036. ルビコン川とか渡ってみたい
散歩を習慣にしていると日の出ている時間が段々長くなっていくのを身をもって感じる。蓮真は散歩中に太陽を見上げてそう思った。
青蘭中の近くに差し掛かったとき、細身な女生徒が歩いてくる。見ると朋美だった。
「志田先輩」
「ん、ああ後輩君か。こんな時間にまた不思議な生物探し?」
「散歩ですね」
「へーそうなんだ。何時間ぐらい歩いた?」
「大体二時間ぐらい」
「おー、結構足が強いんだね。小学校のとき運動部だったとか?」
「いや特には」
「そうなんだ。ちなみにコースは決めてるの?」
「気分によってまちまちですね」
「そっか」
朋美は明るい声で蓮真に
「なら途中まで一緒にどう?」
と提案してきた。蓮真も否やは無いので
「ああ、いいですよ」
と答えた。朋美は「じゃ、じゃー行こっか」と言って歩き出したので蓮真も朋美の横に並んで歩き出した。
陸上部だからか朋美は蓮真より足の運びが速い。蓮真は朋美のペースに合わせていつもより早足になる。
そうしていると朋美から話しかけてきた。
「君、ジョギングってする?」
「いえ。専ら歩くだけです」
「へー、どうして?」
「毎回息苦しくなるのはどうにも苦手で」
「あー。でも走ってる間は気持ちいいものだよ」
「先輩は毎日ジョギングを?」
「休日で偶にね。平日は部活があるし、休日も遊びたい日はあるから」
「なるほど」
ここで話が途切れる。朋美も部活の疲れがあるように感じられたので、朋美から話が振られるまで大人しくしようと思った。
そんな感じで青蘭中からさほど遠くない住宅地を歩いていたら朋美がとある民家を指差した。
「あそこが私の家だね」
「そうなんですか」
朋美が指摘した民家の近くまで来てよく見ると、朋美の苗字である「志田」が書かれた表札が掛かっている。この住所なら確かに自転車ではなく徒歩通学で問題なさそうだ。
「じゃー、また明日」
「それでは」
朋美は家の玄関で別れた。蓮真もそろそろ帰宅しようと足を自宅の方へ進めた。
朋美の家は散歩のときに何度か横を通り過ぎたことはある。ひょっとしたら気付いていないだけで愛花や深言といった知り合いの住んでいる所もニアミスしていたのかもしれない。他愛もないことではあるが世間が博物館で展示される街のミニチュアのように狭く感じてしまい、蓮真は成長したらもっと知らない場所を踏破してみたい気分に駆られた。




