046. 宮殿を持って帰るの正直メンドくさい
深言の質問に対し、玲は返事をする。何だか落ち着きが無い様子に見えた。
「私は、ここへ休みに来たんだけど。そっちは?」
「私も同じ」
「ああ、そう……」
玲も深言もそれぎり黙ってしまった。玲は椅子の座板に付いていた両手を組み合わせた。深言は入口近くでただ立っていた。開きっぱなしの扉から涼しい風が入ってくる。
生徒が三人いる空き教室の中を沈黙が支配している。蓮真が気になることを訊いてみた。
「お前ら知り合いなのか」
「ん、ああ、知り合いっつーか」
「同じ一組のクラスメイトなんですよ」
玲と深言が続けて口を開く。
「だから互いに名前を知ってたのか」
「うん、まあ」
「じゃ、俺は引き続きコイツを鑑賞するから」
「ホントにマイペースな……」
玲が眉をひそめて呟く。深言が扉を閉めて紙やすりの宮殿に近寄ってきた。
「へえ、それが昨日話してたペーパークラフトですか」
「ああ、予定通り完成したぜ」
「ご苦労なことで。それにしても表面がザラザラですね」
「紙やすりの醍醐味だ」
「……真似する人は少なそうですね」
深言は話しながら宮殿の近くに椅子を引き寄せて座った。
「最初紙やすりで云々聞いたときはどうなるのかと思ったけど、結構いいかもね」
「どーも」
玲が会話に入る。二人ともすっかり普段の調子で絡んでくる。
そうしている内に昼休みが終わりに近づいてきたので
「そろそろ戻るか」
と蓮真は言った。玲と深言は同時に時計を見た。
「そうね。じゃ、お先」
と玲は言い、付け足して
「あ、清野さん、一緒に帰らない?」
「え、うんいいけど」
深言とそんなやり取りをして彼女も「ではお先に」と二人で空き教室を離れていった。二人が対話するときの雰囲気がさっきと別物になっていた。
蓮真は宮殿を段ボールにしまって
(あんまり関わりなさそうに見えたけど、仲良くしたかったのか?)
と玲の行動を推測した。




