第十九話 おっちゃんダンジョンへ
ブルーレインにアイアンリザード買取一時停止の連絡をし、当面はロックリザードのみの討伐ということで話がついた。
さて、次は御者のおっちゃんだな。
御者のおっちゃんの話を聞こうと馬車に近づく。
すると俺の姿をみつけたおっちゃんから話しかけてきた。
「おうヒトシ、なんつーか、アイアンクロスとの別れは残念だったな。」
御者のおっちゃんもこの依頼の最初からの付き合いだ。俺たちの関係もよく知っている。
「イリさんの家族が大変なので仕方ないです。でも目的が果たせそうなんでこれで良かったんです。」
「そうだな…。良かったんだよな。」
少ししみじみしてしまった。
「んで何か話しか?」
そうだった。
「少し運送の事で聞きたいことが…。」
「ああ、運賃のことか?
ヒトシにならもう少しまけてやっても構わないぞ。
十分儲けてるからな。」
「それはありがたい話なんですけど…。」
「ちがうのか?じゃあ何の話だ?」
てっきり金銭交渉だと思ってたおっちゃんは首を傾げる。
「納め先の話なんですけど。」
「ああ、その話か。
それならちゃんと言われたとおり、剥ぎ取り屋共のモノは冒険者ギルドに納めてるぜ。」
言われた通り?剥ぎ取り屋のを冒険者ギルドに?
「誰がそんな事を?」
「剥ぎ取り屋共がそう話してたぜ。
みんなでそう取り決めたんだろ?」
そういう事か。慌てて剥ぎ取りの応援を呼んだのはそのためか。
キレイに討伐した魔物にわざわざ傷をつけて冒険者ギルドに下ろしていたんだ。いやその前だ、剥ぎ取り屋の素材をこっそり見た時から傷は付いていた。最初から付けられていたんだ。あの剥ぎ取り屋共は商会の息のかかったヤツらだ。つまり、値切るネタとして傷を故意に付けてたんだ。それなのに俺が剥ぎ取りを始めてキレイな素材を卸すようになったから作戦を変えたんだろう。
「そうでした、じゃあそのままお願いします。
あ、値引きの件は後で相談しますね。」
「了解した。じゃあ、今後ともよろしく頼むぜ。」
あ、でもアイアンリザードしばらく出荷できないからおっちゃんも俺も少し暇なんだよな。
「おっちゃん。魔物倒したことある?」
「な、なんだ急に。まあ、運送中に何度かはな。でもはぐれゴブリンくらいだ。」
なくはないんだ。そもそも、冒険者以外のレベルって1なのかな?
「おっちゃん、レベルは?」
「3だ。それがどうした?」
「レベルアップに興味は無いですか?」
俺の突然の問いかけにおっちゃん唖然です。
いや、ダンジョンに潜らなくてもやっぱり運送って危険は付き物だし。レベル上げとけばいざと言う時に役に立つ。
「冒険者じゃないんだ。魔物退治なんて柄じゃない。」
「そう言わずに、危険な事はさせませんから。」
剥ぎ取り小屋に送られて来てるロックリザードは800匹か。そろそろだな。
俺は強引におっちゃんを引っ張ってダンジョンの中に。
「おい、おいヒトシ!魔物が出たらどうする?」
おっちゃんは辺りをキョロキョロ見回しながら抵抗する。
「大丈夫ですよ、ここら辺はハイトさん達が全部倒してますから。」
そしてダンジョンの中を進み。
…いた。
「ハイトさん。」
「ああ、ヒトシくん、君の仕掛けはバッチリ順調だよ。ただ魔物回収口の広さはもう少し改良を加えてもいいかもしれない。」
「分かりました、広げた方が使いやすいですね。やっておきます。」
やっぱり実際使ってみないと分からないこともある。こういう意見はとても助かる。
「すまない。ここまで良くしてもらってるのに、ワガママ言って。」
「いえいえ、言ってもらった方が助かります。今後の参考にもなるし。」
「わかった、では遠これからも慮なく言わせてもらおう。」
ハイトさんたちの視線が俺の後ろに移る。
「ところでなんで御者のおっちゃんがここにいるんだい?」
俺がずっと御者のおっちゃんて呼ぶもんだから皆もその呼び方で定着してしまった。
「ハイトさんたちはこれからどうする予定でしたか?」
「ロックは狩り尽くしてしまったからね。
アイアンでも狩ってレベル上げでもしようかと考えていたんだけど。」
「ちょっと俺たちに付き合ってもらってもいいですか?」
ハイトさんがニヤリと笑った。
他のメンバーも何か言いたげに俺とおっちゃんを見ている。
「何を始める気だい?」
期待の眼差しだ。
そんなに見つめないで。穴が空いちゃう…。
「何をくねくねしてるんだい?」
あ、なんでもないです。
気を取り直して、
「おっちゃんのレベルをあげようと思って。」
どっと笑いが起こる。
御者のおっちゃんはバツが悪そうだ。
「いや、すまない。
見たところおっちゃんはあまり乗り気ではないようだけど。」
「そりゃそうだ。
こんなダンジョンの奥深くまでなんの準備もなしで連れてこられて、不安にならない方がおかしいぞ。」
「もっともだね。
わかった僕達も全力でサポートしよう。おっちゃん安心してくれ、危険な目に遭わせないと約束する。」
「お、おぅ…。」
力強く語るハイトさんに気圧され気味のおっちゃん。
「何てったってこんな面白い機会を逃すのはもったいないからね!」
ブルーレインの皆めちゃめちゃ乗り気です。
と、言うわけでおっちゃんの修行が始まるのでした。




