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第七話 協力依頼

仲間と冒険

ゴブリン退治や、大量の薬草採集からのポーション大量納品で、

一気に冒険者ランクがDまで上がったわけです。

そして受けれる依頼が増えたという事で、D級とC級の依頼を見ている訳なんです。

オークの討伐から、王都南西部のスタンピードの調査、様々な依頼が並んでいた。


「あー、俺でも受けられる安全そうな仕事はないかな。お?」


討伐採取依頼の張り紙に受注済みの赤い印が押してある。

これならば普通の事なんだけど、赤い印の下に緑色の張り紙で協力依頼と貼り付けられていた。

内容は


・ダンジョン内からの素材の運び出し。

・報酬は運搬能力によって応相談。歩合制も可。


なんかこれなら俺でも受けられそう。討伐は任せればいいし。

ステータスのお蔭で筋力には自信あるし。シェロルさんに相談してみようかな。


辺りを見回すと、シェロルさんはほかの冒険者さんの対応中だった。


別のカウンターで聞いてみるか。


「おはようございます。協力依頼の事で伺いたかったんですけど。」


「…あら。おはようございます。…新人さん、ですね。

 私、マーヤ、と申します。…宜しく、お願いいたしますね、新人さん。」


なんだか、随分と、おっとり、した、人だな。

どこかのドールマスターみたい。


あれ、なんだか、声が、遅れて、聞こえてくるよ。


マーヤさんは遅れてはいないんだけど。


「新人冒険者のヒトシと言います。まだ知らないことばかりなので、いろいろ宜しくお願いします。」


「…はい、喜んで。何でも、聞いてくださいね。」


にっこりとほほ笑む姿はまるで聖母のような包容力を持っていた。


協力依頼の事を聞いてみた。

要約すると、パーティの助っ人や、補助、雑用、など人手を補う目的での募集のこと。

パーティの実力不足を補う時、頭数が必要な時、運搬や剥ぎ取りなどの雑用が必要な時などに

受付に申し込んで、追加のメンバーを募集するのだそうだ。

メインの報酬から追加メンバーへの報酬を支払わなければならない。

依頼のリスクや、効率、パーティメンバーの実力を天秤にかけて判断しなくてはならないので、

リーダーの力量が試されるところだ。


協力依頼を専門に請け負う便利屋なるものも存在し、

実績を積むことで名前を売り指名を受けるほど有名になる者もいる。

協力依頼を受ける側は戦闘能力が低くても、

実績のあるパーティと組むことで、リスクも少なく安全に依頼をこなして、

ランクを上げて、高額の依頼もこなせる様になる。

ま、戦闘が苦手だから、どうしても下に見られる傾向はあるようだ。


そういう縁の下の力持ちみたいな仕事も面白そう。

今のところ受けられる依頼は運搬くらいかな。

剥ぎ取りは、ごめんなさい。無理です。

現代人の僕には内臓とか、血とか。ハードモードなんです。

こっちの世界ではクローンなしじゃダメな体になってしまったんです。


「じゃ、この依頼受けます。」


俺は運搬の協力依頼を受けることにした。


「…はい、それでは、受け付け締め切り時間まで、お待ちいただいて。リーダーさんと、面接して、いただきます。締め切り時間は、あと30分ほどになります。」


にっこり、いい笑顔。


―30分後。


一人の冒険者が、受付に現れた。


「君がヒトシ君かい?」


金髪坊主頭、涼しい顔の30代の男性が目の前に座った。


「あ、はい。ヒトシです。ランクはDですが、力には自信があります。」


運搬の仕事だ、これくらいはアピールしておかないと。


「Cランクパーティ、アイアンクロス、リーダーのアーロンだ。」


右手を差し出し、歯を見せずに笑う。俺も手を出し、ガッチリ握手。

いいね、こういうの。


「俺自身はBランクの冒険者だ。

 今回の協力依頼を受けてくれたわけだけど。」


「はい、ロックリザードの運搬です。」


「そうだ。今回の依頼は買取制限がない。つまり獲れるだけ獲れば金になる。

 俺たちは狩る専門で、剥ぎ取り専門はすでに雇っている。

 あとは運搬だけなんだが、受けてくれたのは君だけのようだ。」


そうか。一人で運べる量ではないのかもしれない。頑張らないとだ。


「そうなんですね。できるだけ頑張ります。」


「ああ、途中から運搬にはこっちのパーティからも人手を回す予定だから、心配しなくてもいい。

 その前に一つ、この剣を持ってもらえるか?」


それは、アーロンさんの背中に指した長さ2メートル弱の大剣。

肩に掛けているベルトを外し、差し出してきた。


重さは、80キロくらいか。こんなん振り回されたら、堪ったもんじゃ無いな。

あっちの世界だったら、重くて使い物にならないだろうけど、

今のステータスだったらこれくらい片手で軽々。なんだか不思議な感じがする。


何だろう、護身用に貸してくれるのかな?

