第十話 サプライズは突然に
走れヒトシ!セリヌンティウスを救うのだ。
そんな長い変わった名前の知り合いはいないけどヒトシは走った。
幾度も幾度も挫けそうな心を奮い立たせ、俺をあざ笑うあの悪魔どもに負けぬために。
死に物狂いで運んだ。奴らの嘲笑が聞こえる。
畜生!畜生!どうしてこうなってしまった?!
あ、俺か。
あんな訳の分からないポーションなんかを自作してしまうからこんな事になるんだ。
皆もポーションを作るときは錬金術師指導のもとで作るんだよ。
それにしてもみんな好き放題狩りやがって。まさかのアイアンリザード1000匹超えですが。
俺よく運んだよ。約20往復、もう途中から訳分からなかったもんね。
多分頭にも10匹、背中に20匹括り付けられてたと思う。
よく覚えてないけど。
「はい、おつかれさまです。ポーションどうぞ。」
あぁ、イリさんの笑顔に癒されるなぁ。
…いや、騙されるな!こいつも俺を苦しめた悪魔どもの一人だ。
クソ、こうなりゃヤケ酒ならぬヤケポーション。ヤケポだ!
グビグビグビ…
「ふぉーーー!」
凄いぞこのポーション。疲れなんかたちまち吹っ飛んだ。
しかも何かが漲ってくる。
「やるぞ!やってやる!アイアンリザードだろうがミスリルリザードだろうが持って来いだ!
掛かって来やがれ悪魔ども!」
「おい、ヒトシはどうしたんだ?」
「それが…。」
「ヒトシ、悪いが今日はもう終わりだ。」
そうでした。
最初からポーション飲んどけばよかった。そういえば自分で飲んだことなかったな。
それを人に売るとか。しかも大量に。
怖っ!今更だけど怖っ!
しかしこの漲ってしまったやり場のない活力をどこに向けようか…。
そうだ、アーロンさんに聞きたいことがあったんだ。
「アイアンリザード解体すると、中から鉄の砂が出てくるんですけど。
これも買取してもらえるんですか?」
「それは純度の低い鉄クズだから持って帰ったとしても大した買取にはならない。
抽出すれば品質のいい鉄になるんだろうが、
重量と運賃の事を考えると、剥ぎ取りして素材だけ持ち帰った方が金にはなるな。
だから普通はダンジョンの中に捨ててくるんだけど、ヒトシ何か考えてるな?」
「いえ、ただ中身も価値があるならそのまま持ち帰った方がいいと思って。
特に何か考えていた訳じゃないんですけど。」
「そうなのか。」
アーロンさんなんか残念そうだな。そんなに期待されても何も出ませんよ。
あ、そうか、これを使って屋根とアーロンさんたちの雨よけを作ろう。
これはまだ秘密ね。
俺は今、漲っているのだよ。ポーションがぶ飲みしたせいで。
このエネルギーを何かにぶつけたい。そうドゥーイットユアセルフだ!
剥ぎ取りをしたら、DIYの始まりだ!
積み上がったアイアンリザードを小屋に持ち込み剥ぎ取りさせて、
出来上がった素材を表に出す。そして内容物をロックリザードの砂利と混ぜて練成する。それを屋根にする為成形する。屋根だから薄く引き伸ばして、重くならないように。
よし、完成だ。
ポーションの効果なのか今なら何でもできる気がする。
剥ぎ取りを続けているとイリさんが夕飯のお誘いに来た。
「ヒトシさん、ご飯ですよ。」
「あ、イリさん。今日は剥ぎ取りが多いので時間かかってましたよ。」
「一度休憩にして、一緒に食べましょ?」
「そうしますか。」
「小屋、完成しましたね。」
「はい、夢のマイホームです。」
「ふふ、ヒトシさんと一緒だときっと楽しい生活になるでしょうね。」
「そうですね。毎日お肉食も食べ放題ですよ。」
「私、ヒトシさんと一緒に居たい!」
「ははは、イリさんらしいですね」
ハッ、となったイリさん。
「私なんて事を…。」
あぁ、顔を真っ赤にして走り去って行く。あ、あぶな…。転んだね。
今日は薄緑色ですね。うん、ズボン穿きましょうね。
さてさて、ご馳走になりに行きましょうか。
と、その前に。
「お待たせしました。」
「おう、遅かったな。イリがさっさと戻ってきたからすぐに来ると思ったが、
先に食ってたぞ。」
「すいませんちょっとみんなに面白いものを見てもらおうと思って用意してました。」
「なんだ?」
アーロンさんが被せ気味で食いついてきた。期待されてますな。いいですよ良いですよ。
「先にご飯食べてもいいですか?」
「あ、ああすまん。もちろん。」
食事中イリさんは一度も目を合わせてくれなかった。
食事が終わり。
「ではでは、皆さんこちらへ。」
一行は剥ぎ取り小屋に着く。
「まじか、これヒトシが作ったのか?」
「こちらが今日完成した剥ぎ取り小屋になります。
壁はロックリザード、屋根は今日手に入れたアイアンリザードと
ロックリザードを混ぜて練成し作成しました。」
「「「おぉー!」」」
パーティ内から拍手と歓声が上がる。どうもどうも。
「そして、こっちです。ついてきてください。」
剥ぎ取り小屋を通り過ぎ見えてきたもの。
「これはなんだ?箱のようなものに階段が付いてるが。」
「これはアパートです。部屋が一階二部屋、二階二部屋の4つに分かれていて、
それぞれ別に休むことが出来るようにしました。」
「まさか用意したものって言うのは。」
「はい、これです。雨避けが欲しいって言ってたので、皆の寝床を作ってみました。」
皆しばらくポカーンとしていた。サプライズ大成功!




