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かつて最強と呼ばれた男は前世の知識と共にTSお嬢様を満喫するようで  作者: 赤木林檎
第2章 低学年編

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第90-2話 Day2昼:少し違和感というか物忘れというか

お読みいただきありがとうございます。

――――――――


 かつて勇者だったころに身に着けた、地味な特技シリーズのひとつ。


 私は外傷を見ることで、それがどの程度ヤバい傷なのか判別できるのだ。

 まぁ特段知識はないので、経験ベースの判断だけど。しかも分かることといっても、この傷がどれくらい痛くて、後にどの程度響くか、というのが判断できるという程度だけど。


 今回はその特技を人間から動物に汎化する。さらに動物から魔物への特化も試みる。


 記憶から類似する傷と、その前後の時系列を引っ張り出す。

 ……流石に昔のことで記憶に靄がかかっているが、何とか頑張る。


 視覚だけじゃなく、触覚も。先ほどの触り心地、特に傷の箇所の感触も考慮して――


 よし、大体検討がついた。


「直接的な原因は、鋭利なものによる切り傷ね。それこそ刃物みたいなものでスッパリと切られたのでしょう。毛皮で少しわかりにくいので、人間で考えるといいわよ」

「でも、にしては腫れていませんか?」

「そう、いい切り口ね、そう、切り口だけにね」

「「……」」


 いけない、ついつい年の功が。まぁ、別に生きていた時もそこまで長生きしたわけじゃないけど。


「こほん。さて御覧の通り、表面の切り口はただの切れ跡なの。ただ、それにしては動きが悪かったでしょう? 実際、それぞれの足を比較してみると――」

「えっと、そうなの?」「あんまりわからーん」

「ほら、ここを見てくださいませ。違いますでしょう? では話を戻しますわね。まぁ、見て分かる通り、左足に比べて右足が腫れているわけですが、これはおそらく、土とかそういうものにこすりつけてしまったとか、そういうもののせいで――」

「いやまて。御覧しても見てももわからんぞ?」

「あら。ほらここ、ここですわよ。よーくみてくださいませ」

「「「いやわからんが?」」」


 むぅ、人がせっかくちゃんと見てやったというのに。


 まぁいい。それならそれで、以下略――


――――


「一言でまとめると、足がスパッと切れ、さらにそれが運悪く悪化した、って感じね」

「やっぱ、ステラ、すげー」

「この程度、私にかかればいちころよ」


 声高く、鼻も高くしてそう言ってみる。ただ、傷が分かったところで何もしてやれなければ意味はないんだけどね。


「足を切られたってことは、それをした奴がいるってことか?」


 と、そのとき、メラクが尋ねてきた。

 おぉ、こいつ。なんだかんだ私の言葉を聞いていたらしい。私、実はあなたがとっても優秀だって知っているんですからね。お前もオリエンテーリングに参加しろよな。


 と、それはさておき。


「どうでしょうね。足を切ったうえで、野に帰す行為はさすがに悪趣味ですし、普通に考えると尖った岩に足をこすったと考えるのが自然ですが……」

「……えっと、ステラさん、どうかしましたか?」


 うーん、自分でいっておきながら、何かが引っかかる。何か忘れているような……


「いえ、少し違和感というか、ざわざわしたものがありまして。なんというか岩にしては傷跡が鋭利ですし、もしかするとメラクの言うように、刃物のようなもので………………人間が……!?」




 あーーーー!!!!




 そこまで言って、ようやく思い出した。

 そして思わがけず、もちろん声にも出せず、私は一人心の中で叫んだ。



 刃物のような、鋭利なもので、人間が。昨日から今日の間で。



 どう考えても私じゃん!



 そう、昨日ナイフを当てた私がつけた傷に違いない!


 何を忘れていたんだ、私!


 昼だからすっかり頭をリフレッシュして記憶から消していた。けどあれはどう考えたって、昨日のナイフ当たった箇所じゃないか!

 むぅ、やけくそに振ったくせに、思わぬ傷を残しやがって。


「そんな口をパクパクさせてどうしたんだ?」

「ま、まぁ! 原因探求はひとまずおいて置いておきましょう! なんてったって、問題なのは傷の原因より結果ですわよ!!」

「お、おう、そうだな」


 おっといけない、焦って早口になってしまった。真相は夜の中に置いといてくれ。


「それで、お前はどう思う?」

「うーん、これくらいなら大丈夫だと思いますわ。なんといっても、所詮はただ切り傷ですし。少々腫れは続くでしょうが、とはいえ、このままでも何日か生きていれば、治癒も完了することでしょう」


 生きているかは置いておきまして。


「でもなんか、ちょっといたそー」

「痛いでしょうね。自然治癒の範囲とはいえ、人なら手当しておきたいレベルですし」


 実際、こういう傷はちゃんと手当をすれば問題ないのだけれど、そのまま放置しておくと、たいてい長期化するのだ。その上に結構痛い。

 ただ、人なら治療するけれど、しょせん相手は野生動物。傷と痛みが続くのは仕方のないことで――



「あ、そうだ!」



 と、大人の目線で無情に考えていたのだが。



 どうやら、メラクは違うらしい

 いや、そもそも私を呼んだ時点で、その線は視野に入れていたのかもしれない。



「じゃあよぉ――」


 もちろん私は、続くメラクの言葉に驚愕することになるわけでして。


「――保険の先生を呼んで、手当してらえばいんじゃね!?」

「それはだめーーー!!!」


 うん、それはだめ。これの存在がばれちゃうから!!!

お読みいただきありがとうございます。


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