ワクワク。


「判った。合格だ。」


あ、剣を取られた。一回くれたんだから、それはもう俺の物だぞ!

くれてはいないか。


どうやら腕力のテストだったみたい。

いざ連れて行って運べませんでしたなんて、笑い話にもならない。


「パワーなら任せてくださいよ!」


俺は思い切り力こぶを作った。


貧相な腕だな、これでさっきの大剣を軽々持てるんだから違和感半端ないっす。


「君は見かけによらず高いステータスを持っているようだね。

 それともスキルかな?」


「ステータスです。とにかく精いっぱい頑張ります!」


「ああ、改めて宜しく。ヒトシ。」


アーロンさんと俺は再びがっちりと握手をした。


あ、なんだか今、認められた気がした。


-ロックリザードの洞窟-


入口付近までは馬車で移動できる街道が整備されていた。

入口には剥ぎ取り氏と、その護衛が待機し、中ではアイアンクロスがロックリザードの討伐。

俺はその間を行ったり来たりしてロックリザードを運んでいた。

今日は他の冒険者がいないようで、貸切状態。

皆ロックリザードの討伐は初めてのようで、最初こそ手こずっていたが、

徐々にコツを掴み、討伐速度は上がってきていた。

どんどん討伐されたリザードを回収、運搬する。

ロックリザードは一匹50kg。最初は両脇に2匹ずつ持って帰っていたけど、

段々距離が長くなるもんだから、間に合わなくなってきた。

そこで、縄で縛り、両肩に10匹ずつ、計20匹を担いで運んでいる。

日も真上を過ぎ。もう200匹は運んだか。

運搬が俺一人で間に合うもんだから、途中から運搬に回るはずだったメンバーも、

そのまま狩りを続行。

効率が落ちることはなかったので、夕方前には400匹は狩っていた。

そこで、剥ぎ取り士のストップがかかる。これ以上は捌き切れないと。


「ようし、今日はこれで終わりだ。」


アーロンさんの号令で、今日の刈は終了。

予定より2時間も早く終わった。


「これ以上買っても剥ぎ取りが追い付かないようだからな。

 一日100匹を目標にしていたから、剥ぎ取りに余裕がなくなってしまった。

 悪いが、残りの時間で、全員で剥ぎ取り作業だ。」


え、無理です…。

女性陣もすごく嫌そうな顔してる。


あ、俺か。俺が張り切り過ぎたせいですね。


「あの、皆さんお疲れでしょうから、あとは俺が剥ぎ取りしておきますよ。

 剥ぎ取りは企業秘密なんで、見せられないんですけど。」


「できるのか?悪いな、確かに討伐組は初めてのロックリザードという事もあってか、

 相当疲労が溜まっているのは確かだ。無理しない程度でいい。頼めるか?」


「いいんですよ、こっちは安全に稼がせてもらってるんですから。」


「わかった、頼む。何か手伝えることがあったら言ってくれ。」


調度いい岩陰に移動し、剥ぎ取り士のクローンを3体作成。見張りも一人用意しておくか。

さ、剥ぎ取り開始と行きましょう。剥ぎ取り士に剥ぎ取りのスキルを付ける。意味あるかな?


