汚い、さすが勇者汚い
タン!!
上村さんと敵2人が勢い良くスタートを切る!!
カカカカン!!!
うぉぉおおお!!!なんという熱い戦い!!剣と剣がぶつかり合って火花を散らしているぞ!!
敵の1つの剣を剣で弾き、バリアーを展開してもう一方の剣を弾く。こういう動きはそう簡単に出来るものじゃない。この1年間で結構練習したのだろう。
「あっ……すいません飯田さん!そっちに1人行きます!!」
上村さんと戦っていた1人が、隙をついて戦線から離脱し、俺の方へと走ってくる!!
ま、ま、まじかぁあ!!
やめてよ!!俺勝てないよ!?さっきはあんなに息巻いてたけどさ、基本俺は戦闘得意じゃないからね!?傍観者気質だよ!?
だが仕方ない!戦うと決めたのだ!決めたのだったらやるっきゃない!
「お花にお水を与えましょう!!」
シャワーー
手からお水が放射状に拡散する。
うわーー綺麗。周りに虹がかかってるよ。……花が欲しいな。
って違う!そうじゃない!
あわわわ!!!敵が!敵がもうすぐそこまで!!
キャーー!!
キン!
俺は剣を引き抜き、相手の攻撃を防ぐ!!
キンキンキン!
だが相手の連撃が速いこと速いこと………後ろに下がりながら防ぐので精一杯だ。
「さすがは竜崎選手だ!聖騎士長随一と呼ばれるその剣さばき!!見ていてしびれるなぁ!!」
そして歌恋さんの解説!!
あはーー対峙している人マジで強そうだな!!
「ストップ!ストップ!俺ってさ、騎士なのよ!そんな相手にこの速さはおかしいと思わない!?思わないかな!?」
あーー腕しびれてきたー!!やだ!もうやだよ本当!!
「うるせ!!こっちは勝利がかかってるんだ!!潔く負けな!!」
ドシッ!!
敵の前蹴りが見事俺のお腹にクリーンヒット!!俺はそのまま後ろに吹き飛んだ。
「ゴホッ……いってー!腸が傷ついた!!明日便秘になったらお前のせいだからな!!」
「勝手にほざいてろ!!」
倒れ、愚痴っている俺に、敵は容赦なく追い討ちをかける!!
「あ、あ、あー!!ちょっと待った!!ちょっと待ってくれ!!」
「………なんだよ、どうした。」
敵が俺の必死さに何か感じ取ってくれたのか立ち止まる。
「命乞いなら聞かないぞ。」
「………命乞いじゃない。取引だ。」
「………はぁ?何言ってんだよ。まさか俺に負けろとでも言うのか?」
「お、よく分かってんじゃん。話が早くて助かる。そうだよ、俺のために負けてくれ。」
「おおっとぉお!?飯田選手どうしたぁ!?試合中にここまで堂々と取引を持ち込むとは!!騎士道精神はないのか!?」
いや、あっても勝てないからね、今はそんなもの捨てました。
「……聞くわけないだろ。それじゃあな。」
竜崎さんは俺に剣を振り下ろす。
………まったく、話は最後まで聞こうぜ。
「これを見てもまだその威勢が持つかな?」
ピラ
俺は懐からある一枚の紙を取り出した。
金で塗り固められた高級感漂う紙。その中央には………
ピタッ
竜崎さんの剣が止まる
「い、イリナさんの顔が描かれた黄金の紙!?ま、ま、まさか!!!」
そして、ワナワナと震えだす。
幽霊を見たような、そんな、あり得ないものを見つめる目でこの用紙を見ている。
「ああ、そのまさかだ。……こいつはイリナ握手券だ。」
「な、なんだってぇぇええ!?!?イリナ握手券だってぇええ!?!?」
実況の歌恋さんが大きな声で叫ぶ!!!
「ちょっと待って!?何それ!?私知らないんですけど!?」
そしてイリナも大きな声で叫ぶ!!
