2日目、熱くなるのか!?
「やっぱり頭使った後に甘いものを食べると頭に染み渡る感じがするわ。」
俺と黒垓君が買ってきたチョコレートとポテトチップスをヒョイヒョイ口に入れながらスカラさんが喋る。
只今1時43分。亜花君はダウン。上村さんもダウン。イリナはウトウトし始めてきていた。
「徹夜明けのコーヒー牛乳とか最高ですよ。目がチカチカするほど美味しいです。」
しかし、夜遅くまで作業をすることが多い俺やスカラさん、慶次さん、意外なことに染島さんや黒垓君はお目目パッチリでハキハキと会話している。
「コーヒー牛乳ですか………私的にはコーヒー単品が良いですね。甘いの苦手なんですよ。」
「甘いのが苦手ですって?……それじゃあ一体何で糖分とってるのよ。」
「お米と肉とお味噌汁ですよ。当たり前じゃないですか。むしろそれ以外に何が?」
「………染島ちゃん。どう思う?こういうシャレっ気のない堅物真面目エリートって。」
「頼れそうですけど一緒にご飯とか食べたくないですね。延々と[この食べ物の栄養素は何々でね。]とか語って、私の感情を煽りそうです。」
うわーー毒舌。久しぶりの毒舌染島さんだ。染島さんはそういうタイプの人間に何か恨みでもあるのだろうか。
「そうっすね。そういうやつ嫌いっす。メガネかけてて低身長で知識が唯一の利点であるようなタイプだったら尚更嫌いっす。[真面目すぎー!!]って叫んでオラならビンタしてそうっすよ。」
黒垓君………君も恐ろしいほど執念持ってるな。なんだよ、そんなに真面目な人間嫌いかよ。………まぁ、俺達とは真逆のタイプの人間だよな。嫌うのは仕方ないのかもしれん。俺は憧れるけれど。
「そうねーー真面目すぎるのよね。慶次ちゃん。ゴーヤチャンプルから旨味を取り去ったようなとっつきにくさなのよねー。友達いないでしょあなた。」
「何をバカなことを………私にだって1人や2人ぐらい友達がいますよ。」
「嘘は良くないですよ。」「嘘つくな。」「見栄は情けないわよ。」
3人からの怒涛の罵倒。
えー………慶次さんっていじられるタイプなの?なんかイメージと違うなぁ。
「そうそう、真面目と言えば狩虎ちゃん。」
スカラさんが俺の方を向き、指でクルッと円を描いた。
ボン!!
すると空中で火炎が突如出現し、俺を思いっきり吹き飛ばす!!
「今日の戦いふざけすぎよ。あれじゃ意味がないわ。」
火の魔法!しかも中規模の!俺は火に耐性があるから死ぬことはないけれど、騎士クラスの人間にぶっ放すようなレベルのものじゃないぞ!
「私が狩虎ちゃんに魔法を教えるようなったのは、この世界をぶち壊すて作り直すためよ。その為にはこの大会でアピールしなきゃならないの、わかるでしょ?」
「わかりますけど………」
俺は鎧の埃を払いながら立ち上がった。
「アピール。何よりも大切なことね。どんなに素晴らしい才能だろうとなんだろうと、自分から売込まなければそれは存在しないのとなんら変わりはない。さらに狩虎ちゃんの存在感は絶対か絶無、その両極端なのよ。」
両極端………そんなバカな。中庸を目指すこの俺が極端だって?ありえないな。
「狩虎ちゃんという大きな輝きをこの大会で見せつける。そして認めさせる。そうすることでこの世界が生まれ変わる礎、足掛かりができるの。非常に大切なことよ。」
隣に慶次さんがいるのにこんなことを言ってしまっていいのだろうか。結構心配だったりする。
「ああ、飯田さん。安心してください。私もスカラさんの意見には賛成しているんですよ。」
慶次さんは俺の心を読んで、それに返答してくる。全くデタラメな能力だよな。
「この世界は力が全て。戦争中ですからね。でも私はそれが気に入らないんです。戦うことしかできない人間が、人に偉そうに文句垂れたり説教するんですよ。心が成熟してないのに人の上に簡単に立つことがてきる。そんな体制が腐敗しないわけがない。だから早急に手を打たなきゃいけないんです。」
