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第六話 シェロルの依頼

ベルセルクゴブリンのことを、ギルドマスターのダンテさんに根掘り葉掘り聞かれ。

小一時間。誰にも言うなと念を押された。

そりゃベルセルクゴブリンががダンジョンマスターで

昔の勇者に封印されてて、その封印を解いちゃって、

倒したらダンジョンマスターになっちゃったなんて。

誰に言えるだろうか。

あ、ダンジョンマスターの証。魔水晶の記憶です。


こうやって嘘に嘘を重ねて、嘘で塗り固められ、

嘘に縛られた人生を歩んでいかなくてはならないのね。

しくしく。


そんなセリフを呟きつつ一階への階段を下りていると、

男と女の言い争う声が聞こえてきた。

いや、男が一方的に怒鳴り散らしてるのか。

それを何とかなだめようとしている女の人の声。

聞き覚えがある。シェロルさんだ。

一階に着くと、強引に腕を引いて連れて行こうとしている男に声をかける。


「受付嬢さんを連れ出されると、みんな困っちゃうんです」


「あ゛?!」


ひ~、この人ちょ~怖いんですけど!

身長は2メートル近くあるか。30代半ばの強面さんだ。


「受付嬢さんにそういうことするのは、ギルドの規約に違反しますよ。」


たぶん。


シェロルさんを見ると。涙目で頷いた。合ってたみたい。


「俺はこいつに用があるんだよ!ギルドなんて関係ねぇ!」


あ、話通じない系ですね。


しょうがない。


「痛がってるからとりあえず放しましょうね。」


男の腕を掴んで、少しだけ力を…。


ミシ、パキンっ!


あ…。


「あ?ガァーッ!」


ごめん、強そうだなと思ったけど、案外力加減間違ってたかしら?


すぐポーションをかける。青白く光り。紫色だった手首が元の色に戻っていく。


ふぅ、ふぅ、ふぅ。相当痛かったのか、かなり息が荒くなっている。

どう、動かせる?あ、グーパーして動かせるようだし、大丈夫だね。

後で難癖付けられたくないし。こういうのは直ぐやらないとね。


まあ、難癖付けるような奴なら容赦しなくていいから、楽だけど。

あら?いつからか男の子らしいセリフも吐けるようになったじゃないの。


「くそっ!」


男は手首を押さえながら逃げるように帰っていった。


シェロルさんは男に引っ張られた手首を押さえていた。


「腫れてるじゃないですか。右手、出してください。」


腫れた手首にポーションを数滴たらす。

みるみる腫れが引いていき、ほら元通り。


すると、シェロルさんは恐怖と安堵からか、

鼻水をすすりながらポロポロ大粒の涙をこぼした。


普段は凛として見えるけれど、やっぱりか弱い女の子だよね。


治った手を取り、ポンポンとしながら、


「さて、さっきのことダンテさんに報告しなくちゃですよ。

 次何かあったらすぐに呼ばなきゃだめですよ。」


何度も感謝と謝罪の言葉を述べ二回に上がっていく姿を見送り。

ギルドを後にした。


さて、夜まで待ってゴブリンの討伐部位ゲットしてきますか。


そう。俺はまだ、ゴブリンの討伐依頼を達成していないのである。

説明よく聞いてなかったかも…。

討伐の証に討伐部位と言う、

それぞれ決められた部位を持ち帰らなければいけなかったのだ。


ちなみにゴブリンは右耳。ふう、危ない危ない。危うく依頼失敗するところだよ。


翌日、大量のゴブ耳を持って行き、依頼達成。


ゴブリンダンジョン、マスター権限で、

放出型から、拡張型ダンジョンにしたから

もう外には出てこないんだけどね。


帰りがけ、依頼を掲示板から探していると、シェロルさんから声を掛けられた。


「昨日はほんとにありがとうございました。

 あの後ギルドマスターに、なんですぐ呼ばなかったのか。

 とおしかりを受けました。」


「そうですか。そりゃダンテさんの方が怖かったですよね。」


フフ、と、シェロルさんが笑ってくれた。


そして真剣な顔になって。


「実は、昨日怖くて家に帰れなかったんです…。」


昨日は仮眠室に泊まったらしい。よく眠れなかったようで、

目の下にうっすらとクマができていた。


「そこで相談なんですが、あ、依頼です。

 ひとしさんにギルドへの行き帰りの護衛をお願いしたいんですけど。

 ひとしさんなら信用できるかなと思って。」


うん、もちろん引き受けますとも。

困っている美人さんを見て見ぬふりはできません。

あ、美人さんじゃなくても助けますよ。誤解無いように。


送り迎えは元より。自宅警護用のクローンもこっそりつけておこう。

シェロルさんには感知魔法ってことにして伝えておこう。


お、さっそく来ましたね。若い二人組だ。


「おねーさーん、俺らとあそぼ。」


チャラいなー。


「おにーさんは、ここでおやすみ!」


いきなり腹パンですか?いきなりのステーキだったら大歓迎ですけども。

俺は腹筋に力を入れる。


あ、なんか嫌な音がした。


おにーさんはまさかあなたの拳が壊れるなんて思っても見ませんでしたよ。

案外やわですね。もう少し頑張りましょう。


「クソっ!こ、こいつ。腹に鉄板か何か入れてやがる!

 おい!狙うなら顔だ!」


え、何も入ってませんよ。さっき食べたオーク肉なら入ってますけど。

うん、きっとそれのお蔭だ。


「おらっ!」


お、アッパーですね。もっとこう体に真っ直ぐ!腕をしっかり振りぬいて!

