第90-3話 Day2昼:案はある。やったことはない。
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保険の先生を呼んで、この妖狐を手当してもらうだって?
そんなのいいはずがない、むしろ最悪だ。大人にこの妖狐を見られるわけにはいかないのだ。
「それはだめですわ」
まったく、子どもはいつも予想できないことを言う。本当に怖い。
「なんでだよ、別にいいじゃん、だってこいつかわいそうだぜ」
「おー、さすがメラク、かしこー!」
「なるほど、面白い案です」
しかも何が怖いって、この手の意見は子どもによく刺さる、ということだ。
気が付けば私が少数派になってしまった。民主主義の議会なら、多数決で承認されるわけで。
さて、この意見を覆すための案を考えてみよう。
「皆様、お待ちなさって。この動物は危険ですの、先生にとっても危な――」
「その動物を抱きしめたステラに言われましても」
「賢いですわね。全くもってそのとおりですわ」
転覆、失敗。というか言われてみればそうだ。今の私の姿は説得力に欠ける。ならば次の案。
「でも先生も忙しいですし――」
「でもさっきはひまそうにたってたよー」
「むぅ、賢い。そりゃそうですわよねぇ」
これもだめか。たしかに一時間ほど前に先生に会った時、暇そうにしていたのだ。
「例年は熱射病とかでみんなバタバタ倒れるから大変なんだけど、なんか今年は楽でいいわー」
とのこと。それは非常に喜ばしいことなのだが、それはそれとして今この場においては困る。
「よし、じゃあ俺が呼んでくるからお前らは待機なー」
「はい、任せました」
「ちょっと、ちょっとお待ちくださいませ、まだ案が――」
まずい、話がどんどん進んでいる。代案を考えないと。
「なんだよ、まだ何かあるのかよ」
「ステラははくじょーなやつだなー」
「そういうわけではなく……」
ただこいつら、何が何でもこの動物を看病したいらしい。
そう考えていない私が薄情者にされてしまうほどに。
これじゃ、どんな言い訳をしても止められる気が……
ん? そうか。
「そう、そういうわけではなく!」
それが目的なのだとすれば!
もう一つ、案があるじゃないか。私にしかできない案が。
「皆様、よーく聞いてくださいませ。先生を呼ぶ必要はありませんわ」
「だから、なんでお前はそんな冷たいんだよ」
「別にそういうわけではありありませんのよ。ただ、呼ぶ必要がないのよ。なんてったって――」
とはいえ、できるのか? もちろんやったことはない。あっ、魔物にはね?
さて、何をしますのかといいますと。
「私が治療しますもの」
お医者さんごっこですのよ!
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「流石ステラさん。噂には聞いていましたが、本当に何でもできるんですね」
「さすがステラ、すげー」
予想通り、子ども達にこの案は好意的に捉えられた。
様子を見る限りナーコとミズリィは納得してくれたようだし、あとはメラクを説得できれば――
「ほんとにできんのか? たまにお前、適当な嘘つくからなぁ」
「ワタシウソツカナイ」「嘘つけコラ」
ただメラクは普段からよく話す分、私に詳しいようだ、困ったやつだぜ。いや、本当に困るのですが。
とはいうものの、この作戦を押し通すしかないないしなぁ。
よし、だったら行動で示せばいい。
「まぁ、見てなさいな」
ぶっつけ本番、試行錯誤もないまま、魔物の治療という初めての大仕事に取り組んでみることになった。
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