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第二話 レイスのレイちゃん

幽霊にレイちゃんもどうかと思うよ。

薬草の採集を午前中で終えてしまった俺は、一旦宿に戻ることにした。

魔力もたまっているので、ダンジョンに行ってクローンでも作ろうかと思っていたその時。

部屋の隅に気配が。

いる、何か、得体の知れないモノが…。

て、ヒョロちゃんだよね。得体知ってた。ごめん。

あれ、でも少し雰囲気が違う。

ヒョロちゃんは、身振り手振りで髪をなでたり服を整えたりするしぐさをしていた。

そうか、俺が「かわいいくしてね」って言ったから、頑張って身なりを整えてくれたんだね。

声は届かないけど、一生懸命さは伝わってきた。

でも、うん。やっぱりクローン通さないと喋れないから不便だな。


今度はお腹のあたりを押さえて、上目使いでこっちを見ている。

ごめん、いくら身なりを整えても、

痩せこけて青白い顔でボロの服を着ているあなたは、少し不気味であります。

いや、その上目遣いが呪でもかけてるんじゃないかとすら思えます。

ホントごめん。


後ずさりしそうになるのをぐっとこらえ、何を言いたいか考える。

お腹をスリスリ。


あ、おなか壊しちゃった?

昨日の夜は肌寒かったもんね。


ちがう。


お腹がすいたんだね。俺の生気あげるって言ったもんね。

いいよ。


どうやって生気吸うか分からないから、

とりあえず俺はベッドに腰掛けた。

そこへ、ヒョロちゃんがおもむろに近づいてきて…。


ゆっくりゆっくり、近づいてきて…。


ね、お願いだから普通に近づいてきて。ね、怖いから。


俺の胸に手を当て、腕が体の中に入ってきた。


おふぁー!刺さってる、刺さってる!


痛くも何ともないけど。恐怖体験体験中!


そしてそのまま、するっと、吸い込まれていった?


え?


…え?



…。


出てこない。生気吸い取られた感じもないけど。


これでよかったの?


(よくないよ!)


!?


頭の中から女の子の声が聞こえた!


(出れなくなっちゃったじゃない!)

(なんなの、この沢山の白いモヤモヤ達!)

(ちょっとヒトシさん!ここから出して!)


ん?あなたは誰?そしてなんで僕の頭の中から声がするの?


(生気くれるって言うから、分けてもらおうとしたら中に閉じ込められちゃったんだけど!)


え?ヒョロちゃん?!


(ヒョロちゃんって誰よ!失礼ね!私は…。誰だっけ?)


ヒョロちゃんは自分の名前も憶えてないらしい。お馬鹿さん?


(バ、バカって!さっきからホント失礼ね!それからヒョロちゃんは絶対に嫌!)


なんか、さっきのレイスの健気なイメージと全然違うんだけど。


(だってそれは…。生きるためにしょうがなかったのよ!私だって必死だったの!)


そうかそうか。レイスだから生きてはいないんだけどね。

それにしては、なんか今とても元気だね!


(そういえば、ヒトシさんの中に入ってからすごい元気になったかも。)


じゃあ、このままでいいんじゃない?


何を言っているんだ俺は、このままこの子に心の中に住まれてしまったら

あんな想像や、こんな妄想まで全部ダダ漏れになってしまう!


(あの、すでに漏れてるんですけど…)

(男の人ってホントそういうの好きだよね。)


う…。なんだ、この恥ずかしさは。心の中をのぞかれるって、こんなにも恥ずかしいものなのか。

もうどうでもいい!どうぞ、まる裸の俺を見てください。


(お断りします!いいからこっから出して!)


はい。そうでした、出て行ってもらわないと俺の妄想異世界ライフがぶち壊されかねない。


(へぇ、そういうのがあなたの願望なのね…)


あぁ、見ないで!見ちゃダメ!


(…。)


なぜだろう、軽蔑の眼差しを向けられている気がする…。


ここは一刻も早く出て行ってもらおう、俺の精神衛生の為にも。


とりあえず、名前だな。ヒョロちゃんはナシ!とのことなので。


うーん、霊子!


(なんかヤダ、まず字がヤダ。)


即却下された。


じゃあ、レイは?レイちゃん。これ可愛くない?


(ん、まあまあね。それでいいよ。)


なんか上から目線じゃない?そんなにいやなら自分でつければいいのにね。


(私たちは自分で名前付けれないのよ。)


あ、そうなんだ。それじゃ、レイスのレイちゃんで。


で、どうやったら外に出せるかな。

ん、白いモヤモヤがそこにいっぱいいるの?


(そう、なんかとにかくいっぱい。何千、何万居るわ)


それっておそらくクローンの元だよな。


俺はイメージする。ヒョロちゃんもとい、レイスのレイちゃんを。


掌から白いモヤが、そして、一人の女の子が姿を現した。


「ん!」


背伸びをする女の子。つやつやの金髪に少し尖った耳。

少しボーイッシュで活発そうな顔立ち。

背伸びした胸にはなかなかの大きさのお胸が二つ。

服がぼろだから隙間からちらちらと何かが見えてますよ~。

おじさん、目が釘付けです。


「ちょっと、ヒトシさん、どこ見てるのよ!」


大きなお胸をぐっと寄せ、身をよじって隠そうとするが、そっちの方がセクシーですよ。


「思った通り、出てこれたね。」


「うん、よかった。なんだか調子もすごくいいの、ヒトシさんのお蔭!」


一転、今度は抱き着いてきた。おじさん、ムフフな展開は馴れていませんぞ。

どうしていいか分かりませんぞ。


…あれ?


感触がない。お胸の当たるやわらかな感触が…無い!


「レイちゃん、あなたは、体を持ってない?」


「何言ってるのヒトシさん、レイスなんだから当たり前でしょ?」


「え、でもこの前と違ってはっきりと見えてるよ?」


そう、さっきまでは何となく不鮮明というか、実体のない感じがしてたけど、

今ははっきりとそこにいて、触れられそうなくらい。

だから、感触がないことに驚いたんだ。


「多分一回ヒトシさんと繋がったから、私、ヒトシさんのモノになっちゃったんだわ。」


おいおいおい、そういう誤解を生みそうな発言はやめてもらおうか。

何もしてませんからね。わたくし未成年に手なんて出してませんからね。


「たぶん、ヒトシさんが出し入れできると思うよ。」


おう、レイちゃんさん。どうしてこうなったのだ?

そして再び!

誤解を招くような発言は慎んでいただきたい!


俺が自在に出し入れできるって。

それじゃまるでクローンじゃないか。クローン少女じゃないか。


あれか、シンクロ率高いのか?司令が好きなのか?

敵と自爆したはずが、なぜか生きてたりするんですか?

本部にたくさんのクローンがいるんですか?


そういう難しい話は結構です。こちとら、ライトなノベルなんで!


こうして俺は、レイスのレイちゃんをクローン化したのでした。

異世界で漢字の概念。そこには触れないで…。

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