044. 新しい本を買う余裕は無いけれども
ペーパークラフトを作り始めて一週間余りが経った。
空き教室にて本を読む深言が蓮真に目を遣る。
「例のペーパークラフトは順調ですか」
「ああ、明日の昼に完成予定だ」
「そうなんですか。確か宮殿を組み立ててるんでしたっけ」
「そうだな。よかったら明日の昼休み見に来るか」
「ええ、私も少し興味あります」
「お、ひょっとして工作もやってるのか」
「いえ、自分では直接作らないのですが、宮殿のペーパークラフトってどういうものか見てみたくなりまして」
「そうか。まあ俺もペーパークラフトは初めてだから過度な期待はしないでくれ」
「ふふ、期待してます」
蓮真はふと深言とその本を見た。
「それより今日は『芝!柴!司馬!』か」
深言の手にある本のタイトルを読み上げる。
「ええ。中々面白いですよ」
「名前は聞いたことあるが、歴史小説だっけか」
「はい。歴史に詳しくない人でもわかりやすいかと」
「なるほど。小説のジャンルは選ばず読むタイプなのか」
「面白い小説を選んで読むタイプです」
「違いねぇな」
深言が自慢げにしているのが少し気になったが、実際彼女が面白いと評する本は不思議と蓮真にとっても面白い本ばかりだった。最近では新しい本を読むときに深言が読んでいる本を優先するようになってきている。
話が終わると二人は読書に戻る。空き教室を占める静かな暖かさが本を読むのに快適だった。




