038. 犬よりも猫が好きと見た
蓮真はコンビニの中にいた。店内には客が数人食べ物や飲み物等を物色しており、その中には蓮真以外の学生もちらほら見られる。
そんなコンビニの客の一人であった洋子がお菓子のコーナーに向かって立っていた。
「どうも」
「あ。君もお菓子買いに来たの?」
「いえ、自分は紙やすりを」
「コンビニに置いてるのそれ」
「わかりませんが無ければ他のコンビニで探そうかと」
「もうちょっと視野を広げた方がいいと思うよ」
(いつものことだが)洋子が呆れた様子で蓮真にアドバイスを送る。蓮真が不得要領に「はあ」と答えると、洋子が心の中で「わかってないなコイツ」と言ってるような雰囲気を感じたが、彼女は続けて質問してきた。
「大体紙やすりを何に使うのさ。美術の授業?」
「紙やすりを材料に何か作ってみようかと」
「君、紙やすりの用途知ってる?」
「ええ、勿論」
「それなのに材料に使うってアナタ」
「あの質感を上手く活かせばきっと何か役に立つ道具になると思うんです」
「活かした結果物を磨く道具になったと思うんだけど。おっと待ってて」
洋子がいつの間にかお菓子コーナーを横切ろうとしている客に気付いてさっと避けた。蓮真も同様にどいた。洋子は「ちょっと会計済ませるわ」とレジに向かったので、蓮真は何も買わずコンビニの外で洋子を待つべく出口に向かった。
日陰になる場所でスマホをいじっていたら洋子の「お待たせ」という声が聞こえた。蓮真は洋子とともに歩き出して、会話を再開した。
「しかし君は工作が趣味なの」
「時々やりますね」
「へえ、どういうの作ってる?」
「この前なら猫の木彫りとか」
「おお、可愛いじゃん」
「物干し竿から犬のオブジェ、とかですね」
「え、それどうやって作ったの」
心なしか洋子の顔が少し青く見える。コンビニの冷房で体を冷やしたのか。
「でも猫の木彫りか。家に飾ってるの?」
犬のオブジェの方はスルーして、洋子は木彫りに関心を向けた。
「クラスメイトにあげました」
「太っ腹だね。作るの大変そうだけど」
「ちょっと借りがあったものですから」
「どんな借りがあったのさ」
「ん……ちょっと忘れました」
「そうなんだ……」
洋子は腑に落ちないといった様子で返事した。




