってるときに知り合った」
「中田愛花って言います。よろしくね」
愛花が洋子へ改めて自己紹介を始める。
「あ、相馬洋子です。よろしく」
洋子もつられたように名乗って軽く頭を下げた。愛花はキラキラした笑顔で洋子の挨拶を迎える。
「さっき一緒に行った店って言ってたけど、どんなお店なの?」
洋子は蓮真の方を向いた。
「雑貨屋ですよ」
「雑貨屋?」
「色んなアクセサリが置いてあったんで、じっくり見ようかなって」
「そうなんだ……」
洋子の姿にいつもの快活さが感じられない。両手を後ろにやり、右足の爪先を上下にパタパタ動かしていた。そのとき愛花が
「そうだ。もし時間があれば、一緒にどう?」
と洋子を誘った。
「え?」
「面白いものも結構あるから楽しいと思うよ」
「……」
洋子は少し黙ったが、少しして
「それなら一緒に行こうかな」
と愛花の提案に乗った。
「では、向かいましょうか」
蓮真がそう呼びかけて一行は出発した。
蓮真が先頭を進み、愛花と洋子は後ろで横に並んでついてくる。その間二人の少女はずっと何やら会話していた。
周囲の雑音が多いこともあり二人の話の内容はあまり聞こえてこない。しかし時折笑い声が聞こえることから仲良く楽しい会話を繰り広げているらしい。二人とも明るい性格だし馬が合ってもおかしくはない。
「着きましたよ」
蓮真が声を掛ける。三人の前には「土師器屋」という看板が掛かった建物が立っていた。木の板に黄色い墨を付けた筆で漢字を書きつけたような看板であり、端はところどころ薄い雲が迫るように白くなっていた。
「何かインパクトある名前だね」
「最初『どしきや』って読むのかと思ってました」
洋子と愛花が店名に感想を述べていく内、蓮真はさっさと店に足を踏み入れた。二人も続けて入っていく。
前回と変わらず暗い所だった。愛花は洋子を連れてアクセサリのあるコーナーへ進み、早速物色を始めた。
「え、これすごくない?」
「でしょ? そこらのお店より揃ってると思うよ」
「あ、これ可愛い」
二人はアクセサリの前で盛り上がった。蓮真は所在なく鋼材のコーナーを見た。いつかこれを使ってまた何か作ろうと思っていた。
「いやー、よかったよ」
「こっちも満足」
あの後欲しいアクセサリを幾つか入手したようで二人の少女は満足気に話していた。
「これで場所は憶えたか」
「うん、大丈夫。でもまた忘れたときはよろしくね」
「メモしろメモを」
愛花の戯言をあしらって、洋子に挨拶を交わす。
「それでは、自分はそろそろ失礼します」
「あ、うん。今日はありがと。新しいお店を知れてよかったよ」
「じゃーね五月雨君」
こう言って蓮真はその場を立ち去った。愛花と洋子はその場で残ってやり取りしているみたいだが、やはり蓮真の耳には詳しく入ってこなかった。