見てたけど、肉も内蔵も血も何も出ない。全然グロくないから、俺でもできそう。

手伝いに夢中になっていると、いつの間にか積み上がっていたロックリザード、

すべての剥ぎ取りが終わった。

大体2時間くらいか。傷のある個所も修繕のスキルを付けることによって、ほぼ目立たなくなった。


完璧。


お、誰か来たな。俺は岩陰から姿を現す。


「ヒトシ、お疲れ様。」


レイラさんだ。アイアンクロスの魔導士。藍色の髪をポニーテールでまとめ、

目は切れ長で、可愛らしい鼻と、小さ目な口の華奢な女性だ。


「食事の用意ができたけど。一緒にどう?」


「あ、いいんですか?」


「勿論よ。今日の大成功はヒトシのお陰だもの。」


「ありがとうございます。そういっていただけると頑張った甲斐があります。」


「もう行ける?こっちは準備できてるけど。」


「はい、ちょうど片付いたところだったんで。」


「そう、じゃ、いきましょ。

 大したものじゃないんだけどね。」


「いえいえ、実はもう腹ペコだったんですよ。」


「そうよね、あれだけ働いてくれたんだもの。沢山食べて頂戴ね。」


焚火を囲むアイアンクロスのメンバーの中に混ぜてもらう。

ベーコン入りのオニオンスープと、保存の効く固いパン。

パンをスープに浸し、柔らかくして食べる。


うん、お腹は膨れるけど。これじゃ力は出ないよね。


「少しだけ、火を借りてもいいですか?」


「もちろん。だが何をする気だ?」


アーロンさんが興味津々で聞いてくる。

俺はカバンの中から薬草で包んだオーク肉を取り出す。

薬草で包むことでオーク肉の腐敗を防げるんだとか。

宿の女将さんの知恵です。


まな板と大きめのナイフを取り出し。

一口大に切り木の枝に刺して、焚火のそばに突き立てていく。

しばらくすると、肉の焼ける香ばしい匂いが漂い始める。

軽く塩を振って。完成と。オークの串焼きの出来上がり。


気が付いて周りを見ると、アイアンクロスの皆さん。

生つばを飲み込むのも忘れ、まばたきも忘れ、お肉に目が釘付けに。

みんな、そんなに目を見開くと、焚火で目が乾きますよ。


「次々と焼けますから、順番にどうぞ。」


5,6個の肉の刺さった串を一本ずつ渡していく。


「た、食べてもいいのか?」


「どうぞどうぞ。」


「やった!肉だぞ!まさか遠征中にこんなもんが食えるとは思わなかった!」


「いいんですよね、食べていいんですよね。これ夢じゃないですよね?」


ひと際目をキラキラと輝かせる食いしん坊の女の子はイリさん。

そんなに喜んでくれるとはおじさん作った甲斐がありました。


「これで明日も頑張れるぜ!」


「ささ、冷めないうちに召し上がれ。」


オーク肉を枝から引き抜き頬張る。


「んぐっ!」


「えっ!?」


「な、なんだこれは?」


あれ?腐ってたかな?そんな匂いはしなかったけど…。どうしよ。


「ヒトシ、何を食わせた?!」


「ご、ごめんなさい。」


「これはなんの肉を使ったの?豚でもないわね。とにかくこんな美味しい肉は初めてよ!」


「あぁ、なんだよこの美味さ。冒険に持ってきちゃダメだろこれ。」


「…………。」


イリさんはもう夢中で喰らいついてますね。食いしん坊さん。


「なんの肉かは秘密です。」


「おいおい、秘密かよ。街に戻ったらぜひ買って食べたかったぜ。」


「フフフ、銀緑亭と言う宿屋に行けばこの肉を使った料理が食べられますよ。」


「銀緑亭だな。憶えた。みんなも憶えたな。必ず行くぞ!」


「「「「おぉー!!」」」」


一致団結ですな。冒険とは関係ないところで。


女将、また忙しくなってしまいそうです。


「そうだ、剥ぎ取りの方は捗っているのかい?」


アーロンさんの問いかけに答える。


「はい、ちょうどさっき終わったところです。」


「そうか、すまないな。出来る範囲で構わないからな。」


「はい、2時間で何とか。俺のできる範囲では終わらせました。

 あとチェックしてもらって、積み込んで終わりにします。」


「わかった、あとの事は剥ぎ取り士に任せて、休んでくれてもいいぞ。」


「いいえ、積み込みまでやっちゃいます。」


「悪いな。じゃあ剥ぎ取り士の分と合わせて、積み込んでしまおう。」


「はい、そうしないと。馬車一台じゃ運べませんからね。」


「そうだな、明日からは剥ぎ取り士も馬車も増員して、残りの剥ぎ取りも済ませよう。」


話がかみ合ってないぞ?


「えと、剥ぎ取り300匹分終わりましたよ?」


「「「「え?」」」」


全員がこっちを見た。


「おいおい、冗談だろ?」


「いえ、あとで確認お願いします」


俺はいたって真顔で答えた。


「馬車に積んでしまえば、明日の朝一で出発して、

 昼前には戻ってこれるんじゃないですかね?」


王都からの時間を計算すると、一日二往復は可能なはず。


あれ、反応がない。何か間違ってた?


「二往復は、しない方向ですかね?」

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