第九話 ポーションてなんだっけ?
2日目の狩りが始まる。
アイアンクロスの皆はもう慣れたもんで、どんどん先へ進んでいく。
昨日よりハイペースだ。
気合を入れなくては。
今日は朝早くから狩りをしているのもあって、昼前なのにすでに討伐数は400匹を超えた。
俺はと言うとロックリザードの剥ぎ取りで出た廃棄物が山積みになっていたんだけど、
それが何かに使えないかと考えていた。
なんせ、一匹50㎏のロックリザードに対して廃棄物は40㎏。
80%は不用品という事になる。
使うのは外皮の固い部分だけで、中には砂利のようなものが詰まっていて
それは廃棄される。
ただ捨てるのは勿体無いし、ダンジョンに持って行って吸収させないと、
どんどん場所を取って邪魔になってしまう。
そこで思いついたのが、土魔法で練成して剥ぎ取り小屋を作ろうという事だ。
岩陰でコソコソとやっていたけど。せっかくだから小屋を作ってその中で
しっかり効率よく作業をしようという事だ。
箱型の10メートル四方の壁が胸のあたりまで出来上がっている。
本当は目隠しさえできればいいから、壁だけでもいいんだけど。
こうなると半分遊びだよね。
ロックリザードの内容物は魔力が通っているからなのか、錬成すると凄い強度になった。
鉄なんかよりよっぽど固いんじゃないかと思うくらい。
今日はロックリザードを10匹ずつ纏めて縛ってもらってるから運ぶだけ。
大分余裕があるから、運搬、剥ぎ取りをしながらでも剥ぎ取り小屋作りが進められる。
昨日と今日取った素材で、壁が完成した。
昼に休憩でキャンプに戻ってきたアーロンさんたちは、それを見て、
「さすがヒトシ、やることが違うな。」
と、大笑いしながら壁をたたいたり、中に入ったりして喜んでいた。
これって褒められてるんですよね。喜んでいいヤツですよね。
そして後で「俺たちにも雨よけを作ってくれよ」と頼まれた。
「じゃあ、午後も頑張ってロックリザード狩ってください。」
「ああ、任せとけ。」
アーロンさんたちは手を上げ意気揚々とダンジョンに戻っていった。
剥ぎ取ったリザードは表に置いておくと、
勝手に馬車のオッチャンが積み込んでいてくれるので楽だった。
午後を過ぎロックリザードの討伐数も900を超えた。
なんかさらにペースが上がってる。
まだこっちにも余裕はあるけど。
でもそろそろアイアンリザードの生息地だな。
「おい、あれロックリザードじゃないぞ。色が違う。」
「あれはおそらくアイアンリザードだ。俺も生きたやつは初めて見たけど、
倒し方は同じく喉のはずだけど、鋭い爪を持っている。気を付けろ。」
「アイアンか、硬そうだな。こいつも狩っていいのか?」
「あぁ、問題ない。ロックリザードの10倍の価値はある。
だがもう一度言う、爪にだけは十分気を付けろ。」
アイアンリザードを狩りはじめて30分。確実に討伐数を重ねてはいるけど、
徐々に疲労と怪我が増え始めた。治療術士のイリさんも魔力の限界が近そうだ。
「イリさん。魔力が回復するまでこれ使って凌いでください。
少しつけるだけで切り傷位なら治りますから。」
自分のけがを後回しにしていたイリさんの腕や肩にポーションを垂らす。
青白い光とともに傷がふさがる。
「ヒトシさん、これ…。」
「ただのポーションですよ。まだまだあるんでとりあえず10個渡しておきますね。
なくなったらまた言ってください。それじゃ頑張って。」
俺は束ねられたアイアンリザードを担いで歩き出す。
よし、少しロックリザードより重いけど、価値は10倍。俄然やる気ですよ!
でもパーティの実力より少しだけ格上のようにも見えたけど、大丈夫だろうか。
屋根なしの剥ぎ取り小屋に戻ってアイアンリザードを解体してみる。
さすがにロックリザードより数倍の硬度はありそう。
中身は、砂利じゃないな。砂粒大の鉄の粒だ。これ中身も価値があるんじゃないかな。
余計な部分だけ切り取ってこのまま保管しておこう。
アイアンクロスの元に戻るとどうやら元気に狩りを続けているようだ。
あ、イリさんがこっちに来た。
「ヒトシさん、これの事なんですけど。」
「ああ、ポーションですね、代金は別にいいですよ。」
「それもあるんですけど、そうじゃなくてこれ効き目が違うんです。」
「あぁ、そうだ、ハイポーションだった。」
「魔力の回復速度まで上がったんですけど。ポーション系にはそんな効果はありません。
なんだか、活力まで漲ってくるし、皆いつも以上に動きがいいんです。
少しの傷なら自然に回復するんですよ?これはおかしいです。」
そんな効果があったとは知らなかった。
「もしかして、知らなかったんですか?」
「はい、すみません。」
「謝らなくていいんですけど、私だってほら!」
イリさんはアイアンリザードに駆け寄っていく。
そんなに慌てると…転ばない。イリさん、転ばないんですか?
それでいいんですか?私の知ってるイリさんはどこ?
私のイリさんを返して!昔はあんな子じゃなかったのに!
そして、ズドッ!
杖の先でアイアンリザードの喉を一突き!
「見ました?自分一人でもなんとか倒せるんですよ!?
さ、アイアンリザードはそこに纏めてますからね。
こんな体にされちゃって、ヒトシさんのせいですからね。
責任とってここにあるやつ全部運んでくださいよ。」
イタズラっぽく言ったイリさんが指さす方向には、
すでに100体のアイアンリザードが束ねられていた。




