028. 護身術が一番いいかも
日差しが地上を暖める日和に清涼な風が流れている。蓮真はその中をゆったり散歩していた。
時雨中学校のすぐ側を通りかかったとき、その学校の制服を来た学生をちらほら見かけた。
そのような学生の中の一人が蓮真とすれ違おうとしたところ、
「あ、五月雨君だ」
と蓮真の名を口にした。振り向くとそこにいたのは洋子であった。
「こんにちは、相馬さん」
「どうしたのこんな所で」
「散歩ですね。そちらは今帰りですか」
「うん、そう。ここら辺で会うの初めてだね」
「言われてみると」
車が近くを通行してきて、二人は道の端に寄った。洋子は片手に掴んでいた鞄を両手に持ち直す。
「いつもこの辺散歩してるの?」
「いや、散歩する道は毎回バラバラです」
「あー、だから今までかち合わなかったのかな」
「あと、散歩しない日も結構あるので」
「なるほど。そっちは帰り早くていいなあ」
「自分は部活とかやってないので。相馬さんは何か部活をやってるんですか?」
「うん、テニス部」
洋子は肩にラケットを背負っていた。
「ああ、だからラケット持ってたんですね。てっきり痴漢撃退用かと」
「そんなわけない……って言いたいとこだけど確かに武器に使えそう」
洋子は背負っているラケットをちらりと見た。網の部分はともかく網を囲う縁に当てるよう殴りかかったら攻撃には十分役立つだろう。
「スタンガンとか警棒とかの方がもっと役に立つかと」
「いや、学校に持ってきたら没収されるでしょ。せいぜい防犯ブザーまでだよ」
洋子に窘められる。自衛目的だから問題ない気もするのだが、仕方ない。
「でもこの辺りも不審者の情報ちらほら出るし少し怖いね」
「相馬さんにはラケットがあるじゃないですか」
蓮真は洋子の肩にかかっている道具を指差した。
「武器にすること前提で言うのやめて。あと君もあまり遅くまでこの辺をブラブラしない方がいいと思うよ」
「そうですね。次からはスタンガンや催涙スプレーを手に外出することにします」
「君が不審者扱いされても知らないよ」
呆れ顔でそう述べる洋子。自衛の手段を講じるのも楽ではないらしい。




