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Face of the Surface  作者: 悟飯 粒
カマスクルセイド掃討戦総指揮者決定戦の章
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本当に騎士なんですか?

壁に腰をつけ、なんとか起き上がろうとするけれど、立ち上がることができない飯田さん。

私はそれを呆然と見ていた。

ええ!?いや、確かにお荷物になるとは言ってたけど、こんなに早く退場されちゃこっちは困るんですけど!


「おおっと!?飯田選手、相手の一撃で腰をやってしまったようだ!!やはり騎士にはこの戦いはキツかったか!?てかキツイんだよ!!普通勝てるわけがないんだ!!彼みたいにズルをしない限り勝てるわけがないんだ!!!」


歌恋さんが絶叫する。

観客席からは嘲笑やら、「いいぞ!」とか、色々と聞こえてくる。飯田さんをバカにしているのがよくわかる。


「場違いなやつはこれでリタイアしたわけだ………やっぱり雑魚はこうなる運命なんだな。」


健は腕を振り回し、体をほぐし始めた。


「この世は強え奴が全てだ。どんなに知識があろうが、どんなに戦略練ろうが、どんなにずる賢く生きていこうが、圧倒的な力の前には無力。それをこのバカは身をもって体験し、俺達に改めて認識させてくれたわけだ。弱いくせに粋がった末路だな。」


笑いながら健は喋る。


「………確かに飯田さんは弱いかもしれないけれど、それでも、」


グン!

私は駆け出した!


「ちゃんとチームの人達の心をまとめあげて、初めて会った私にも親切にしてくれた!良い人なんだよ!!」


確かにあの人は弱い。この大会出場者の中で1番弱い!それでも私が緊張している時は声をかけて和ませてくれるし、ちゃんと会話に混ざりやすいように話を振ってくれた!チーム全員の状況を把握して、孤立しないように配慮していた!誰よりも気遣いができる人だ!


「ふーーん………で、なんだ?」


グンっっ!!

健がいつの間にか私の目の前に!

やばい!ガードしないと!!


ガギン!!!

私が出したバリアーと、健の拳が高い金切り音を発生させる!!

私のバリアーは、ほんの少しヒビが入ったけれど、すぐさま修復した。


「お、前よりも強度が増したのか。一発で壊れないなんてな………」


健がそういうと、私から離れる。


「そうさ、魔力を磨いたのさ!ふっふっ、これでもう負けないよ!」


「じゃあ俺もちょっくら本気出してやる。」


そういうと、健は腰につけていた二本のうち一本、剣を引き抜いた。

そして、それを………


ドス!!

自分の体に刺した!!


「俺の魔力を教えてやるよ。教えたところで対処できないだろうけどな。」


スゥーー

刺さった剣が体へと吸い込まれていく。


「俺の魔力は武器を取り込むことで、その性質と能力、強さを取り込むことだ。」


パキン!

健の拳が鋼のように輝きだす。……いや、拳だけじゃないか、体全体が光沢を持ち始めた。


「今俺が取り込んだ剣は第一類勇者以上が真の性能を引き出せる上位の剣だ。性能は全てを粉砕する馬鹿力で、能力はなし。ただの洗練された業物だ。」


ギャリン!ギャリン!

拳同士が重たい金属音を響かせながら、互いに擦れ合う。


「さっき以上の力だから、きぃつけろよ。じゃないと、」


ダン!!

健がロケットのように踏み込んできた!!でも、やることは変わらない!さっきと同じでバリアを出して………


バリーン!!!!

健がバリアを殴ると、その部分が粉々に吹き飛ぶ!!


「大怪我じゃすまねぇぞ!!!」


グン!!ダン!!!

健は両手を合わせ、ハンマーのように叩きつけてくる!!

私はそれを左に避けることでかわしたが………


健の両手がぶつかった地面には、深い穴が出来ていた。丁度彼の両手がすっぽりと入るような大きさの

………あんなのが体に当たったら、簡単に穴が開いてしまう!!


