真っ赤なーちしーきーー!!
「はぁ………背骨が折れそうになった。イリナ、簡単に怒る癖直したら?そのおかげで俺の身体保ちそうにないんだけど。」
「欠点があって悩んでる人に、その欠点を真正面から叩きつける人は怒られて当然でしょ。むしろ背骨を折られていないことに感謝をして欲しいぐらいだよ。」
俺とイリナは会話をしながら、黒垓君が作り出した扉をくぐった。
「欠点ってお前………俺から言わせればアドバンテージ………ん?」
慶次さんがいる部屋に見慣れた人影が……
「グレンさんにスカラさんじゃないですか!!」
俺は、染島さんと亜花君に話しかけているグレンとスカラさんに走りよった。
「いやーー会場の設営取り締まりで忙しいって言うからてっきり来ないかと思ってましたよ!そんなにこの俺に会いたかったのか!こんにゃろうめ!」
グレンの右肩をこづく
「そりゃそうよ。調子こいてるお前を一旦締めておいてやろうと思ってな。」
ギギギギ………
コブラクラッチを極められ、身体中の関節が悲鳴をあげる!
「ごめんなさいごめんなさい!本当ごめんなさい!腰がもげそうになってるんでマジで勘弁してください!」
「大丈夫だ。お前はサンドバックだからいくらでも耐えられるだろ。」
「耐えられないですけど!?サンドバックって固いですから!関節技なんてかけられたらへし折られるにきまってんでしょうが!」
「大丈夫だ。スカラの魔法でいくらでもくっつくから。」
ああ、もうやだよその思考!どんなことしても許されるみたいなやつ!現実でのもろさを目の当たりにして欲しいもんだ!
「まぁまぁグレンちゃんその辺にしてあげて。私の苦労を考えて。いちいちベッドクラスの魔法を編むのめんどくさいのよ。」
スカラさんの言葉を聞いて、いやいや俺を解放するグレン。
ああ、流石はスカラさんや……慈愛の塊。ピンクの天使や………ダメだ、エロい。ピンクの天使とかエロすぎだろ。
「せんせー!見て見て!この僕の命中精度!」
ピュン!
亜花君が投げたダーツの矢は、見事に的の真ん中に突き刺さった。
ピュン!ピュン!ピュン!
さらに連続して真ん中に刺さる。
わぁお。もう免許皆伝じゃないか。そろそろ別の遊びを考えておかなきゃいけないな……
「スナイパー井上って言うんだよ!」
「スナイ……あ?………おい狩虎。お前何を教えた。」
ガッシリと頭を掴まれる
「な、何も変なことは教えてないですよ!遊びです遊び!暇つぶしになるじゃないですか!」
「そうじゃねぇ。なんで亜花が力加減を覚えてんだよ。なんか裏技でもしたのか?」
……ああ、そういうことね。
「いや、遊びを教えただけですよ。あとはコツを教えた程度で……それ以外は特に教えてないです。」
スコンスコンスコン。
木製の矢を的めがけて投げ続ける亜花君。常に真ん中に当たっている訳ではないけれど、それでも楽しそうにやっている。
「子供ですからね。遊びから何かを勝手に学ぶんでしょう。俺はそれを手伝っただけ……そもそも彼は学ぶ意欲が強かったですからね。誰かさんに褒められたくて。」
まっ、楽しみたいっていう気持ちの方が何倍も強かったけどな。
「…………」
グレンは目を瞬きしながら、亜花君を眺めていた。
俺はいつの間にか離れていたグレンの手から逃げるように上村さんのところに行った。
「上村さん。あの2人はグレンさんとスカラさんです。グレンさんは鎧を作ってる人で、スカラさんは魔法学校の校長です。2人とも今回の決定戦の運営委員会の委員なんですよ。」
上村さんが話についていけてなさそうだったから、一応2人の説明をしておく。
「ひゃーー鎧の人と校長さんですかーー。若いのにこんなビッグイベントを取り仕切ってるとは……大したもんですなぁ!」
うんうんと頷く上村さん。
「あら、知らない人ね……この子達と一緒に決定戦に出るのかしら?」
「はいそうです!私の名前は上村春香!バスケで鍛えたふくらはぎと腹筋がチャームポイントの聖騎士長です!」
……確かに言われてみればふくらはぎの締まりが良いな……なんという筋肉美。
「元気ねぇ。今回の決定戦、この変人達に蹴落とされないように頑張ってもらいたいものだわ。」
「はい!むしろ蹴飛ばしてやりますよ!」
誰が変人だ。俺を抜くのを忘れていますよ。
「しっかしお前、イリナとまだ関係が進んでねぇのかよ。早く付き合えよ。そして俺にネタを供給しろ。」
上村さんの見事な蹴りを見ていると、グレンが俺の背後から聞いてくる。
「なーにをいってるんですかねぇ。俺がイリナと付き合う?ないない。ないですよ。世界の因果律全てが反転するぐらいありえないですよ。例えるなら俺の好物が椎茸になるぐらいありえない。」
「あ?何言ってんだよ。お前と会話できずに部屋の端っこで不貞腐れてる可哀想なイリナちゃんのことが見えないのか?可哀想だなーイリナちゃん。愛しの相手に見向きもされないで……」
ガン!!!
