吹っ切れた
「いやーー本当探したんですよ!!あちこち飛び回って!!西へ東へ!北へ南へ!縦横無尽の東奔西走、欣喜雀躍の南船北馬!!ワンダイレクションならぬオールダイレクションつってね!!」
ブンブン!!と、本当に、肩が外れそうな勢いで振り回される!!
てか1つ確実に変なの含まれてるな!それは省いたほうがいいんじゃないのか!?
「待て待て待て上村さん!!あなたはどうやら勘違いをしているようだ!!俺はカイじゃないですよ!!」
「………何をおっしゃる。どこからどう見てもカイさんじゃないですか。」
上村さんの動きが止まる。
「………どこからどう見ても別人ですよ。」
「どこからどう見ても同じでしょうが。」「同じっすよねー」「瓜二つならぬ筋細胞二つといったところでしょうか。」
そうでしたね。顔がおんなじでしたね。
「………顔は確かに同じかもしれないですけど、俺は別人ですよ。カイじゃないですよ。飯田狩虎というものです。」
「飯田狩虎………いいだかこ…………いいだの[い]と、かこの[か]を逆にしたらカイになりますね………やはり貴方はカイさんなのだ!!いやーー会えてよかったですよカイさん!!」
ブンブンブン!!
サイド俺の腕を振って喜びを表現する!!
うぉぉおおお!!ちげぇぇええ!違うんだよぉおお!!
「そ、そ、そ、そ、そっっ、」
そんなの偶然ですよ!!と言いたいのだが、振る力が強すぎて上手く発音できない!!
喜びの表現の仕方が乱暴だ!!……そっかぁ!!俺のことをカイと勘違いしているからこんなに全力で振っているのか!!
「………あーー上村ちゃん。本当に彼はカイじゃないよ。全くの別人だよ。」
俺と上村さんのやりとりを見かねてか、ようやくイリナが話に割って入って来てくれる。
「見たらわかると思うんだけどさ、ミフィー君……この情けない男ね、君の歓喜の舞で死にかけてるんだよ。カイはそんなに弱くなかったでしょ?」
上村さんの動きが止まり、俺の顔を覗き込んでくる。
「………確かに、こんな表情、してませんでしたよね。」
そして、数秒ほど固まった後、何かを悟ったのか俺がカイじゃないことを少しだけ信じてくれたようだ。
「顔がまんま同じだけど、全然別人。変人の類だよ。」
「変人は余計だ。せめて常人と言え。」
「た、確かに口調も違うし………」
上村さんは俺がカイじゃないということを徐々に理解して来て、混乱し始める。
「顔が……でも、イリナさんがそう言うんだし………口調も全然………でもアナグラムが……」
そのアナグラムは忘れてくれ。結構ガバガバだからな。こじつけにすぎない。
「………じゃあやっぱりカイさんが死んだって言うのは…………」
「…………本当ですよ。」
俺は上村さんの目をしっかりと見て答えた。
「カイは死にました。炎帝とかいうクソ野郎の手で。」
俺は上村さんの手を離して、一歩退いた。
「………記憶がなくなってるとかそう言うのじゃなくて?」
「バリバリあります。なんならここ数年の出来事を事細かに説明しましょうか?」
「…………いや、いいです。」
上村さんはその場に力なく崩れた。
………ちょっと強く言いすぎたかな。でも、俺とカイを混同されるのは困る。俺はカイじゃない。カイになってはいけない。俺は飯田狩虎であり、カイを殺した張本人だ。それなのに、カイとみなされるのは……カイに悪い。
「………本当に、死んでしまったんですね。」
出会った直後はありえないほど元気だったのに、今では見る影もなく落ち込んでいる。
くそっ……やっぱり最低だ………
「それじゃあ仕方ないですね。切り替えるしかないでしょう。」
と思いきや上村さんは勢いよく立ち上がった。
「………いやにスッキリしているんですね。」
「悲報を聞いた時から死は受け入れていました。ただ、目撃情報があったから、ほんの少しの好奇心で接触を試みただけです。」
上村さんはにっこりと笑って背伸びをした。
「カイさんが死んでしまったとハッキリしてしまったのは残念です。でも、こうしてまたイリナさんに会うことができたのですから不幸中の幸いというやつですよ。」
………逞しすぎる。
彼女の一連の言動を見聞きして、俺はそう思わずにはいられなかった。
俺の夢の記憶では、彼女は初々しくてどちらかというと弱々しいイメージで映っていた。
けれど、今のは、なんというのか、歴戦の戦士みたいに死を簡単に受け入れてしまっている。
「改めてみなさん!初めまして!中学2年生、バスケ部所属の上村春香です!聖騎士長やってます!」
上村さんは思いっきり俺達に笑顔を向けた。屈託のない、一切の陰りを見せない明るい笑顔。
でも、だからこそ、俺は妙な違和感を感じずにはいられなかった。
微妙な空気の中俺達は各々自己紹介をして、能力を見せるために黒垓君のワープを利用して草原へと出た。チーム戦だから各人の能力と力を把握しなくちゃならないのだ。
「私の能力はバリアーを張ることです!色んな形になるんですよ!」
上村さんの周りに薄い膜みたいなのが出現した。それはグリャリグリャリと不規則に様々な形へと変形していく。
「自分の周りを球状に覆うこともできます!!………でりゃあああ!!!」
そう言い、元気よく叫ぶと薄い膜は球状になり、上村さんの周りを覆った。
半径8メートルといったところか。結構でかいな。
「………どれだけ硬いか、ちょっと試すね。」
そう言うと、イリナは軽く膜を殴った。
ガン!!