「1週間前、突如として出てきた[この世にはイリナと握手ができるという幻の3つのイリナ握手券が存在する。]という噂!!まさか……まさか本当だったなんて!!!」
ザワザワザワ………
観客がざわめきたつ。そりゃそうだ。これは7大聖剣なんかよりもよっぽど価値のある紙切れなのだから。
まぁ、もちろん俺が作って情報を広めておいたんだけどな。イリナハグ券の反省を踏まえ、サービスを加減した、自他共にウハウハな最高の代物!!今朝、[もしイリナ握手券が存在したら。]というテレパシーコミュニティに潜入したおかげで相場はざっと120万円だと分かっている。
くっくっくっ………足元を見てやるぜ。
「この世に3つしか存在しないイリナ握手券。その3つ全てをこの俺が持っている。………もう一度言うぜ。この俺が持っているんだ。」
そうつまり、この幻の紙を流通させるか否かはこの俺の裁量で決まる。そう、全ては俺の気分次第だ。
「あーー竜崎さん。あなたがイリナのファンかどうかは知らないけれど、もしね、負けてくれると言うのであれば、この紙を交換材料に使ってあげてもいいですよ。」
ピラピラと、紙を振る。
「………し、しかし…………戦いが……………これに勝たないと………」
相手のチームを見る限り、このチームの勝利は俺達に勝つことが前提だ。そうして染島さんと黒垓君との戦いにかけるという感じ。そう、彼らからすれば俺達に負けるなんてことはあってはならないことなのだ。
そんな状況で、自分個人を優先して負けを認めたら、チームの友情問題だ。そんなこと普通はできない。普通だったら俺のたわごとを無視して俺を倒すだろう。
………だが、このチケットは普通じゃない。幻。プレミアム。この世全ての希少価値を内包した夢のようなチケットなのだ。
「………こんなチャンス、もう二度と訪れないだろうなぁ。あーあー可哀想になー。[あの時取引しておけば……]そんな後悔を50代半ばに、よく分からないアイドルのpv見ながら呟くんだろうなぁ。あーあーあーー。」
俺は懐に紙をしまおうとする。
「………わ、わかった!!取引しよう!!」
「竜崎選手取引に応じてしまったぁあ!!!やはりイリナの魅力には敵わないのかぁあ!?!?」
うわーー相手チームからの視線が痛い。
「ま、待てよみんな!取引だ!ただの取引だって!本当に俺が負けを認めるわけがないだろ!?………は、早く条件を言えよ!!どうせ飲まないけどな!!」
「オッケオッケー。わかった。それじゃあ条件の提示だ。まず1つ目、この試合で負けを認める。2つ目、俺に恨みを抱かない。この2つだけだ。」
「………そ、それを満たせばチケットをくれるのか?」
「いんや、チケット購入料として20万。」
「ここで金額を要求!?!?クズだ!!!こいつマジでクズだ!!!足元見てやがるよ!!!」
実況はヒートアップ!!歌恋さんの熱意がドバドバ感じるな!!
「負けてたった20万を出すだけで、俺ウハウハのあなたもウハウハ。なにより、この機会を逃せばイリナと触れあう機会なんてないと思うけどなぁ。敵になって体に穴を開けられる時ぐらいじゃない?」
「…………くっ、」
竜崎さんは苦悶し、嫌いな食べ物を食べてる時みたいな苦い顔をして、顔を歪ませる。
良心と欲求の葛藤。それが表情によく表れている。
………だが、結局はこのチケットを貰うことになるのさ。こんな素晴らしい機会は一生に一度訪れたら良いぐらいのものなのだから。
「…………いや、お断りだ。」
しかし、竜崎さんは俺との取引を反故にした。
剣を握っていた手に力が込められる。
「俺は仲間達と優勝することを約束したんだ。俺だけのためにあいつらの期待を裏切るなんてできない!!」
「え、えぇ………せっかくの機会なのに?」
「ああ!俺を惑わせたことを後悔すんだな!!」
竜崎さんが全くの無防備な俺に振り抜く!!
ガギン!!!
上村さんが、竜崎さんの背後から、剣の柄で殴り倒す!
上村さんが戦っていた相手は地面に倒れていた。
いやーー良い時間稼ぎになったな。そもそも俺があんなものを売るわけがないじゃないか。時間稼げればよかったんだよ。これは集団戦だ。個人戦みたく自分1人の欲求で勝手な行動はできない。当たり前なことさ。
「………さ、」
実況が喉を詰まらせたような声を上げた。
「………さ、」
イリナが喉を詰まらせたような声をあげた。
「「「最低だぁぁあああ!!!!」」」
会場全員が叫んだ。
「最低だ!!!うわ、なにこれ!!!本当にあいつ勇者なの!?!?うわうわうわ………うわーーー!!!やっぱりこいつがチーム問題児のリーダーだ!!!問題児の中でもさらなる問題児!!!こいつはクズだ!!!!」
会場から響く盛大なブーイング。
………ふっ、全く、何を言っている。
「勝てばよかろうなのだあーーー!!!」
ふっはっはっはっはっ!!!
俺は、それはもうしたり顔でステージを降りた。
「おい。」「そういう意味じゃないわよ。」
降りた先にはイリナとスカラさんがそれはもう怖い顔で立っていた。
重要関連作品
カイが死んだあの事件とそれ以降をイリナの視点で追っていた作品。全4話約94000文字→https://ncode.syosetu.com/n6173dd/
カイが死んだあの事件とそれ以降を狩虎視点で追っていった作品。全15話約60000文字→https://ncode.syosetu.com/n1982dm/
小さな村で起こる不思議な事件。それを機にグレンと亜花が出会い、そこから始まった彼らのゆったりとした物語を書きました→https://ncode.syosetu.com/n4920ek/




