023. いずれ散歩で日本縦断してみたい
蓮真は街中をぶらぶら歩いていた。
散歩が好きで休みの日はよく気の赴くままに近所を巡っている。
そのとき、首の辺りまで伸びたウェーブの髪にヘアピンを留めた少女がこちらを見て声を掛けた。
「やっ」
「どうも」
相馬洋子だった。先月から不思議と何回か顔を合わせてきたが名前は先週知ったばかりである。
シースルーな長袖に空色の半袖Tシャツを重ね着し、漆黒のミニスカートとスニーカーでコーデしたその格好はこの頃すっかり暖かくなった春の日和に合っていた。
「そっちは何か用事?」
「散歩ですね。相馬さんはお買い物ですか」
「うん、といっても小遣いと相談しながらだけど」
あまり洋子の懐事情はよろしくないらしい。蓮真も薪や塗料等を買ってるから似たようなものだが。
「まあ見てるだけでも楽しいしね」
「なるほど」
「君の方は普段どこを散歩してるの」
「特にコースは決めずに、その場の気分で決めてます」
「へえ。でもここら辺りでよく会ってるけど」
「偶々、ですかね。来月には違う場所がメインになってるかも」
「そうなんだ、例えば?」
洋子は平坦な声で尋ねてきた。
「そうですね、時雨中の近くとか行ってみようかと」
「ウチの近くじゃん。ひょっとしたらまた見かけるかもね」
「今でも中々の頻度で遭遇してますけど」
「ははは。ホントどうしてだろ」
「ヨーロッパ一周旅行しててもばったり会いそうな気します」
「あんま否定しきれないな……」
二人の声は周りの雑踏に搔き消えていった。




