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17 オークション事件

さあ、ティアーズがオークションに出品されてしまいます、どうなるのかな?

オークションにティアーズが出品された。

 「転売目的で出品されるのは時間の問題だと思ってたけど、まさかこんなに早くとはね」

勇者は、冷静にそう呟いた。 ポーションを100分の1に希釈して売り出した美容液「ティアーズ」は、10万円という超強気な価格にもかかわらず、飛ぶように売れ続けていた。そしてついに、その価値に目を付けた男が、オークションサイトに手を出したのだ。

男の名は佐野智也。転売ヤーの世界では、知る人ぞ知るやり手だった。彼には同棲中の恋人、美咲がいた。

「智也、今月はグッチの新作バッグが欲しいの。この間のディナー、ちょっとケチったでしょ」

美咲は、佐野が転売で稼いだ金で、ブランド品を身につけ、豪華な食事を楽しむ生活に満足していた。だが、彼女は内心、この生活がいつまで続くのか、漠然とした不安を抱えていた。佐野が転売で稼ぐ金は不安定で、彼女もいつか働かなくてはならない日が来るかもしれない、と考えていたのだ。しかし、佐野はそんな美咲の気持ちには気づかない。

「ああ、もちろん。俺の稼ぎはこれからもっと上がる。美咲は何も心配しなくていいんだ」

佐野は、そう言って笑った。彼は美咲の不安を、自分が転売の世界に足を踏み入れた本当の理由、つまり「自身の頭脳と才能を証明すること」への情熱で打ち消そうとしていた。

佐野はかつて、大手企業の企画部で働いていた。しかし、どんなに優れた企画を提案しても、上司の顔色を伺い、忖度を繰り返すだけの毎日に嫌気がさしていた。ある日、彼は転売ビジネスの存在を知る。そこは、実力と目利きがすべてを左右する、シンプルで残酷な世界だった。

「俺の頭脳と才能は、こんな世界でこそ輝く」

佐野は会社を辞め、転売ヤーとして独立した。数年で彼は転売の世界で確固たる地位を築いた。彼の成功の秘訣は、市場のわずかな隙間を見つけ出し、商品を独占するその**“慧眼”**にあった。

そんな彼が目を付けたのが、「エターナル・ティアー」だった。発売前からSNSで話題になっていたこの美容液は、発売後すぐに品薄状態になった。誰もが欲しがる商品を、誰も手に入れられない。佐野にとって、これほど魅力的な市場はなかった。

「ふん、所詮はネット通販。俺の敵じゃない」

佐野は、複数の偽名アカウントを駆使し、大量の「エターナル・ティアー」を手に入れた。そして、オークションサイトに手を出したのだ。彼の狙いは、供給不足が続く市場で、価格を吊り上げ、独占的な地位を築くことだった。

出品された美容液は、開始価格100万円。


ゲインエキスパート・ジャパンの社長室。佐伯香澄は、落ち着いた表情でタブレットを操作していた。その画面には、オークションサイトで美容液「エターナル・ティアー」が転売されているページが表示されている。

「ロット製造番号から、出品者特定…」

彼女の冷静な声が、静かな部屋に響く。勇者からの指示はシンプルだった。 「AIで落札して、告訴してください」

「承知いたしました。すでに弁護士に連絡済みです。オークション終了と同時に、対応を開始します」

佐伯香澄は、そう独り言を呟くと、タブレットの画面を閉じた。彼女は、勇者の突拍子もない指示に驚くことはなかった。むしろ、その常識外れな発想を面白いとさえ感じていた。

「勇者様の考えることは、いつも予想の斜め上を行くわね…」

彼女は、静かに微笑んだ。ゲインエキスパート・ジャパンの社員――実際はAIが個人名で動いているのだが――は、勇者の指示通り、オークションで美容液を500万円で落札。支払いは完了したが、商品は受け取らずに、弁護士が作成した告訴状とともに、詐欺罪と偽計業務妨害罪で刑事告訴を行った。


オークションに出品した男は、会員規約に反する行為を行ったとして、即時アカウントを凍結。同時に、ゲインエキスパート・ジャパンの全ての会員に向けて、一つのメールが配信された。


【会員様各位】

この度、会員規約に反する転売行為が確認されました。つきましては、下記のとおり対応いたします。

・当該アカウントを永久凍結 ・今後の再発防止策として、転売が判明した場合には、実名公開と1000万円の違約金が発生することをご承知おきください。

また、これまでお試し価格として販売してまいりました「エターナル・ティアー」ですが、安定供給のため、正規価格への値上げを検討しております。最短で来月からの価格改定を予定しており、正規価格は1本120万円となります。

ゲインエキスパート・ジャパンは、これからもお客様に最高の価値とサービスを提供してまいります。


「さすがAI、仕事が早いな」

勇者は、画面に表示されたメールを見て、感心したように頷いた。一方、勇者の指示を受けたゲインエキスパート・ジャパンの社員――実際はAIが個人名で動いているのだが――は、オークションで美容液を500万円で落札。**支払いは完了したが、商品は受け取らずに、**弁護士が作成した告訴状とともに、詐欺罪と偽計業務妨害罪で刑事告訴を行った。

佐野は、あっさりと逮捕された。取り調べを受ける佐野を前に、ゲインエキスパートの弁護士は、示談金として、オークションでの代金500万円と、迷惑料300万円、合計800万円の支払いを要求した。

「は?500万はオークションの落札額だろ!なんでそっちが払ったのに、俺が払うんだよ!」

佐野は喚いたが、弁護士は冷静だった。

「あなたの出品した商品には、転売禁止という規約がありました。その規約を破った時点で、あなたは詐欺罪を犯したことになります。500万円は、刑事罰とは別の損害賠償です」

佐野は言葉を失った。転売ヤーとして地頭は良い方だったが、法律の専門家を相手にできるはずがなかった。

示談は成立したが、佐野は当然、800万円など持っていなかった。 そして、勇者は田嶋に電話をかけ、一つの提案をした。



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