「はっはっはっ!!ドンドンいくぜ!!守りきってみせろよ!?」


「くっ……」


バリン!!

バリン!!

バリーーン!!!


バリアを展開しては殴り壊され、攻撃を避け、バリアを展開し壊され………まるでバリアが意味をなしていなかった。平皿を割るみたいに、簡単に割ってくる。


「ふっ!!」


メシッ!!


「ィッ!!!」


完璧に意識から外れていた健の横蹴りが、私の左腕に決まった!

ベキ!!

一本ほど骨が折れたような音がした。


ズザー!!

私はその衝撃で地面を滑った。


「………しっかし、可哀想だよな。才能がない人間に生まれちまってよ。」


ガン!ガン!がン!

重たい足音が、こっちへと近づいてくる。


「どんなに努力しようが、才能の前にはなす術なく地に這いつくばる。………どう頑張っても、お前じゃ俺には勝てねぇんだよ。生まれた時から決まってんだ。」


ガン!!

健は私の二歩前で立ち止まった。


「勉強でも、運動でも、お前お得意のバスケでも、俺には勝てない。それはもう必然だ。」


「うっっさい!!」


私は起き上がって剣をふるった。

パリン!!

健の拳で、軽く砕かれた。

ピッ

しかも、その時飛んできた破片が私の頰を切り裂いた。私の武器なのに、それすらも健に味方しているかのように。


「お前の武器は武器であって武器じゃねぇ。お前の盾は盾であって盾じゃねぇ。誰も守れない、誰も倒せない。お前の力じゃ何も出来ないんだよ。才能の前ではな。」


健が腕を引き絞る。


やばい!!

私はすぐさまバリアを展開する。


「その薄っぺらい力で防ぎきれることを、薄っぺらい自身に向かって祈るんだな。」


ブン!!

健の腕が振り下ろされる!!


「もっと小さくだ上村さん。」


「!?」


ガン!!!

私は咄嗟にバリアを小さくした。

ピシッ

すると、ヒビが入りはしたがバリアは割れることなく健の攻撃を止めた。


「才能ねぇ……才能かぁ………響かない言葉だなぁ。運命並みに胡散臭い。」


飯田さんがブツブツと呟きながら、こっちへと歩いてきていた。


「………なんで歩けてんだよ。」


「ああ、これ?いやーー魔法って便利だよね。時間はかかるけれど怪我を治癒することができる。素晴らしいと思うよ本当。」


そう言うと、飯田さんは私の元を向き、駆け寄ってきた。


「上村さんが頑張ってくれたお陰だ。本当に、ありがとう。」


「………は、はぁ、どういたしまして。」


正直、この瞬間、私は飯田さんという人間がよく分からなくなっていた。弱いのは確かで、実力もないのは確実なのに、それでも侮ってはいけない何かを感じてしまったからだ。

動けないほどのダメージを受けたはずなのに、数分したらケロッと戻ってきて、自分よりも強い相手と、敬語ではあるけれど常に対等であろうとする姿勢が、言いようもない恐怖を与えた。


「おおっとぉ!?!?飯田選手復活だぁぁああ!!!彼の発言からするに、彼は回復魔法を習得しているようだ!!つまりあれか!?昨日のスカラさんの推薦があったことから、彼はスカラ一派の門弟なのかぁ!?!?」


飯田さんが復活したことによって歌恋さんの実況がヒートアップ!!


「………期待してもらって悪いんだけれど、俺弱いからなぁ。結局上村さん頼りなんだよね。………酷なことを言いますが、まだ頑張れますか?」


「邪魔だ!!この雑魚が!!」


健が飯田さんに向かって拳を振り下ろす!!


「………めんどくせぇなぁ!」


くいん!!

飯田さんは健の腕を受け止めることなく脇へとそらし、健の態勢を崩し、そのまま後ろの方へと投げ飛ばした!!


ガン!!

健は壁にぶつかった。

………ええ、何この武術。本当に弱いのかこの人…………


「こっちは作戦会議中なんだよ。邪魔すんな。」


「………てっめぇ!!!」


ガン!!!

