第91.2話 幕間の間:お昼の行事と夜の任務
お読みいただきありがとうございます。
昨日一年ぶりの投稿をしました。この作品のことを覚えていらっしゃれば幸いです。
私自身の記憶がヤバかったので、しばらくは情報整理回です。
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温泉に浸かり始めて数分ほどたった。
酷使した体が回復している気がするし錯覚な気もする。どちらかよく分からないので良いように捉えよう。体力とスタミナアップ待ったなし!
『さて、どこから話そうか……じゃあ、神様に挑みに来た愚かな勇者グランが転生して女になっちったお話から』
「人生の終わりと始まりから!?」
温泉卵になっちゃいますわ!
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ステラの生い立ちの話だとか、小学校に入学した話だとか、そんな話を長々としているとゆで卵になってしまうので、林間学校のことから振り返ることにした。
私がこの林間学校でやることは二つある。お昼にしないといけないこと、夜にしないといけないこと。
とりあえず前者から整理することにした。
お昼にやること、それは何といっても、この林間学校という行事を楽しむことである。
『しかし酔狂な学校だよね。林間学校なんてさ』
「学級内のみんなの仲を良くするためですって。すなわち、もうすぐクラス替えですから、その時に仲良くできるように……というより、問題が起きないようにって話でしょうね」
まぁ、今のクラスのあの構成が完全に新しくなるのだから、もめ事が起きるのは無理はない。実際、私が以前もめ事を起こした張本人なのだから間違いない。
「それでそういう理由もあって、この林間学校ではクラス混合の班を作って、お昼はその班ごとに競争する行事が行われているってわけ」
『オリエンテーリングでしょ。あれ結構歩かされるからへとへとなんだよね』
「それは私のセリフですわ!!」
歩いたのは私、突かれているのも私だ。神様は黙って宝石にいるだけでしょうが!
オリエンテーリングとは、間等で地図を頼りにチェックポイントを巡って、そこにある課題(まぁ私には簡単すぎる問題だが)をクリアしていき、得点を競う、要するに、広大なフィールドを使った、班対抗レクリエーションだ。
子どもはやはり競争に弱い。競争するのなら勝ちたいと考えるのが子どもである。
「かくいう私も……勝ちたい! とくにあのローズマリーに!!」
『ちょっといじらしいご令嬢だね』
「ちょっといじらしい? めっちゃいじわるっぽい女の子ですわよ! えぇ、今回こそ赤っ恥をかかせてやりますの!」
『なんというか……君も子どもだよねー』
「だから子どもじゃありませんわ!」
いや、確かに子どもなのだが、だがしかし特に精神年齢は大人のはずで。
つまり私は大人のふるまいを普段からしているわ――『いや嘘も大概にしろよ』――まだ私が話している途中でしょうが!
っとと、こほん。つい無邪気になってしまった。話を戻そう。
競争するのなら勝ちたいと考えるのが子どもであり、すなわち競争というのは団結力を高める。
だから、その中で班員ごとの仲は自然と良くなる、そう期待できる。
『あれ? 君の班は仲が悪かったような』
「そうなの。何が悪いんだと思いまして?」『相性でしょ』「諦めが速い!」
――が残念、私の班はあまり仲がいいとは言えない。
全員の関係がギスギスしているわけではないが、メラクとチエの仲がいつも悪いのだ
私の班は五人構成。
男が三人、メラク、ナーコ、ミズリィ。ざっと説明すると、メラクは知り合い、やんちゃなやつ。ナーコは能天気、ミズリィは眼鏡だ。説明終わり。
こいつらは勝手に三人で遊んでいるくらいには仲がいい。
『君も混ざって四人で遊んでいたよね。男四人にしていいんじゃない?』
「前世が何だろうが私は女なのでお間違いなく」『そうだねー君は女の子!』
そう、問題は女。私ことステラとチエさんである。
ざっと説明すると、ステラは私、チエさんはおとなしい、というよりか弱い女の子だ。
決して、女通しのどろどろ血みどろバトル、みたいなのが起こっているわけではない。むしろチエさんとは超仲良し、のはず。
「…………ですわよね???」
『知らね』「神様なんだから知っとけよですわ」
問題があるとすれば、チエとメラクの相性が悪いということ。
黙って従ってくるチエに対して、メラクはあまりいい気がしないらしく、それに小学生らしい心理も相まって、すぐにちょっかいをかけている。
本当に困ったものである。明日こそ仲良くやってくれればいいのだが、果たして――
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昼は昼で考えないといけないことがあるが、問題はもう一個の方である。つまり夜にやらないといけない、任務の話である。
『なんだろう、みんなでパジャマパーティー?』
「たしかにやりたいですわね。余裕があれば、ですが」
『じゃあ今回は無理そうだね』
「だから諦めが早いですわよ!?」
私はこの林間学校にて、もう一つ、大きな依頼を任されている。
それは、魔物退治である。魔物、正確には子どもの妖狐を殺す、そんな任務だ。
こんなことをやらないといけなくなった原因、それは一年ほど前、面倒な男に魔法が使えることがばれてしまったからだろう。
『いやー、まさかミーハー執事がホントに情報に通じていたとは!』
「どうせ神様はいくらか情報を持っていたんでしょう?」
『さてどうだか、それは神のみぞ知る』
「つまり知ってましたのね!?」『ひみつー』
ミーハー執事というのは私の隣の家の執事である。
名前はカルトラ、顔がいい。説明終わり。
……いや、正確には、それ以上のことを私は知らない。
おそらく彼は情報通というより、情報を秘密裏に集め、それを何かに使う、そういうことを生業の一つにしている男なのだろう、多分。詳しいことは知らない、知りたくもない。
その厄介執事に私の秘密がばれてしまい、それから私は脅される形で、彼の依頼を定期的に受けざるを得なくなった、というわけである。
「はーホント疲れますわ。まったく、こき使われる私の身にもなってくださいませ」
『そんなこと言いつつ、なんだかんだいつも楽しそうにやっているじゃん』
「そんなことありませんわ。ただの義務感みたいなものですの」
かつて最強と呼ばれた勇者だった頃、私は数多もの任務をこなしてきた。だから任務を受けることは慣れているし、正直に言うと、ほんのわずかに安心感すら感じないこともない。
それに、勇者だったころの、クラーケン討伐だとか、神の討伐だとかに比べたら、今の私が受けている任務なんて簡単極まりない。まさに、子ども騙し、といったところだ。
今回受けた依頼『妖狐退治』、これだって簡単だ。なにせ、今はまだ本格的に危険性が発生していないただの動物なのだから。
私にできないはずはないし、今ここにいる私が果たすべき任務なのだ。そう言い聞かせ、自信を奮い立たせる。
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『もうそろそろ上がったらー?』
「もう少しだけ、考え事をさせてくださいませ」
『ふーん、ま、のぼせないようにね』
「お気遣いありがとう」
理論上は全く問題ないのだがなんとなく気持ち的に困るので、他の女子生徒が入って来る前には出たいところだけど、まだしばらくは来なさそうだ。
じゃあ、もう少し考え事を続けよう。
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お読みいただきありがとうございます。
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