041. 段ボールは近所のスーパーから
深言が空き教室に入ると蓮真が既に本を読んでいた。
その近くに深言も座ったとき、蓮真の側に見慣れぬ段ボールがあることに気付いた。見るからに新品であり、誰かが最近持ち込んだものと思われる。心当たりは一人しかいない。
「あの、これはどうしたんですか」
深言は段ボールを指差して蓮真に尋ねる。
「ああ、今制作中のペーパークラフトを置いててな」
「ペーパークラフト……」
深言は鸚鵡返しした後、少し間を置いて質問を重ねた。
「えっと、何故それがここに」
「ここで制作してるから」
「授業の課題とかで作ってるんですか」
「いや、単に作ってみたくなった」
「はあ……」
深言は返事が適当になった。目の前の男は本の趣味こそ合うものの、時折突拍子の無いことをやり出す性質だった。何だか初対面のときを思い出す。
「普段からそういうのを作る趣味があるんですか」
「二か月に一回くらいはやってるな」
淡々と答えていく蓮真に対して深言は妙に納得してしまった。蓮真なら仕方ないと。
深言はこれ以上気にしないようにして自分の持ってきた本を読み出した。蓮真も読書中だ。
読書を始めて数分後、どうにも気になった深言は蓮真の作品(?)について訊いてみた。
「あのペーパークラフトって何を模ってるんですか」
「宮殿」
「ほう、壮大ですね」
「そうかな」
「出来上がったらこの教室に飾るんですか」
「いや。自室で保管する予定だ」
「ふふ。確かにここだと他の人に見つかったときに面倒ですしね」
深言はさらに言った。
「もし完成したら一度私も見てみたいです」
「おお、いいぞ。場所は空き教室でいいよな」
「はい。期待してます」
深言はもう一度段ボールと紙に目をやった。その中にある作りかけの宮殿を想像してみた。