「ああ、わかりますね。私立の部活が強い学校というのも、その部活の顧問が強い力を持ってますよね。[この部活を育てたのは俺だ。]みたいな顔して………確かにそうですけど、何よりも頑張ったのは生徒なんですよね。テメェがデカイ顔するのは間違いだ。俺はそう声を張り上げたいものです。」
でも全国優勝とかしている部活の顧問はいい人ばかりなんだよなぁ。ちゃんと心が成熟している。色んな価値観に寛容で、色々な努力を認めてくれる。
中途半端に全国にいって常に一回戦落ちとか、駅伝だったら20〜10位の順位しか取れてない部活の顧問にこの傾向が強い。自分の考え以外認めない、自分が全ての自己中ばかり。だから精神未発達で発言稚拙で、人の些細な間違いを許容しないで叱りつける。
………まぁ、これは俺と光輝と花華がこれまで出会ってきた人間達を表面的に分析しただけのもので、なんら正確なものではない。だから信用しないほうがいいよ。
「人の上に立つ資格を持たないバカが簡単に権力を取れるなんておかしな事態よね。だから私はそんな状態を変えたいの。」
………非常に良くわかる。スカラさんが言っていることは俺も同意するような単純な話だ。現代の政治家もこんな感じだしなぁ……知名度さえあればなれるなんてのもバカげてる。
だから若者が政治から離れるんだろ。政治制度を改革するよりもまず、政治家自体を変えるんだな。俺はそう言いたい。
「私は本当にあなたに期待しているわ。この世界を変えてくれると信じているの。………だから明日こそは真面目に、意識してちょうだい。[俺こそが飯田狩虎だ。]そう、大いに主張することを念頭に置いて戦いなさい。」
そういうとスカラさんはヒビ割れた空間へと消えていった。
「………まぁ、私もスカラさんと同じです。あなたには期待している。」
カリッ
残された慶次さんは粒状のチョコレートをひとかじりし、口を開いた。
「今日の朝に[あなたの炎の魔力を使うのは禁止]と言いましたが………もしどうしようもない時は一回だけなら使っていいですよ。今ここで私が認めましょう。」
「………どういうことです?」
「絶対に勝って欲しいんです。どんな手を使ってでも、勝って欲しい。これはチャンスなんです。誰よりも名声と力を持ったイリナさん。それのパートナーとして現れた期待の新人。騎士という称号で、それでも自分以上の実力を持った勇者達を倒せば庶民の星になる。下位の勇者の星にもなる。……イリナさんが手に入ることができなかった[強者への僻み]を持つ層を取り込むことができるんです。」
「………なるほど、それは確かにそうですね。」
イリナは上位勇者と助けられた村人からは絶大な指示を抱いているけれど、中途半端に力を持った奴らからはよく思われていない。それはまぁ、イリナが今までそういうやつらを叩き潰したからなんだけれども…………だが、俺が頑張ればその層もなんとか取り込めるかもしれないというのは凄いことだな。強くもないこの俺が、そんな大それた仕事をたくされるなんて…………
「でもま、能力の解放はしませんよ。それじゃ意味がない。要はズルしているだけですから。みんなに認めてもらいたいなら、俺自身の勇者の力、それで戦うしかない。骨折られようが、血反吐はこうが、それはかわりません。」
「………分かりました。それじゃあ明日、良い成績を獲得できることを祈っておいてあげましょう。……黒垓さん、ワープゲート出してください。」
慶次さんは立ち上がり、染島さんと会話している黒垓君に声をかける。
「えーー走って帰れば良いじゃないっすか。」
「上司命令です。減給もしくは秘密をバラしますよ。」
「…………仕方ないっすねー。作ってやりますよ。」
黒垓君はワープゲートを作り出した。
「それじゃあまた後で。」
そう言い、慶次さんは消えていった。
「………お城に繋げろとはいってなかったから、火山地帯に飛ばしてやったっす。」
