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闇魔法の使い手  作者: 葉月 縷々
最終章 異界戦国時代編
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第317話 世界最狂VS世界最凶

海外の人達「ワイワイガヤガヤ(英語やら他の言語やら)」

海外のATM「お持ちのカードは全て使えません(英語)」

葉月「ファッ(;゜∇゜)!? どう生きろと!? 畜生っ、命の危機じゃねぇか!」


ってなことがありました。えぇ、言い訳ですねはい。


 MFAがないのなら、と空中戦を挑んだこと。


 俺は早くも後悔していた。


「お、ま、え、があああぁっ!」


 咆哮と同時、バチバチと放電していた銃口が火を吹き、奴の腕が反対側に折れ曲がる。


 そして、回復魔法の忌々しい光によって元に戻る。


 それを認識するよりも前に、こちらは炸薬で急加速。回避するが、背後から響く音と周囲に広がる光景に背筋に冷たいものが走った。


 流石は連合が誇る新兵器といったところか。


 躱した先にあるヴォルケニスの残骸をぶち抜き、それどころか帝都の建物群すらをも貫いて消えていく。


 俺達が居る城庭を中心に、都全体が穴だらけであることが横目でわかる。


 全てライの仕業だ。


「あははははははっ! ほらっ、怒ってないで退けよ! もうこの国に未来はないっ! 理性あっての人間ならっ……!」


 そう高笑いしながら両手のレールガンを次々と撃ってくる。


 自棄と言えば自棄。しかし、嘲笑うにしてはその威力があまりにも強すぎた。


「ちぃっ、正気かテメェッ!」


 牽制と目隠しを兼ねて奴の足場に小型魔導砲を放つ中、思わず吠えてしまう。


「はははっ、至って正気さっ! 帝国の滅亡はお前にとって致命傷の筈だ! いずれガス欠を起こす! 過去の栄光に縋るだけの賊へと成り果てたっ、今の連合のようにっ!」


 バサリと不気味に輝く白翼を広げ、土煙の中から颯爽と現れたライは『風』の属性魔法が乗ったもう一羽ばたきでそれらを除外。再び電磁場か何かを発生させた銃がキイィィィンッ……! と、甲高い金属振動音を出し、ただの弾丸以上に視認不可能な速度のソレが撃ち出す。


 あの独特な音があるからまだ避けられる。


 圧倒的な戦力差であったココが無事だったのも、恐らく予兆がわかりやすかったが故。


 そもそもが銃型兵器。慣れた身からすれば銃口を見りゃ狙いは予測出来る。


 が、『天使化』の影響で生えたあの翼……


 あれが厄介だった。

 

「やむを得ずでもなく味方殺しをする! そんな人間は消えていいっ!」


 爪斬撃を飛ばし、更なるもう一羽ばたきで相殺され、追って追われてを繰り返しながら冷静に分析する。


 加速力も機動性もこちらが上。


 属性魔法が飛んできたところで魔障壁が弾いてくれる。


 《縮地》などのスキルだけなら互角。


 なのに……


 ()()()()()


