032. 今日は生け花に挑戦する予定でしたが
中間テストが行われる当日、蓮真が登校してきたときには生徒達から不安や緊張が漂い、校舎の中が鉄火場みたいな雰囲気を醸していた。
蓮真が登校した後、愛花が教室に着いて自分の席へ歩いてきた。
「おはよう」
「ああ」
「テストの自信はどう?」
「まだ受けてないので何とも」
「だよね」
からかうように笑う愛花。特に緊張しておらずいつも通りの調子に見えた。
「まあ、なるようになるさ」
「呑気なもんだね」
「お前も大概だろ」
「そうかなー?」
蓮真と会話しながら愛花は鞄の荷物を机の中に移し、席に着いた。
本日の分のテストが終わり、午前中に帰ることとなった。愛花は「じゃーね」と蓮真に挨拶した後クラスの友達の元へ向かっていった。
昇降口にある水飲み機で喉を潤していると「あ」という声が聞こえた。声のした方へ向き直るとそこには玲がいた。
「おっす」
「よお」
「そっちはどうだった」
「至って元気だぞ」
「健康の方じゃなくてテスト」
「ああ、いいんじゃないか」
「うわ、自信あるんだ」
「そっちはどうなんだ」
「……まあ、別に……」
「そうか、自信満々だな」
「私のリアクションをどう解釈した?」
二人とも上履きから通常の靴へと履き替え、校舎の出口へ歩き出す。さりげなく玲が蓮真の横に並んで歩いてきた。
「しかしまあ、午後から自由時間ってのはいいね」
「テストの勉強はいいのか」
「テスト? 何の話?」
「なかったことにしても無駄だろ」
「そんなのより今を遊びつくす!」
「赤点からの補習ってオチにならなきゃいいけどな」
「不吉なこと言うな。アンタはテスト勉強で時間を無駄にする気?」
「お前にとって学生の本分はゴミ同然なのか」
「うるさい。でもまあ、補習になったら嫌だし少しはやるか」
「そうか、頑張れよ」
「何他人事みたいに言ってんの? アンタも一緒だよ」
「……何故?」
蓮真は訝しげな表情を玲に向けた。テストで全く習ってない範囲の問題が出たら同じ顔になりそうだ。
「あんだけ勉強大事みたいなこと言ったんだからフォローぐらいしてよ」
「いや、別にそんなつもりは」
「言い訳は受け付けないから」
強めの語気で蓮真の発言を封じてくる玲を見ると、笑顔をこちらに向けているのがわかった。さっきまでテスト勉強を嫌がってたのにどういうことか蓮真には理解しかねた。
かくして、二人が校門を出る頃には一緒に勉強する予定が決まった。




