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さみだれは晴れ  作者: 冴木甲士
中一 一学期
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4/100

004. 今日はコレの気分だったから

 午前中、景気良く運行するバスの中に相馬洋子(そうまようこ)という少女が乗っていた。

 終点の駅にあるモールで友達と遊ぶ予定であり、洋子はスマートフォンをいじりつつ吊り革に捕まりバスの走るままに揺られていた。

 そうしているとバスが何事か急停車したため、洋子は不意によろめいて乗客の一人にぶつかってしまう。

「あ、す、すみません」

 洋子はぶつかった相手に向き直って謝った。相手の男子は全く気にしないかのように

「ああ、大丈夫です」

 と返した。

 自分とそんな歳が変わらないであろう男子の落ち着いている様子を見て、不注意で衝突してしまった自分が何だか余計恥ずかしくなった洋子は早く目的地に着いてほしいと念じた。


 洋子は羞恥心を誤魔化すべくスマホをまたいじっていたがどうにも落ち着かない。バスは今どの辺を走っているのか確認するため洋子はバスの前方に備え付けられている、次の目的地を示すモニターに目を向けた。

 視線には先ほどぶつかった男子が変わらず立っている。洋子はモニターを見て後五分くらいで着くかなと視線をスマホに戻そうとしたが、男子の胸ポケットに入っているものが心に引っかかった。


 あれ、カニかま……?


 洋子は困惑した。見間違いでなければ確かに生のカニかまがポケットから存在をアピールしていたが、衝突した際にはそんなもの無かったと思う。あったら普通に気付いてるし。

 いや、流石に見間違いだろうと洋子は男子の様子を改めて確認した。


 どう見てもカニかまだった。胸だけでなくズボンのポケットにも入っていた。


 洋子はさらに困惑した。この人何してるの、という疑問が頭に湧くのを抑えきれない。

 相手の男子が不可解な存在に思えてきたところで丁度バスが終点に到着した。洋子は男子との間に座席から立った人を挟むようにして降車した。

 洋子は気分を切り替えようと友達と遊んだが、その日は乗っていたバスの中の光景が頭から離れなかった。


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