第十四話 C級パーティブルーレイン
新たに来たパーティはブルーレインと名乗った。
B級の魔法使いがリーダーの5人組C級パーティだ。
アーロンさんは何度かギルドで見かけた事があるといっていた。
初日はとりあえず下見と準備、キャンプの用意をするようで、
明日から潜ると言うことだった。
運搬屋と剥ぎ取りは優秀なやつが現地にいると言うことで、
現地で交渉するつもりだったらしい。そんなやつ見たことないけど…。
あ、俺か!
俺にもっと頑張れと…。馬車馬のように働けと…。
いいでしょう。やってやりますよ!俺のクローンがね!
「待ってくれ、ヒトシはこっちで雇ったんだ。
勝手に引き抜かれては困る。」
そんな気合を入れている俺だったが、
それに待ったをかけたのはアーロンさんだった。
「そんなもの、本人との交渉次第だろ。
そっちの2割高でどうかな?
こっちはC級剣士三人にB級魔導師とC級魔導師兼治療師だ。
僕たちと組んだ方が断然稼げるはずだ。」
ブルーレインリーダーのハイトは
アーロンさんを無視して会話を続けた。
「いいですよ。」
「おい、ひとし?」
「問題ありません。両方受けましょう!」
「え?」
「はぁ?」
二人ともバカかこいつって顔してる。傷つくなぁ。
「本当に、できるんだな?」
アーロンさんが半信半疑ながら念を押してきた。
「はい、問題ないです。」
「でも、先約のアーロンさんを優先させてもらいますけど。」
「なっ、そう言うことか…。くそっバカにしやがって。
やらないならやらないとはっきり言え。」
「いえ、ですから…。」
「もういい、こちらはこちらでやる。
どちらが優秀かそれを見てから判断するんだな。
しかし、今さら2割り増しでは雇わないからな!」
やるっていってるのに、わからない人たちだ。
「そうですか、必要になったら声を掛けてくださいね。」
「ふんっ!」
「あ、それじゃあ剥ぎ取りだけでも…。」
ああ、怒って行ってしまった。
「まあ、むりもない。悪いが俺もさすがに信じられない。
本当に、やれるのか?」
「はい。ただ剥ぎ取り小屋を拡張しなきゃないですけどね。」
平然と言い切る俺に、唖然とするアーロンさん。
やがて考えることをやめたアーロンさんが諦め顔で、
「ひとしが言うならできるんだろう。
なんだか考えるだけ馬鹿らしくなってきた。」
俺は、親指を突き立ててグッドサインを出した。
「はぁ、何かあったらいってくれ。」
「わかりました。」
ダンジョンに入り、狩り場の分担を話し合う。
ダンジョン情報を提供し、段取りを決める。
まずはロックリザードの生息地を10に区切り分担を決める、
殲滅した方が次の区画の権利を得る。
ロックリザードを殲滅したら、アイアンリザードの生息地に移る。
100匹単位の区画で区切り、同じように進めていく。
マッピングの終了していない部分はお互い情報を共有して、
狩り場が被らないようにする。
先にダンジョンに入り、情報提供したこちらが発言権を持つのは当然。
あとから来た方は相当の活躍をするか、
格上のパーティでない限りこの優位性は覆らないのだが。
リーダーの性質によっては対等になったり優劣が覆るので、
生き馬の目を抜く冒険者業界ではお人好しや
優柔不断なリーダーだと割りを食うことが多い。
アイアンクロスの信条は「狩り場に後先はない」「冒険者同士協力する」。
という考えを持っているので、お人好しの部類に入る。
剥ぎ取り師等の便利屋と呼ばれる格下に見られがちな冒険者も対等に扱い、
値切ったり横柄な態度を取ることもない。
パーティもリーダーの意思を尊重し方針を任せている。
ダンジョン情報も無償で共有している。
優位性はもはやない。
…のだけど。
ま、そういうことです。
午前。一区画目をレインに譲り、クロスは二区画目からスタート。
この時点でかなりのお人好しなのだが。
「よし、30分で20は狩れそうだね。
運搬も考えても午前中に次の区画に写れるか。
上々の滑り出しだね。次の区画は僕たちがもらったな。」
「よいしょよいしょ。」
50引き運ぶ俺。
「な!うそだろ?!」
「あ、頑張ってますね。
馴れればもっと効率よく狩れますからねー。」
俺が運んでいるのは50匹だがすでに200匹倒して運んでいる。ドザエもんで。
すでに2時間半でロックリザードは狩り尽くせるのだ。
ブルーレインが一区画狩り運び終わるまでに3時間。
すでにロックリザードはり尽くされていた。
レインがアイアンリザードの狩り場にたどり着くまでにクロスはさらにアイアンリザードを二区画。
アイアンクロスの実力はすでにCランクではない。
焦ってかり始めるブルー。
「ぐっ、固い…。」
「爪に気を付けろ!」
焦りから先走ったメンバーにリーダーの指示が遅れる。
「ぐあっ!」
左手にロングソードを装備した剣士が
防具に守られていない左肩の隙間を深く切り裂かれる。
肩を庇いながら、剣を振り回し距離を取る。
荒く息をし、苦しそうだ。
相当な深手を負ったようだ。
利き腕がやられては既に戦意はない。
しかし執拗に追って来るアイアンリザード。
援護射撃のファイアバレット!