グレンに振り下ろされたイリナの拳はかわされてしまい、当たった地面が吹き飛ぶ。
「愛しくないから。むしろ恨みの塊だから。」
イリナの無表情な目線が痛い。
「とか言ってんだけどどう思います?スカラさん。」
「そうねぇ。まぁ、この、天才なわたくしの考察からして、下手なツンと言ったところかでございましょうかねぇ、ええ。もうそろそろデレても良いのよ?」
いつの間にか出現していたメガネをカチリと中指で持ち上げ、ニヤニヤと笑うスカラさん。
「やはりツンデレ予備軍だったか……通りでミフィーくぅん!を見つめているときに熱いものを感じるわけだ。」
そして、クネクネと、イリナの真似だろうか?体を気持ち悪くくねらせてニヤニヤするグレン。
「あんたらぁぁああああ!!!」
イリナがいままで見せたこともないようなスタートダッシュを見せ、グレン達に高速で突っ込む!
ボゴォオオン!!!
その時に踏み込まれた足場が吹き飛ぶ!!!
うわぁ、お城が大惨事だよ。
「あれ怒った?怒っちゃった?図星だったのかよプスーッ!」
ガンガンガン!!!ガシャーン!!!ボゴォン!!!メシャアア!!!
イリナとグレンが全力の殴り合いを開始した。多分決定戦の決勝ですら見れないであろうレベルの戦いが繰り広げられていた。
お城が2人の戦いのせいで揺れて、崩壊を加速させる。てかもう、この階のほとんどの壁が穴だらけだし。
………あれだな、グレンもスカラさんも、普段は接しにくいけれど、楽しい人達なんだな。ノリがあってね………うん、この光景は見ないでおこう。
俺は2人の戦いから視線を逸らした。
「そうそう、狩虎ちゃん。私は楽しくおふざけをするためにここに来たわけじゃないのよ。」
ぼーっと亜花君のダーツの練習を眺めていると、スカラさんが話しかけて来た。
「え?そうなんですか?てっきり時間が余ったからイリナにちょっかいをかけに来たのかと思ってましたよ。」
「まぁ、それもあったけれどもっと大切な用事があるのよ。……魔法の最終確認をするわ。」
………ああ、なるほどね。
「わかりました。それじゃあ覚えたのを俺が使用すれば良いんですね?」
「そういうこと。実践を考えて1つの魔法の詠唱、魔法陣の作成、記述は2秒以内に済ませること。良いわね。」
ここ3日間の練習の成果発揮って奴だな………クックックッ。10個も覚えちゃったからな?俺の魔法を見てあっと驚くなよ。
俺は2人の戦いの傍、魔法を出すために意識を研ぎ澄ませる。
ピュッと空中に指で円を描いた。
手から小さな炎が出来た。
「まず初級の炎の魔法です。」
次に三角形を空中に描いた。
じょばーっと手から水が出た。
「次に初級の水の魔法。」
我両者の調停者とならん。と、滑舌の限りの速さで呟き、両手にある水と炎を合わせる。
ボッと軽い音を立てて両者は消えた。
「非なるものをくっつける混合魔法の初級。」
「「しょうもないのしか覚えてないなおい!!」」
戦闘中のグレンとイリナから同時に蹴飛ばされる!
