015. 馬の走る姿もいいよね
昼休み、生徒達が校庭や体育館で遊んでいる時間に志田朋美は校内を一人で歩いていた。
特別な理由があったわけではない。ただ気紛れに、校内を散策したくなったのだ。
一階のプレハブの辺りに来ると蓮真が外に向かって両腕を広げて立っていた。
何をしているのかは不明だが、朋美はとりあえず声を掛けてみた。
「や、後輩君」
「ああどうも、先輩」
「こんな所で何やってたの」
「日光浴をしていたのです」
「今曇りなんだけど」
「先輩には感じられないのですか。雲の向こうで燦々と輝く太陽を」
「そりゃ太陽は雲の上にあるだろうけども」
訊いてみてもやはり何をしているのかはわからなかった。
今度は蓮真が朋美に話を振った。
「この空を自由に飛べたら楽しいだろうな。そう思いませんか」
「話が急に飛んだね。まあ楽しいかもね」
「でしょう。もっと近くで太陽の光を浴びたらどうなるか体験してみたいのです」
「へーそうなんだ」
蓮真の語った理由はよくわからないが、大空を翔るというのは幼少の頃に夢想したことはある。
「でも走るのが楽しいから、別にいいかな」
「そうなんですか」
蓮真は真顔になって少し考え込んだ。
「先輩が走っているところを見てみたいです」
「え、何で」
朋美は少し表情が変わった。蓮真は気にせず言葉を返す。
「勘ですけど、走っている先輩の御姿はきっと格好いいでしょうから」
「ふーん」
努めて平静に返事をした。
「陸上部の練習でなら見られるよ」
「ああ、先輩陸上部でしたか」
「そうだけど言ってなかったっけ」
「初耳ですね」
「そっか。まあ気が向いたら見に来ていいよ」
その日、朋美は部活でいつもより少しだけ速い時計を出した。