「お前も気付いたんだろうっ!? この呪われた〝力〟にっ!」


 空を蹴り、翼で加速し、あるいは稲妻となって空を駆けてくる敵。


「ステータスも見れないのによくも気付くっ、人殺しの勇者がっ!」


 対する俺はMFAの性能に物を言わせ、立体的かつフレキシブルに、スキルと炸薬による軌道変更を織り混ぜて逃げ回ることしか出来ない。


 上空から艦砲射撃で帝都をめちゃくちゃにしている連合艦隊を背にすべく高度を上げても普通に撃ってきやがるキマリっぷり。


 メサイアか連合のものか、既に幾つもの艦がライの流れ弾で沈んでいる。


 下手に距離を詰めれば何キロと離れた距離に居る超硬度の船の二の舞……いや、ルゥネの後を追うことになる。


「あははははっ! お前が俺を味方殺しに人殺しと罵るかっ、笑わせるなぁっ!」


 ズドンズドン、と表現するには可愛い過ぎて涙が出る威力の弾丸が俺の付近……空を、都を、地面を貫き、四方で爆発のように瓦礫や土煙が舞う。


 事実として、ライの腕は撃つごとにへし折れている。


 確かにあらぬ方向へと曲がり、そして、それを凌駕する速度と効果で回復魔法を常時発動。治してやがる。


 本来は骨折なんかじゃ済まない威力で、本来は【起死回生】でしか修復出来ない傷。


 では何故、現実にレールガンを使えているのか。


 一つは発砲の瞬間に翼から後方に放出される推進エネルギーが反動を限りなく減らしているから。


 そしてもう一つは……


 何処かのイカれ野郎と同じ理由。


 (俺はスキルとステータスに特化した……が、奴は回復出来る上限や魔力量に特化した。そうとしか考えられない……!)


 ギリギリで避けるのではなく、オーバーなくらいに躱し、動き回りながら思考する。


 (()との決定的な差は武器の方が強力な点。まだ付け入る隙はある!)


 段々と赤くなっていく銃身、器用にも《アイテムボックス》だけで弾倉を変えていく様を見ていれば傾向やタイミングは透けてくるというもの。


「っ、そっ……こぉッ!」


 【紫電一閃】による体当たりを《予測》と《先読み》で察知。寸でのところで空中半回転回避するや否や、途中で制止した奴の元へ炸薬で接近し、刀剣を振り抜いた。


「はっ、無駄な足掻きをするッ!」


 機会を窺っていたのは向こうも同様。


 俺が斬ったのはスキルによって生み出されたらしい残像だった。


 気付いた時にはもう遅い、と空を隠すように真上に居たライが両翼を広げ、〝光〟の魔力を帯びた羽根と属性魔法の雨……嵐を彷彿とさせる怒涛の攻撃を繰り出してくる。


 この距離だ。魔障壁は自動じゃ働かないし、もう遅い。特に羽根の方は魔族に当たれば穴が開く特効力を持つ。


 久しぶりに《直感》が警鐘を鳴らした。


「爆、ぜ、ろぉっ!」


 死なば諸とも、ではないが、咄嗟に〝闇〟の魔力を混ぜた『火』と『風』の属性魔法で小爆発を起こし、即席の壁と脱出用の推進力を創造。僅かなダメージを代償に脱出する。


 とはいえ、相殺は出来ない。


 あくまで俺達の身体、つまりは距離を離す為だけの緊急策。


 奴にダメージはないし、俺も無事に魔障壁を挟み込めた。


 しかし。


「無駄と言ったッ! 皆の仇だっ、ここで死ねぇ!」


 まただ。


 またあの翼で加速してきやがった。


 他にも《縮地》、《空歩》……ジル様が持ってた《神速》まで。


 爆発による衝撃を白翼で殺し、スキルで前進。瞬きよりも短い時間で肉薄された。


 気付いた時には俺の前に居て、俺に銃口を突き付けていた。


「ゼロ距離ならってかっ、短絡的なッ……!」


 ならばと、こちらも逆に前に出る。


 ズガンッ……!!


