048. 家で一日中過ごしたかった
『五月雨君、今ちょっといい?』
「おう、どうした」
『この前雑貨屋に一緒に行ったよね』
「俺が紙やすり買った所か」
『そうそう。実はあそこにもう一度行ってみたくて』
「そうか」
『ただ、経路をよく憶えてないからさ』
「それで?」
『五月雨君に道案内頼めないかなって』
「ネットで調べればいいだろ」
『調べたよ。確か土に師匠の師に器用の器で……』
「土師器屋だ」
『ああ、そうそうハジキヤね。それで検索しても何故か出てこないんだって』
「冗談だよな」
『ホントだよ。とにかく地図から場所を調べるのは難しいみたい』
「そうか」
『というわけで、お願い』
「……了解。何時行くんだ」
『今から』
「え、今からってお前」
『場所は最寄り駅の近くで。よろしくね!』
という声を最後に通話が切れた。蓮真は大きく息を吐いた後ベッドから立ち上がる。パジャマで過ごしていたのを外出用の服へと着替え、身支度を整えた。
蓮真の部屋の隅には近頃新たに置かれた紙の宮殿が静かに構えていた。
蓮真が駅の近くまでやってくる。相変わらず人が人を隠すぐらい混んでいる賑わいの中、愛花と連絡を取るべくスマホを手に取る。そのとき後ろから声が掛かった。
「や、五月雨君」
「人違いです」
「いや、五月雨君でしょ」
蓮真が立ち去ろうとするのを後ろからの声が引き留めた。振り返るとそこには愛花がいた。
「何だ中田か」
「そりゃそうでしょ。誰だと思ってたの」
「性質の悪いキャッチセールスかと」
「そんな人が何で五月雨君の名前を知ってるの……」
中田の声のトーンが落ちたが、すぐに元の調子に戻った。
「まあでも、悪いね付き合ってもらって」
「そう思うならこちらの都合も少しは聞いてくれ」
「あはは、ごめんごめん」
言葉とは裏腹に悪びれてない様子で答える愛花。淡いピンクの半袖Tシャツに黒くて丈の短いスカートを身に着けたその姿は如何にも涼しそうであり、一方でこの日の暑さに負けないばかりの活気が溢れていた。
「早速だけど例のお店までよろしくね」
「ああ」
蓮真は足早に歩き始める。愛花もペースを合わせて蓮真の横についてきた。
「しかしあの店に何の用なんだ」
「ちょっと欲しいアクセサリがあるんだけど中々見つからなくって。あのお店なら何でも置いてそうだって思ったんだ」
「アクセサリね。あの店にそんなのあったか」
「結構あったよ。望みはありそう」
「そうなのか」
「私も気になったことがあるんだけど、五月雨君はどうしてあのお店を知ってたの? 誰かの紹介?」
「この近辺を散策してたら偶々見つかった」
「へー、それはまた……」
「あれ、五月雨君じゃん」
愛花が話している途中に別の少女の蓮真を呼ぶ声が割って入った。
蓮真と愛花が振り向くと洋子が朗らかな表情で立っていた。
「今日は……」
とここで洋子が言葉を止めた。視線が蓮真と愛花を交互させていた。




