039. 次からあの雑貨屋を最初に利用しよう
洋子と別れた後、蓮真は紙やすりを求めてコンビニを数件か回ったが見つからなかった。
洋子の「視野を広げた方がいい」というアドバイスを思い出す。コンビニ以外の店も見てみようとさしあたり以前木彫りの道具を買った店に寄ることにした。
人の往来を躱して目的の店を目指しているとその道中でクラスメイトに出くわす。相手の方が先に口を開いた。
「あ、奇遇だね」
「ああ」
そこには私服姿の愛花が立っていた。若草色の半袖Tシャツに裾が破れたようにヒラヒラしている青いデニムのショートパンツを身に着け、頭には日差しを避けるように白いキャップを被っている。服から出た腕や脚は白い肌に覆われている。春の陽気の中で満開に咲く花を連想させた。
「今日はここら辺で買い物?」
「そうだな」
「どこ行くの」
「木彫りを作る際に世話になったところ」
「え、木彫りって猫ちゃんのこと?」
「そうそう」
木彫りを言葉に出すと愛花はにわかに調子を変えた。
「良かったらついてってもいい?」
「ん? ああいいが」
「ありがとう」
愛花は期待に満ちた表情で蓮真の真横についた。そのまま二人は店までひたすら歩いていった。
「ここら辺にこんな店があったんだね」
「まあな」
二人が入った店はこじんまりとした雑貨屋だった。細かい物が店の四面を囲う形で置かれている。店の明かりは細かい電球がぽつぽつ並んで光を発している程度であり、どうにも薄暗い。
「ここで彫刻刀やら塗料が揃ったし、目当ての物があればいいが」
「目当ての物って何?」
「紙やすり」
「へえ、また何か作るんだ」
「ああ、紙やすりでペーパークラフトみたいなものを作ろうかと」
「え?」
愛花は戸惑うも、すぐさま確認した。
「えっと……紙やすりで何か磨くんじゃなくて、紙やすりそのもので何か作るの?」
「そうだが?」
「普通の紙じゃダメなの?」
「紙やすりのアートって聞かないだろ? なら一度どういうものか見てみたくなってな」
「そりゃ普通は無いよね」
蓮真が店を見渡すとすぐ近くに紙やすりが置かれているのに気付いた。
「おお、あったあった」
「何か色んな種類があるね」
紙やすりは色々な大きさ、色、形のものが一つのコーナーに並んでいた。その種類は実に様々だが、例えばラッパの形をした青色の紙やすりとか売れるのか疑問である。
蓮真は紙やすりの中で虹色に輝く長方形のものを選んで会計を済ませた。それで何を作るつもりか愛花は考えたが考えるだけ無駄な気がした。