 と、背面スラスターに内蔵された炸薬で身体を押し出し、ライの両腕を抑える形で体当たりしつつ、渾身の頭突きを食らわせた。


「がぁっ!? こ、のっ!」


 仰け反って怯んだのは一瞬だけ。やり返すように戻ってきた頭突きを《金剛》の乗った額で受ける。


 スキルの力を入れて漸く互角のステータスらしい。向こうは頭部がパックリと割れ、俺の方は角が半ばから折れた。


「ぐぅっ!? お前如き軟弱者にっ!」


 血が吹き出て互いの髪が赤く染まると同時、揃って推力を全開にし、鍔迫り合いのような押し合いが始まる。


「お前だっ、お前が全てを壊したんだ! 何が統治だっ、テロリストがっ!」

自分(テメェ)目線の秩序がどうのとっ、今を重視する! その大衆的な物の見方こそっ!」


 MFAの有無という圧倒的なアドバンテージすら勇者の素質の前には意味を成さないのか、押すも引くも出来ずに拮抗。


 瞬間、再び白い翼が広げられ、〝光〟の羽根と属性魔法が今か今かと姿を現し出した為、膝の隠し散弾銃で距離を取らせる。


「っ、一方的なっ……! 未来の為に今を犠牲にしようというその傲慢がっ、世界を狂わせるっ!」


 毒と一緒に繰り出された蹴りは義手で防ぎ、こちらも空を蹴って後退。魔障壁を出して色とりどりの殺意の嵐を弾く。


「問題の早期解決っ、それを目指してこそ人間だろうが!」


 『土』の属性魔法が起因の目眩ましを爪斬撃で払ったら上昇し、いつの間にか上から降ってきていた奴目掛けて刀剣を薙ぐと、まさかの銃による殴打が返ってきた。


 元々赤熱化して脆くなっていたこともあり、いとも簡単に斬れたが、軌道は逸らされた。


 ついでに《アイテムボックス》から空中へ吐き出させた新たなレールガンを掴み、俺に突き付けてくる。


「正論だけが人間を動かすと思うな! 勝手に期待して勝手に失望してっ、身勝手なんだよお前はっ!」


 バチバチッ、キイィィィンッ……!


