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第十三話 アイアンクロスの成長

アイアンリザードを倒し始めて数時間。

アイアンクロスのメンバーは確実に成長している。

アーロンさんとバズさんはもちろん、

レイラさんとイリさんも危なげなく倒せるまでに成長した。

アイアンリザードは動きが鈍いとはいえ、

女性の力で一撃で仕留めるのは難しい。


人には成長点と言うものがあり、

突然レベルとは関係ないところでステータスが跳ね上がるらしい。

その成長はレベルアップの比ではないらしく

成長点を迎えて今までさえなかった冒険者が

化けたという話も珍しくないそうだ。


俺まだそれ経験したことないんですけど。

やっぱりちゃんと自分で戦わないと

成長できませんよってことですかね。

まあ、人よりレベルだけは高いんだろうから

このままでも良いんですけどね。

ダメだ、これじゃあ向上心のまるで無い人みたいじゃないか。


つまり、アイアンクロスのメンバーの動きがいいのは

成長点を越えたからだろう。

今ではアイアンリザードが完全に格下だ。

流石にシルバーリザードまでは到達しなそうだけど、

これは相当狩るぞ。


ダンジョンも大分深くまで潜ってるから今日はダンジョン内で昼休憩。

俺は小屋に戻り既に剥ぎ取りの終わっている素材を小屋の外に出す。


今や運搬の荷馬車は10台。

一つのパーティが一日に依頼する量を遥かに超えていた。

素材を出していると、馬車が到着する。

そこから男女5人のパーティが降りて来た。

依頼主が別口で同じ依頼を出すことはよくある。

それだけ大量の素材を仕入れたいのだ。

恐らく大口の注文が入ったのだろう。

大抵こういう依頼は依頼主と顧客の売買契約が成立しているので、

割高で素材の買い取りが行われる。

普段は閑散としている、例えばココのような狩場でも

その時だけは賑わう。

別の馬車からは剥ぎ取り師の一団とみられる男たちが5名降りて来た。

さっきのパーティの剥ぎ取り師と思われるが、

こちらを睨みつけると、剥ぎ取り師のキャンプのある方向へ歩き出した。

どうやら先に来ていた剥ぎ取り師の仲間のようだ。

応援を呼んで、遅れた作業を取り戻すつもりか。

一人では仕事が間に合わないけど、

他人に仕事を取られるのが嫌だったんだろう。


それで素材を要求していた訳か。

それならそうと言ってくれれば全部任せたのにね。


アーロンさんは何も言ってなかったけど、知ってるのかな?

まあ、まだまだ剥ぎ取るリザードはいっぱいあるし、

あっちで処理し切れない分をこっちでやろう。

別パーティもきたし、

今のうちに倉庫の拡張なんかもやっておいた方がよさそうだな。

あと、アーロンさんにも知らせないとな。


「おう、ヒトシ!」


「あ、馬車のおっちゃん。」


依頼の最初に雇った御者のおっちゃんだ。


「いやいや、お陰で儲けさせてもらってるぜ。」


「こっちこそ助かってますよ、すぐに追加の馬車も手配してもらったし、

 積み込みまでしてもらっちゃって、さすがに一人では手が回らないので。」


「一人って、小屋の中に剥ぎ取り師がいるんだろ?」


おっちゃんは不思議そうな顔をした。


「ああ、そうだった。今の話しは無しで…。」


「わかってるよ。余計なことは聞くなってアーロンにきつく言われる。」


どうやらアーロンさんが気を回してくれていたようだ。


「おお、そうだった、アーロンに手紙だ。これは…依頼主からだな。」


依頼主はレノバ商会と言う王都でも5本の指に入る大きな商会。

商人ギルド長の弟が取り仕切っているそうで、

発言力も相当強く冒険者相手にも相当強引な値引きや追加依頼をし

刃向う冒険者や、目障りな商売敵などに嫌がらせをしたり、

暴力込みの脅しや、相手を陥れるために何でもやるらしい。

貴族たちとのつながりもあるそうなので下手に敵対すると、

王都で生きていけなくなるとか。

所謂悪徳商会ってやつだね。


アーロンさんは値切られるのは想定内で、数で稼ぐつもりだと言っていた。

今回の手紙もクレームとか値切りとか多分そんな類の手紙だろう。


素材を表に出し終わると、おっちゃんに挨拶をして、また洞窟に潜る。


戻ってみると、既にアイアンリザードの束が10出来上がっていた。

100匹ですか。早すぎるっす。まだ1時間も経ってないんですけど。


「アーロンさん。これ、依頼主からの手紙です。」


アーロンさんは手紙を受け取ると、手紙の封を切り読み始めた。


「あと、剥ぎ取り師が応援を呼んだみたいですけど、何か聞いてませんか?」


「いや、何も。そもそも、あの剥ぎ取り師は商会側で付けた者だからな。

 こっちからは何も頼んでいない。」


「そうなんですね。じゃあ、優先的に剥ぎ取りは任せた方がよさそうですね。」


「ああ、すまないな。そうしてくれると助かる。」


「それから、別パーティがさっき到着しました。」


「別パーティが来たか。ロックリザードの討伐は俺達だけで間に合うんだが。

 そうだな、それなら俺達はアイアンリザードに狙いを絞るか。

 そこら辺は後で話し合いだな。」


手紙を読み進めていたアーロンさんの表情が険しくなる。


「何か悪い事ですか?」


「いや、ロックリザードが予定より早く集まりそうで感謝していると。

 しかし傷が多く売り物にできるのは半分もないと。

 だが、せっかく採集してくれたもので買い取らないのは申し訳ないから、

 依頼額の3割で買い取ると。ふん。

 それからアイアンリザードも狩ってギルドに卸しているようだが

 アイアンも買い取りたいと…。」


「傷?討伐の時に付いた傷は修復してあるし、

 後半は倒すのにも急所を突いてるからほぼ無傷のはず。」


「運搬か荷卸しの時にでも傷が付いた、と言われるだろう。

 御者のおっちゃんには良くしてもらってる。

 迷惑はかけられない。ここは目をつぶる所だな。」


「そういう事ですね。汚いなぁ。」


「ま、それでも相場の値段よりは高く買い取ってもらえる。

 予定通りだ。」


「はぁ、そんなもんなんですね。」


「心配するな、ヒトシの取り分を下げるつもりはない。

 まあ、それも織り込み済みの依頼料なんだがな。」


アーロンさん苦笑いである。


「それよりも問題はアイアンリザードの買い取りだ。

 アイアンリザードは今の状態ならギルドでの買い取りでも十分な稼ぎになるし、

 わざわざリスクを冒してレノバに収める必要もないんだが。

 断るとロックリザードの買い取りにも影響が出そうだし、

 今後の王都での活動にも支障が出る。

 納めない訳にもいかないか。」


「悪どい奴らに儲けさせるのは癪ですけど、仕方ないんですかね。」


「ま、いざとなったら冒険者ギルドに掛け合ってもらうさ。

 とにかく今は少しでも早く多く稼ぐのが先決だ。」


「ですね。」


「頼むぞヒトシ。」


「うっす!」


その後もアイアンを狩り続け、午後4時で狩りは終了した。

最終的にはロックリザードを4時間で1000匹狩り尽くし、

アイアンリザードは6時間で1200匹狩った。

これどうやったって一人で運ぶの物理的に無理だから。

ドザエもん様様である。

俺はレイのダメ主人公と違ってちゃんとお礼言うからね。

ありがとうドザエもん。

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