フォームを直すように打ち出されたアッパーの肘に手を添える。

添えたはずだったんだけど。


「あ?!あ?!」


肩から肘があらぬ方向を向いてしまっていた。


あなたも、もう少し頑張りましょう。


おっと。いきなり腹パンにはいきなりポーションで

全力スマイルとともにお返ししときましょう。


若い二人組は、あまりの恐怖に気を失ってしまったようです。

なぜだろう?


「シェロルさんや、なぜこんなことになっているのか心当たりは?

 さっきの冒険者といい、今のチンピラおにいさんと言い。」


「わかりません。特に恨みを買うようなことはしてないと思うんですけど。」



家に着き、玄関まで送り届け別れる。


「待ってください。このまま一緒にいてくれませんか?

 依頼した内容とは違うんですけど…。」


やっぱり怖いのか。一人にはなりたくないよう。

美人さんと一緒に入れるなら願ってもないことですけど。


「何かあったらすぐ来れるように、

 感知魔法かけておくから、心配しないでください。」


「あ、あの、でも、一緒に…。」


「わかりました、夜に何回か見回りに来ましょう。

 それでいいですね?」


「はい、わかりました。。。」


何とか納得してもらった。

大丈夫ですよ。常に見張っておきますから。クローンが。


そして夜になり。深夜を過ぎ、

さすがにそんなにしつこくはして来ないだろうと思ったその時、

黒装束の三人組が現れた。明らかに怪しい。


シェロルさんの家を取り囲むように別れ。一人が正面に回る。

一人が窓に近づき、


「これ以上近づいたら。どうなると思う?」


そいつにクローンで近づき声をかけてみる。


驚いたように振り返るけど、こっちの姿は見えない。

また後ろに回り、


「お前じゃ役不足だ、さっさと帰るんだ。」


男は、怯えたようににうなずくと逃げるように帰っていった。

そしてもう一人も。


残るは、正面の男。

気づかれないように手足に縄をかけ。かけ。かけ。かけ。

え、これホントに気付いてないよね。あまりにも無防備すぎる。

一応声をかけてみるか。


「おい、お前らのボスは誰だ?」


男は驚き振り返る。そして体が動かないことに気づき手足を見る。

驚愕の表情だ。

い、いつの間に!?って感じ。

おもろ、隠密スキルおもろ!

イタズラに最適。


おっと、一人でテンションあがってしまった。


「だれの指示でこんな事をしている。」


男は冷や汗と脂汗でびっしょりだ。ちなみに下半身もびっしょりだ。

シェロルさんの家の前でマーキングはやめてくれ。


男は一人のクランリーダーの名前を吐いた。

なぜこんなことをしているかは本当に知らないそうだ。


そこで束縛を解き解放した。

それだけ分かれば十分。


翌朝、シェロルさんにその男についてさりげなく聞いてみた。


シェロルさんは、確かに一度受付の時に誘われたそうだ。

でもあまりいい噂を聞かなかったし、表情が気持ち悪くて。

顔を見て話ができなかったそうだ。あ、ちなみにイケメンではあるらしいです。

悪い噂と言うのは、付き合っていたはずの女の子が消息不明になったり

娼館で見かけたり、大臣邸にいるのを見ただの、

魔物に襲われて死体で発見されただの。

なんだか恐ろしいものだった。


シェロルさんが引っ掛からなくて心底よかったよ。

とりあえず、ろくな奴じゃないことは分かった。

この一連の騒動も、断ったことへの逆恨みじゃないか?

プライド高いんだろうなきっと。性質ワル!


とりあえず護衛を付け続けるか。

いや、そいつに警告してやろう。

そうしないといつまでもしつこく付きまとってきそうだ。


クローンで捜索をかけると。奴はクランの事務所にいた。

さてさて、気持ちよさそうなソファーですね。

となり失礼しますよ。となりのとっとろ、とっとーろ。

鼻歌が漏れてしまった。


驚いて飛び退くクランリーダー。


「イケメンだと?ただの間抜け面じゃないか。」


「だれだ?こんなことしてタダで済むと思ってるのか?」


あの、そっちじゃないですよ。後ろですよ。後ろ。

ソファーに座ってますから。いいですねこのソファー、

うちのスライムの座り心地にはかないませんけど。


「こっちだ、後ろだ。」


「こんな事をして何が目的だ?」


だから、そっちじゃないって。ソファーソファー。


しょうがないから、向いている方に移動してやる。


隠密を解き白い忍びが姿を現す。


「貴様が今していることは、俺に対する敵対とみなす。

 ヒトシ、と言う名を聞いたらすぐに尻尾を巻いて逃げることだ。

 さもなくば、こうやって近づいて。さよならだ。」


いや、こいつのやってきたことを考えたらただで殺すわけにはいかないか。


右耳を切り飛ばす。すぐにポーションをぶっかけ再生。


「お前の生死は俺が握っていると思え。次はないぞ。」


これだけ脅せば十分でしょ。


男はうずくまって震え、身動きできなくなった。

鳴いているのか、グズグズ聞こえる。


これに懲りて、もう悪いことやめてくれるといいな。


その後、シェロルさんとこに向かい。もう解決したと伝え。

何かあったらすぐに知らせてと言っておいた。


とりあえず、依頼達成ってことで。めでたしめでたし。

終わり方が雑!

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