したり顔の黒垓君。
…………お前、それはやりすぎ。
「いっっっえーーーいい!!!2日目ダァ!!!」
昼となり、決定戦が始まった。初日と同じようにステージ上に立って、観客達の好奇の視線をまんま受け止めている。
「今日こそはマジで活躍してくれ!!見所を作ってくれ!!お願い!!頼むから!!」
だからぁ………そんなこと言っちゃったら冷めちゃうって。
「さて、早速試合の方に移りたいんだが、かったる………嬉しいことに王様からのお言葉だ!!耳かっぽじってよーく聞けよ!!」
王様が俺達の正面にある高い観覧席から姿を現わす。防弾ガラス……いや、もっと硬いか。この世界のガラスなのだから……に守られた部屋には王様の他にスカラさんとグレン、慶次さんもいた。みんなこっちを見ていた。
「えーーーそうだね、あれだ。今から儂がみんなに深い言葉をあげるわけなんだけど………」
うわーお、なんてグダグダなきりだし方。俺クラスだぞあのグダリ方は。観客こらブーイングが飛んでこないのが不思議なぐらいだ。
「ぶっちゃけいらんだろ。しいて言うとしたら[楽しめ、今が人類最後の瞬間だと思いながら楽しめ。]だ。本当、人生楽しまないと損だぞ。」
そう言うと王様は奥へと消えていった。
………王様がそんなこと言っちまって良いのか。人類が滅びるみたいなこと言っちゃって良いのか。
「さぁ、王様からクソも役立たない言葉を頂いたから、さっさと試合に移行だ!!!準決勝!!始めるよ!!!」
こうして準決勝が始まった。例のごとく俺たちは最後だから待ち時間があった。まぁ1試合しかないからそこまでの時間ではないのだけれどね。
「見てくださいよ飯田さん、今日のモグモグ新聞です。」
熱方程式を考えていると、土崎さんが新聞を持ってきた。俺はそれを頂き、表紙を見てみた。
<チーム問題児のリーダー大したことない?>
そんなことがデカデカと書かれていた。
<第二類勇者イリナを筆頭とする実力集団に異質にも紛れた騎士、飯田狩虎。このチームのリーダーでもあることから、周りのものからは多大な期待を寄せられていたが、試合が終わった後に全員が感じたことは[ただの数合わせ]その一言に尽きるだろう。数年前から栄華を極めた勇者イリナではあるが、今では人を集めることも困難なほどに廃れてしまったのか………>
…………はぁ?
俺はそれを綺麗に折り畳み、土崎さんに返した。そして、そのまま魔法の反復と確認、作戦の練り直しをした。
別に俺が貶されるのは構わない。幾らでもすれば良い。だってそれは正しいことなのだから。
………ただ、批判の的をイリナに変えるのは認められない。それだけは絶対に…………
「うーーん!!!問題児ども!!!来やがったなとうとう!!待ってたんだよ私は!!!」
ワアアアアア!!!!!
観客どもは性懲りも無く昨日と変わることなく大きな歓声を上げる。
「熱い戦いを期待しているぜ!!!それじゃあ早速先鋒戦始めようか!!!」
俺と上村さんはステージ上に登った。
相手は男2人が登って来た。階級は分からないが上位聖騎士、聖騎士長ぐらいだと睨んでおいた方がいいだろう。ここまで勝ち上がって来たのだから。
「それじゃあ………始め!!!」
初日と違い、俺はみなぎった闘志で、戦いに臨んだ。
重要関連作品
カイが死んだあの事件とそれ以降をイリナの視点で追っていた作品。全4話約94000文字→https://ncode.syosetu.com/n6173dd/
カイが死んだあの事件とそれ以降を狩虎視点で追っていった作品。全15話約60000文字→https://ncode.syosetu.com/n1982dm/
小さな村で起こる不思議な事件。それを機にグレンと亜花が出会い、そこから始まった彼らのゆったりとした物語を書きました→https://ncode.syosetu.com/n4920ek/




