034. もちろん戦闘用に改造済み
テスト二日目、蓮真は特に詰まることもなくすらすらと解いていった。
全教科のテストが終わった後、愛花が座っている方から
「いやー、お疲れ」
という声が掛かった。蓮真もそれに応じる。
「ああ、そっちもお疲れ」
「テストの手応えどうだった?」
「まあ、普通」
「普通ねえ……まあそんな難しい感じじゃなかったかもね」
周りに話が漏れるのを気にしているかのような声量で愛花が言う。
「五月雨君はこの後どうするの?」
「散歩」
「へー、また何というか渋いご趣味で」
「結構面白いと思うぞ。お前は?」
「テスト終わったから友達とコンビニのスイーツでお祝い」
「生徒指導に見つかっても知らねーぞ」
「流石に下校途中にはやらないよ」
蓮真と愛花がそんな会話を交わす教室の中、もとい学校の中ではひとまず緊張の糸が切れた生徒達がガヤガヤと騒いでいる。テストのための勉強から本番まで根を詰めてきた生徒達がその反動で各々今日を楽しむのは想像に難くない。
蓮真が自宅へ帰った後、再び外に出て散歩していたら制服姿の洋子と会った。
「こんにちは」
「お、五月雨君」
洋子は挨拶するなり蓮真の背中にある物に目を向けた。
「今日は釣りにでも行くの?」
蓮真が持ち運んでいるのは釣り竿だった。蓮真の肩の後ろからその細長い姿を遠慮なくアピールしている。
「いや、別にその予定は無いです」
「えっと、ならどうして釣り竿を?」
「護身用の武器として使えそうかなって」
「あ、そう……」
洋子は無気力に呟いた。リーチが長いから攻撃には便利だと思うが、洋子には興味ないみたいだ。
「あ、ところで青蘭って昨日からテストあったんじゃないの?」
蓮真の通っている青蘭中学校について地元の人は省略してよく青蘭と呼ぶ。ちなみに洋子の通う時雨中学校も同様に時雨と略す。
「ええ、そうですけど。何で知ってるんですか」
「青蘭に私の友達がいてね、愚痴にこぼしてたよ」
「そうなんですか」
青蘭中学校と時雨中学校の学区は隣り合っている。違う学校でも塾が同じで仲良くなった友人がいるのかもしれない。
「君はテストとかどうでもよさそうだね。ひょっとして勉強得意?」
「さあ、自分ではよくわからないっすね」
「へえ、何か得意そうだね。よかったら勉強教えてほしいなあ」
冗談交じりな調子で話す洋子に、蓮真は一つ尋ねることにした。
「相馬さん、確認しますが何年生ですか? 自分は一年です」
「え? そうなの? 私は二年」
洋子はニヤニヤした笑顔から驚いた顔に変わり、目をぱちくりさせた。
「え? 今まで敬語使ってたってことは年上ってわかってたってこと?」
「確信はありませんでしたが勘で」
「そうだったんだ……同い年だと思い込んでたよ」
洋子は少しの間静かになった。硬い煎餅を粉になるまで噛み砕かんばかりに新たにわかったことを咀嚼している様子に映った。
やがて洋子の口から結論が出た。
「じゃあ勉強教えてもらうのは無理だね」
蓮真と洋子の立っている場所に風が一瞬強く吹いた。その風は砂をさっと巻き上げ、綺麗に吹き払っていった。