健は怒りに任せ、勢いよく飛び出した!!


「ちっ、上村さん!いきなりで悪いけれど、俺の指示通りにバリアを展開してくれ!」


「は、はい!!」


私は急いで右手でバリアを出した。


「まずは小さく!!」


「はい!!!」


ガイン!!!

健が小さくした私のバリアを殴った!!

ピシッと音を立ててヒビが入ったが、壊れない!

………そっか!密度が足りなかったのか!!さっきまで全方位に対応するために拡張しすぎてたんだ!!でもそれじゃあ………


ぴとっ

そう思っていると、飯田さんが背後から私の右腕を掴んできた!!

なっ、うぇ!?


「次は俺の手の動く方向に腕を動かせ!!足りなくなった防御範囲をそれでカバーする!!いいね!?」


「……は、はい!!」


飯田さんがほんの少しだけ右に腕を動かそうとした瞬間、私は腕を勢い良く動かし、バリアを展開して健の攻撃を防ぐ!!左に動かそうとした時も、即座に反応してバリアを展開する!!飯田さんの動体視力は化け物じみていて、私じゃ反応できない早いタイミングで指示を的確に与えてくれる。

右、左、右斜め上、右斜め下、左上に49センチメートル、真正面………

飯田さんの指示に反応するうちに、妙な一体感を味わった。この人がどこに私を導こうとしているのか、どれくらいの距離なのか、それが手によるようにわかる。腕と手でしか触れ合っていないのに、それでも分かる。


「あああ!!!うざってー!!!雑魚のくせになんで俺の攻撃を防いでんだよああ!?!?」


そして、私が攻撃を防ぐたびに健は怒りを蓄積していく。………こんなに怒っている健は見たことがない。


「そりゃあ前、才能の差じゃない?」


攻撃を防ぎながら、飯田さんは健を煽っていく!!なんという強メンタル!!


「うっせぇえええ!!俺の方が強いんだよ!!お前らみたいな騎士とかいうよくわかんねぇやつなんかよりも、春香なんかよりも、俺は圧倒的に強いんだよ!!!」


段々と健の攻撃威力は上がっていく。けれど、それと並行して雑さも増していく。

飯田さんが手首をほんの少しだけひねった。今の私ならそれが何を意味するのか、すぐに分かった。


ギャリン!!

私はバリアを少しだけ上に傾け、健の攻撃をそらせるようにし、威力を殺していく。

冷静な状態の健ならすぐに分かるこの微妙な変化。でも今の彼は頭に血が上りすぎていて、それに気づかない。


「おう、だったらそれを見せてみろよ。10秒もあったら足りるかな………足りるよな?なぁ、健くん。」


「あああああああ!!!うざってぇえええ!!!」


健は腰に備えていたもう一本の剣を引き抜くと、自分の体に突き刺した。


「宝剣デュランダルの力を得た!!お前らまじで死ぬからな!!!覚悟しろよ!!!」


健の体が黄金色に輝き出す!!

宝剣デュランダル………って、確か、7大聖剣よりもひとつレアリティが下がる宝剣シリーズの一つだ!!性能がバカみたいに高くて、入手困難って聞いていたけれど………まさかそんなものをこいつは手に入れていたのか!!


「い、飯田さん……流石にあれは…………」


「………どうしたいんだ?」


私が及び腰になっていると、飯田さんは語りかけてきた。


「勝ちたいのかい?勝ちたくないのかい?………勝ちたいのならいくらでも手を貸すぞ。でも力を貸すだけだ。だってやるのは俺じゃない、君なんだから。」


………そうだ、試合前に勝つって宣言したんだ。覚悟を決めたんだ。絶対に勝ちたいって言ったんだ!

勝ちたい!勝ちたい!勝ちたい!勝ちたい!

私の頭の中はその言葉で一杯になっていた。


「………オッケー。それじゃ、腹くくれよ。」


「うぉおおおおおあああ!!!!」


ボゴン!!!

健は地面を吹き飛ばしながら全力で走ってきた!!私じゃ目で追えない速さだ!!