 と、発射の前兆が始まり、全身が総毛立つ。


 しかし、トリガーに掛けられた指が動いた刹那、義足の脛から出した赤熱ブレードで思い切り蹴りを入れ、逸らし斬る。


「歩みを止めて停滞しっ、怠惰に生きることを望むっ……傷を舐め合って慰め合ってっ! 何の意味もないことだ! 生産性の欠片もないっ、無価値な行為だっ!」


 返すつもりで向け、自己魔力で無理やり放った小型魔導砲は【紫電一閃】で回避された。


 《直感》が背後と叫んだのを信じ、魔粒子で身体を横回転。《先読み》した、置き二連続蹴り斬りはまた銃の腹で受け止められ、武器破壊だけで済ませられる。


「平和を望んで何が悪いっ!? 何が〝異界戦国時代〟だっ、狂信の類いで人を惑わせてっ……!」


 反撃は翼から生まれる膨大な破壊エネルギー。


 距離さえ取ればと更に上昇し、バカスカ撃ち合っている艦隊同士の間に割り込む。


「繁栄を望んで何が悪いっ!? 種族の分断などとっ……歴史ってのは過去の過ちを繰り返さないが為のものだろっ!」


 無尽蔵に飛来する羽根と属性魔法を魔障壁で防ぎ、あるいは避け、降り注ぐ艦砲射撃の中を縫うように飛んでいく。


「はぁっ……!? 先に始めたのは誰だよっ!」

「クハッ、ぬけぬけとよく言うっ! 罪を犯したでもない人間を『教え』とやらで奴隷にしっ、戯れに弄んでおいてっ!」


 何処からともなく響いてきた耳鳴りのような音を機に急加速。後ろから飛んできた音速越えの弾丸を前方の連合艦に当てさせる。


 エンジンをやられたらしく、盛大に爆発し、墜落し始めたソレの周囲をぐるぐると回ることで撒こうとして……


 止めた。


 何度命を救われたか、《直感》に従って別艦の甲板に降り立つ。


 果たしてその予感は正しく、ライは乱暴にもレールガンを連射して艦に穴を開け、その中を真っ直ぐ抜けてきた。


「躊躇もなしかっ……!」


 バタバタと忙しなく向けられる対空機銃が掃射を始める直前。


 奴が俺を追いながら翼から投じた遠距離攻撃の雨あられがそれらを、そしてブリッジを破壊し、艦全体に深刻なダメージを与える。


「戦争の愚かさを後世に伝えるっ……必要な犠牲とはそういうものだろうっ!?」


 痛みこそ成長の元、失敗こそ成功の母。


 そんな、俺とロベリアの理屈をねじ曲げて解釈しているようだった。


 俺が殺すのは大抵が理由あってのこと。無作為に味方を撃ったりなどしない。これでは俺以上の外道だ。


「あれだけ殺人を忌避していたお前が堕ち、た……なっ!」


 激しく揺れているとて足場。空間を蹴るよりもしっくりくる。


 ランダムに辺りをめちゃくちゃにする、ホーミングミサイルのような属性魔法の中を被弾覚悟で駆け抜け、刀剣を振る。


 聖剣に引けを取らない深紅の刃はしかし、空を切った。


 滞空に使っていた魔力の向きを真上に向けたらしい。


 ライは自分でぶっ壊した自軍の艦に降り、蹴って跳ね、再度翼を広げて近付いてきた。


「誰のせいだっ!」

「世界が望んだことっ!」

「人を見下してッ!」

「峻別だよこれはッ!」


 先程からまるで噛み合わない会話を、見下ろし見上げられながら続けつつ、球形から俺の身体を覆うような魔障壁を形状変化させる。


 二発連続で飛んできた電磁砲は上体を反らして回避し、特に防御力を高めた義手をカシュンカシュンと伸ばして指爪での刺突を試みるが、当然のように同じ手法で躱された。


「醜いっ……醜い醜い醜いっ! お前達のように反射で生きる低俗な人間なんぞにっ!」


 心からの叫びを胸に、義手の大部分をパージ。軸となる人型の腕を残して身を軽くする。


「自らの心の闇を理由に八つ当たりを目論む偽善者がっ!」


 武器の代わりに腕を突き出し、翼と合わせて、それそのものが視界を覆うほどの物量を一瞬で生み出して見せたライと目が合った。


 避ける必要があるのはそこに隠された『土』や『水』といった質量を伴うものだけ。


 とはいえ……


 何という魔力量。


 何という制御力。


 改めて才能の差を見せ付けられたようで、愕然とする。


 スキルも魔法も全てはイメージだ。


 脳内で「これはこのくらい」、「こっちはこういう形で」、「魔力はこの程度」、「幾つかはフェイントで幾つかが本命」、「速度は変則的に……」等々、想像しながら顕現させる〝力〟。


「目の前のことだけに一喜一憂しっ、未来を鑑みない! それは犯罪者と何ら変わらんのだっ! なればこそっ、今を争ってでも子供達がっ……誰もが手を取り合える世界にっ!」


 紫炎を全身に、刀剣に纏わせながら思った。


 きっとゴールは同じなんだ。


 違うのはどの道を行くかだけ。


 (俺もコイツも生命線を絶たれた。後はもうどちらが先に心臓を止めるかの勝負……)


 何でわからないんだよ。


 と、嘆きにも似た苛立ちのままに斬りかかる。


 (自分を律せないということは同じロジックで動く動物や罪人と同種、もしくは同じ側の人間である証拠だろ! 結局は自分目線の正と負の感情が元なんだっ……!)


 俺達みたいに醜い人間はやはり世界に相応しくない。


 未来の行く末は森羅万象を普遍的に俯瞰出来る高潔な人間にこそ。


 そうだ。


 ムクロに優しい世界を作るためには……。


 たった数年……数ヵ月でも一度だけでもいい。


 この狂った世界に真の平和を見せてやるんだ。


 皆死んじゃったけど、何だかんだ良いとこに落ち着いたね、戦争は終わったんだね、と泣きながらでも安寧を分かち合える、そんな未来を。


「だからと自分の意思で人間であることすら辞めて見せるっ……その独り善がりが今の子供達を殺すと何でわからないんだっ!」


 知らぬ間に回収していたのか、それとも転移魔法か何かの応用か。


 血濡れた聖剣を手に振りかぶるライと俺は互いの心情をぶつけながら交差するのだった。


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