第90-4話 Day2昼:藪から棒に医者となりて
お読みいただきありがとうございます。
略して藪医者です。
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できるとは言ったものの、当然詳しい事はわからない。
人間も動物も魔物も大体一緒だろう、という甘い考えのもと、覚えている範囲で人間に有効な方法を試すことにした。
「その一。まずは傷口を洗い流しますわ」
私は妖狐を抱え込んだまま川に近寄り、妖狐の足を川に浸けた。
「ちょっと染みますわよ」
「おぉー、なんかそれっぽいな」
「それっぽいって何ですか。ぽいじゃなく、それですのよ」「どれだよ」
膿で汚れた部分を水の流れで落とす。土と血が歪に固まった固体もゴシゴシと。
「そんな乱暴で大丈夫なのか?」
「えぇ、私は詳しいから大丈――きゃっ、危ないですわよ。まったく、顔に怪我したらどうしますのよ!」
「明らかに反抗してるぞ、こいつ」
「そうも見えますわねぇ」
おっと危ない。なかなか一筋縄では行かせてくれないようだ。
やることは間違っていないんだけど、どうも加減がわからない。
これが人間だと、ある程度コミュニケーションのもと調整できる。ただ動物に対してはそうもいかない。
「痛いのはもちろんわかるけど、少し我慢してくださいませ」
当然通じるはずもないので、無理やり強行した。
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「ゼェ、ハァ……こん……なと……ころで……いいで……しょう…………」
丁寧に擦り、酷い汚れが血とともに流れ落としたので、この工程はおえることにした。
正確にはただただ加減が分からなかったので、適当なタイミングで終えた。足から流れ出る血が綺麗な色になってきたので、これくらいにしてやろう。
「少し……息を、整えさせてくださいませ……スゥゥ、ハァァ」
この汚れが傷が酷くなった原因なのだから、これを取り除くだけでも傷はいくらかマシになる……はず。ってか疲れた。
「あってる? これ、ほんとにあってる?」
「えぇ、おそらくは?」
あら、ところでどうして私がこんなに疲れているか、ですって?
そりゃもちろん、無理やり傷を洗ったから、に決まっておりますわよ?
「引っ掻き攻撃を躱しつつ、その足を洗っていく、というのはなかなか大変ですわね」
「いや、それ絶対間違ってねぇか!?」
間違っているかいないか、で判断すると、間違っているのかも? ただ、これが最善手だったので仕方がない。
世の中、正しいだけが全てではない、という屁理屈でまとめ、早速次の作業に取り掛かった。
「その二。布で足をぐるぐる巻きにしますわ。誰かハンカチは持っていませんかしら?」
「「「もってない」」」「こいつら……」
「そんなお前は持っているのかよ」
「当たり前でしょう? 紳士淑女ならハンカチくらい持っておきなさい」
「お前そんなこと言うんだな。ウケる」
「ウケていないで間に受けなさい」
仕方がないので私のハンカチで。無くしたらアルカに怒られるのに……まぁ、これも仕方がない。
ちゃんとした巻き方がわからないから、解けないようにぐるぐる巻きにする。とりあえず解けないように強めに巻いて。
「クシュー!!」
「はいはい、もうあなたの引っ掻き攻撃には慣れましたわよー」
「めちゃくちゃ嫌がってるぞ、こいつ」
「そういう解釈もできますわね」
間違っているかいないかで言うと以下省略。とはいえ、緩めに巻いても意味がないし、反抗されようがやることはやるべきなので。
「痛いでしょうが、これくらいは許してくださいませ」
分かりもしない言葉を押し付けつつ、ぐるぐるとハンカチも押し付け、それからそっと地面においた。
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手順は終わりだ。正確に言えば、私ができる手順は終わりだ。
「さて、これでひとまず大丈夫ですわ」
「ほんとにこれだけで良いんですか?」
「そんなこと私に言われましても」
はっきり言おう。
わかるかっ!!!
そもそも人間の治療方法だって知らないんだぞ!
少なくとも治癒魔術を使わない方法は、今やったあたりしかまともに覚えていない! 自慢できることではないけど!
「でもなんかまだいたそー。なんか血も出てるし」
そりゃそうだろ、これは所詮応急処置、この治療方法ですぐに傷が癒えるはずもない。
いずれ癒えるので、それ自体は全く問題ないのだが……
「お前さぁ、これちゃんとあってんの?」
「えぇっと、それはもちろんですが……」
問題は、この妖狐の動きが今なおぎこちなく見える、と言うことだ。ハンカチにも血が滲み出ており、どうにも痛そうに見える。
痛い、という妖狐の主観は知りもしない。ただ、客観的にそう見えることが問題なのだ。
「えーと、これ、どうする?」
「ふむ、どうしましょうか」
なぜなら、こうやって、見ている子ども達がなんとなく焦りを感じてしまうからだ。
こうなると、私も焦らざるを得ない。もっとも、痛そうな妖狐にではなく、それを眺める子どもらの様子を見て焦るわけだが。
ここから考えられる最悪は単純だ。それはうっかり、「念の為に先生を呼ぼう」なんて話になることである。
いくら治療をしたと私が主張しようが、念の為、なんて言われてしまえば、反論の余地がなくなってしまう。それだけは回避したい。
ただ、そうはいっても、これ以上のことをするとなると……
あれに手を出さざるを得ないわけでして。
妖狐と彼らの様子を交互に眺める。
右、左、右。うん、やばい。メラクがなんか言いそう。
仕方がないので、あれをすることに決め、早速先手を打った。
「よし。では、もう少しこの子を借りますわ。あれ、やります」
昼だけど、やるしかないので、仕方なし。
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