けれど、飯田さんの誘導ですぐに私は攻撃予測地点にバリアを展開する。

健の鬼気迫る形相。全てをかみ殺すかのような鬼のような顔だ。

………でも、


「負けたくないんだよこっちは!!!!」


「負けんだよお前がぁぁああ!!!!」


ズァアアア!!!

氷と水が私の小さな盾を覆い尽くした。

パリン!!!

まず氷が景気よく割れた。

チャプン………

そして僅かな水の層を通過し、

ベチョン!!!

とろろのような粘っこい水を吹き飛ばし、

パリン!!!

さらに氷を割って健の拳は飛んでくる!!!

………でも、これなら!!!


ガン!!!!

拳と私の盾が衝突する!!!

…………ピシッ、ピシッっ


殴られた部分にヒビが入った。


けれど、


「と、止めたぁぁああ!!!!」


歌恋さんが叫んだ!!

そう、止めた!!止めきった!!!1番強いって攻撃を止めきったんだ!!!


「………てめぇなんかに!!!」


健が拳を振り上げる!!

けれど、健はそれを振り下ろすことはなかった。あるものを見たからだ。


私の周りに小さな球が浮かんでいた。風のような、糸のような、不安定で不定形な概念のような球が。


「お前、上村さんの能力の全貌知らないだろ。」


飯田さんが健に話しかける。


「上村さんのバリアってちょっと特殊で、全壊せずに敵の攻撃を受け止め続けると受けたダメージを蓄積していくんだ。」


そう、私の周りに浮かんでいるこのあるのかないのかよくわからない球は、私がいままで受け止めてきた健の攻撃のダメージの集合体だ。


「こうなるとそうだな………威力はざっと、第二類勇者の本気パンチ3発の合計ぐらいには蓄積していると思うんだよね。」


「…………」


それを聞いた瞬間、怒りに顔を真っ赤にしていた健の顔が、白くなっていった。


「………まぁ、言ったところで具体的にどれくらいかはわかんないよな。………そう思うよな?上村さん。」


「そうですね!!3発分って言われても、はっきりわからないです!!」


だから、私は、健の方を向いた。

………今日は、今日こそは、絶対に…………


「勝つ!!!絶対に!!!」


私はハッキリしないダメージの集積球を握りしめ、健に向かって走り出す!!!

確実に当てるためにギリギリまで近づくためだ!!!絶対に勝たなきゃいけない!!!このチャンスを無駄にしちゃいけない!!!


そして、私は、手が届く距離にまで近づき、腕を振りかぶる!!


「くっっっそぉおおお!!!」


ズボン!!!

健の腕が私のお腹に突き刺さった。

あっ………やばい、近づきすぎた…………

あーー腕が動かない。勢い良くあいつにぶつけられない………でも、勝ちたい。なんとしてでも勝ちたい。絶対にこれを…あて……た…………い………


ポロっ

私は何とか手を広げ、球を健の体に落とす。


「くっっそぉおお!!!俺なら!!!」


健は、私が突き刺さった腕を無理矢理振り回し、体の姿勢を無理矢理変化させ、球をかわす。


「かわせ」


パン!!!

健の顔面を水が叩いた。


「上村さんからの餞別の品だ。くらっといてやんな。」


「ちくし!!!」


パァァアアンンン!!!

大きな破裂音が響いた。

気がつくと健が胴体から血をドバドバ出しながら、壁にめり込んでいた。


「………しょ、勝者!!!」


ぐいっ

飯田さんが私に肩を貸し、そして、左手を持ち上げた。


「チーム問題児ぃぃいいいい!!!!」


………勝てた。

私は、それがわかった瞬間、全てが真っ暗になった。

重要関連作品

カイが死んだあの事件とそれ以降をイリナの視点で追っていた作品。全4話約94000文字→https://ncode.syosetu.com/n6173dd/

カイが死んだあの事件とそれ以降を狩虎視点で追っていった作品。全15話約60000文字→https://ncode.syosetu.com/n1982dm/

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