おっゔ………お腹が、痙攣してやがる。吐きそう………
「炎と水に関しては元々出来るじゃん!しかも魔法なんかよりも断然強いのが!」
「つか3つ目のやついらないだろ!!そんなのいつ使うんだよ!!」
「ばっ、何を言ってんだ!必要だろうが!」
俺はポケットから容器に入れた油を取り出し、魔力で出した水と合わせる。
「我両者の調停者とならん。」
水なのか油なのか、そもそも消火に役立つのか、油の役目を果たすのかわからないものが出来た。多分汚れとして付着したら落としづらいんだろうなぁって思っちゃうほどの害悪な物質だ。
「………これ、なんか意味あんのか?」
「ロマンがある!!」
バシン!
思いっきりイリナに叩かれた。
「ミフィー君まさか、他の魔法もこれぐらいしょうもないって事はないわよね?」
「ああもちろんだ!他には水にとろろ並みの粘度を持たせるやつとか、指から絵の具を出すものとか………」
「………本当に使えないわね。」
「使えないとはなんだ!水の噴出口を絞って敵に高威力の水攻撃ができるようになったんだぞ!!」
「………その詠唱の文句は?」
「お花にお水を与えましょ。」
「家庭菜園!」
パシーン!!
またイリナに叩かれる。
「はぁ………危険を冒してまで手に入れる力じゃなかった………」
「まぁまぁイリナちゃん。魔法なんてそもそも戦闘に向いてないのよ。魔力の超劣化版だし。」
「……でもスカラさんは結構な威力で放ってなかった?聖騎士長クラスまで出てたと思うんだけど。」
「それはまぁ、私の魔力のおかげね。魔力がなかったら私の魔法も狩虎ちゃんと同じぐらいの規模になるわ。」
イリナとスカラさんのほんわかした問答……ではないな。イリナがちょっとイラついてる。
仕方ないよな。結構な危険を冒してスカラさんに魔法を教えてもらったのに、結局これだけの力しか手に入らなかったんだから。
「そう焦ることはないわ。ここ数日で私は彼に超必殺技を伝授したからね。貴方達の足を引っ張らないぐらいの強化はしておいたの。……ね?狩虎ちゃん。」
「ええ、そうですね。これさえあれば敵なんて屁でもないですよ。」
スカラさんに笑いかけられたので、俺はクックックッとニヤケながら応える。
「でも多用は禁物よ。あの技は言ってしまえば諸刃の剣。効果は絶大だけれどその後自分を追い詰めるわ。」
そう……あの技は危険だ。強力であるがゆえにバウンスが半端じゃない。
決定戦開始の10分前でーす。選手はステージに来てくださーい。
スピーカーのような物から女の人の声が聞こえて来た。
もう20分も経ってたのか……
「あら、もう時間ね。最後まで確認できなかったけど……まっ、なんとかなるでしょ。頑張ってね、期待してるわ。」
そういうとスカラさんは空間を捻じ曲げて別の空間の入り口を作る。
「そうだな、期待してっから頑張ってこいや。……勝つだけじゃなく俺達観客を楽しませてくれよ?」
そして、黒垓君と染島さんと会話していたグレンも、スカラさんのところへ歩いていく。
「「それじゃあ………ミフィーくぅん!頑張ってねぇ!!」」
2人はイリナのマネ?をした後、バカ笑いをしながら別の空間に消えていった。
あの2人、この空間をかき乱せるだけかき乱して消えやがった………なんてお邪魔虫だ。人類史上類を見ないぞこんなの。
「………さて、イリナさん。今の意気込みをどうぞ。」
俺は油を入れていた容器をマイクがわりにしてイリナに向ける。
「………敵対する奴ら皆殺し決定だね!」
うん、可愛い笑顔!さっさと会場に行こう!俺に怒りの矛先が向かう前に!
俺達は(イリナ以外の全員)は全速力で走って会場に向かった。
重要関連作品
カイが死んだあの事件とそれ以降をイリナの視点で追っていた作品。全4話約94000文字→https://ncode.syosetu.com/n6173dd/
カイが死んだあの事件とそれ以降を狩虎視点で追っていった作品。全15話約60000文字→https://ncode.syosetu.com/n1982dm/
小さな村で起こる不思議な事件。それを機にグレンと亜花が出会い、そこから始まった彼らのゆったりとした物語を書きました→https://ncode.syosetu.com/n4920ek/