鋭い弾道がリザードの頭を跳ね上げる。が、ダメージは少ないようだ。
そこへ戦士の渾身の振り下ろし。
グシャりと頭部がひしゃげ顎を地面にめり込ませるアイアンリザード。
頭部は固い外皮でおおわれているため、
致命の一撃ではないが戦闘不能にはできたようだ。
しかし一息つく間もなくアイアンリザードが3匹現れた。
辺りを見回すアイアンリザードは何かの臭いを嗅いでいる。
そして怪我をした剣士に迫った。
血の臭いをかぎつけ、獲物がどれかを見定めたようだ。
ファイアバレット!
リザードの側頭部に当たり頭を弾く。命中精度は相当いい。
が、構うことなく前進するリザードたち。
時間稼ぎにもならないか。
さらに迫るリザードにアイスニードルが次々と飛ぶ。
治療していた魔導師が治療を中断して応戦しはじめた。
身を屈め硬い頭部と背で受ける。
砕ける氷を避け前進するリザード。
魔法では容易に止まらない。いや、氷をいやがっているようだ。
が、パニックでそれに気づく者はいない。
剣士が追い付き振り下ろしの斬撃を後頭部に。
顎を地面に叩きつける。渾身の一撃に沈むリザード。
けど弱点はそこじゃない。
しかし別のリザードが後ろから戦士の足を払う。
全体重を剣に乗せていた戦士は避け遅れ横向きに倒れる。
爪がモモに当たったか深く抉れた。
滴る血に即座に反応するリザード。
後頭部を攻撃されたリザードもムクりと起き上がる。
さらには頭を潰され戦闘不能だったリザードも目を覚ましたようだ。
いよいよパニックになるパーティ。
「アイスニードルです。氷をいやがってます!」
俺の声に気づき、とっさに目の前のリザードにアイスニードルを連発。
いやがり顔を背けた首筋にぐさりと剣が突き刺さり倒れた。
「伏せろ!」
囲まれた戦士はとっさに伏せる。
そこへアイスニードルの嵐が2方から放たれる。魔術師二人の連携だ。
いやがり首を下げるアイアンリザード。
「弱点は首だ!後頭部はダメだ、横から隙間を狙え!」
大量の氷に後ずさりするリザード。
空気が冷えたせいか動きがかなり鈍い。
囲まれていた戦士が首の隙間にザクリと斬り込み。
あと二匹。
「無、無理だ、逃げるぞ!」
周りを警戒していたもう一人の剣士が叫ぶ。
「いや残りはあと二匹だ!しかもかなり動きが鈍っている。
こいつらをやってからだ!」
「だめだ!こいつら血の臭いを嗅ぎ付けてきやがった!」
地面を這いずり現れたのは10匹ものアイアンリザード。
「急がないと囲まれるぞ!」
「畜生!走れるか?」
「なんとかな。」
牽制しながら傷口を布で縛り応急処置を済ませた戦士が退路へと移動を始める。
「ダメだ…、回り込まれた…。」
新手はまだ低温に当たっておらず、
血の臭いを嗅ぎ興奮からか動きが活発だった。
「くそっ!アイスストーム!」
冷気の嵐がリザードの動きを鈍らせる。
「リーダー、魔力がヤバイ!」
「俺もさっきの乱発で残り少ない。怪我人を抱えては逃げ切れないか…。
畜生、ここまでなのか…」
そこに現れたのは、さらに4匹のリザード。
「みんな、覚悟を決めろ!
一人でも多く生き残るんだ!」
「「「オォォォ!!」」」
決死の戦いが始まる。俺の目の前で。
これはクローンで助けるべきか…。
いや、この世界は弱肉強食。人が手を加えては生態系が狂ってしまう。
違うから、生態系とかないから!よし、助けよう!
ズドッ!
リザードか倒れた。
ズドッ!ズドッ!ズドッ!
退路が開かれる。
「こっちです!」
クリーム色のローブを羽織った女の子、イリさんだ!
アイアンリザードを杖の先で一撃で葬り去り道を開いた。
驚き顔のブルーレインパーティ。
そりゃ前衛職でもない女の子が一撃でアイアンリザード倒してたらビックリするわ。
「動けませんか?ならこれを。」
イリさんが俺のあげたポーションを振りかける。
深く抉られた二人の前衛の肩と太ももの傷がみるみる塞がる。
状況が把握できない彼ら。
だがポーションを掛けられた二人の前衛は違った。
「ウォー!なんだか行けそうな気がしてきたぜ!」
「お前もか?!俺もだ!いくぜ!」
「おぅ!」
「お、おいどうしたお前ら?」
唖然とするメンバー。
しかし話も聞かず飛び出す二人。
「うぉー!」
「だぁー!」
動きの鈍ったリザードの首を次々に切り裂く二人。
「じょうちゃん!なんだこれは?力がわいてくるぜ!」
「おう、どんどんこいだ!」
さっきまでの劣性が嘘のようにあっと言う間に片が付いた。




