021. デモトレードがゲームみたいで楽しそう
暖かくなり長袖の制服を身に着けていると少し暑く感じる日のこと、蓮真は校内を散策していた。
一年一組の教室の側を通りかかると、教室から廊下に出てくる松田玲と会った。
「あ、五月雨」
「ん、松田か」
「ようやく名前を憶えてくれたか」
玲はやれやれと言いたげな表情をとった。
「とりあえず昨日はありがと。少し気が晴れたわ」
「別に事態の解決には役立ってないけどな」
「確かに」
「相手と仲直りしたのか」
「まーね。お互いに謝って元通り」
玲は昨日空き教室から戻った後、友人に謝った。
とはいえ流石にクラスメイトが沢山いる教室の中ですぐに謝るという度胸も無かったので、放課後になって友人が一人で下校する所を追いかけてそのときに悪く言ったことを謝罪した。
卑怯だとは我ながら思った。それでも友人は「私こそごめん」と頭を下げた。どうやら向こうも反省していたようで、しかし謝ろうにも中々勇気が出なかったのだそうだ。
経緯は以上の通りだが、当然蓮真はそこまで詳しく知る由も無く、玲もそこまで深く説明するつもりは無かった。
「そうか」
だから、蓮真は玲から元通りと聞いてとりあえずそんな返事をした。
「なーに? 心配してくれたの?」
にやにやと問いかけてくる玲に対して蓮真は
「お前の機嫌が昨日よりずっと良さそうだからな。推測してみた」
とあっさり返した。
玲は一瞬真顔になったと思うと、
「そっか」
とだけ言った。
「じゃ、校内でFXできる場所探してるからこれで」
「よく知らないけど未成年じゃできないんじゃないのそれ」
そんなやり取りをしながら蓮真は廊下を歩き出し、玲と別れた。
(気が向いたらまた空き教室に行こうかな)
蓮真が見えなくなった後、玲はそう考えていた。