揺れはしたが、バリアーは壊れることはなかった。
「2割までは耐えるか……じゃあ次は4割!」
パリーーン!!
ガラスが割れるような音を響かせながら、バリアーはあっけなく破壊された。
「4、4割で!?」
目を点にしながら驚く上村さん。
……イリナに常識は通用しないからな。こんなんで驚いてたら身がもたないぞ。
「破壊された後再展開までに何秒ほど要するの?」
「………え、えーっと…………3秒ほどです。」
ポワンと上村さんの手のひらにバリアーが出現した
「ふーん………どれだけ大きくできるの?」
「さ、さっきのが限界です………」
上村さんはイリナの尋常じゃない力を見て萎縮してしまっている。さっきまで自分の力に結構自信がありそうだったのに、いまじゃションボリだ。
普通はそうだ。俺達が麻痺してしまっているだけで、これが普通のリアクションなのだ。
「同時に何個まで作れるの?」
「1個が限界です。大きさに関係なく………」
「ふむふむ………なるほどねぇ」
燦々と晴れわたる太陽。真っ白で肉厚な雲が青色の空に漂っていた。空を裂くような音を発しながら秋風は吹く。草原はまるで静かに揺らめく波のようになびき、木がざぁーっと、ざぁーっと、まるで上村さんの心情を表すかのように叫び続ける。
「よしオッケー!あとは君達、上村ちゃんに魔力を見せてね。それまで私寝てるから!」
イリナはスタスタと丘まで歩いて行きゴロリと寝転んだ。
……なんという強者の余裕!!
「………えーっとね、上村さん。俺の魔力は水を操ることと、触れた水を凍らせることなんだ。」
ブシャァァアア!!
俺は適当な方向 (イリナがいる方向)に手を向けて水を勢い良く放出する
「つっめた!!………ミフィー君あんたぁあーー!!!」
イリナは、まるで爆弾みたいな勢いで跳ね上がり、俺に向かって全速力で走ってくる!
だが、俺は慌てずに、俺の足元に溜まっている水を踏みつけ凍らせ、イリナの元へと一本の氷の道を作った。
バリン!!
だが、氷はイリナの重たい一歩によって砕かれてしまう!!
バリンバリンバリン!!!
氷を砕きながら俺の元へと走りより、思いっきりチョップをかましてくる!!
「何してくれてんの!?私の安眠を邪魔して!!」
「うるせぇええ!!お前の行動で上村さん萎縮しちまってるじゃねーか!!もっとフレンドリーに接しやがれ!!」
ギャアギャア!!とイリナと掴み合いの喧嘩になる。
「だいたいお前、現実でも最近暗いんだよ!!なんか悩みでもあんのか!?なんかあるなら言ってみろ!!宏美に伝えておくから!!」
「自分で解決はしないの!?何その無責任な態度!!そんな奴に悩みなんて言うか!!ていうか悩みなんてないし!?私、悩みなんてないストレスレスガールだもん!!」
痛い痛い痛い!!脇腹をつねるな!!地味に痛いんだよそこ!!
「………魔力までおんなじなんですね」
上村さんがポツリと漏らした。
「………偶然ですよ偶然。この世には100種類の魔力の型しかないんですから、被るのはなんもおかしいことではないですよ。」
俺とイリナの名ばかりの取っ組みあいを切り上げて、2人して上村さんの方に向く。
「何度も言いますが、俺はカイじゃない。これは絶対です。俺は絶対にカイじゃない。カイの代替品にもなりえはしない。………なぁ、イリナ、そうだろう?」
「………うん。」
弱々しくイリナが頷く。
……もうちょっと力強く答えて欲しいな。
「さてそれじゃあ黒垓君。次魔力の説明しちゃってね。……イリナ、1人だけ抜け出すのは禁止だぞ。」
黒垓君のワープの説明の原理を説明して、染島さんのテレパシーの説明をして、亜花君の説明を順番にしていった。終わるのにざっと1時間ぐらい要した。黒垓君の魔力の説明と亜花君の魔力の説明に手こずったからだ。だって、黒垓君の能力の、切断に関する線引きと発動条件がめんどくさいし、亜花君に至っては[現象の増長]だ。説明がややこしくなってしまった。
決定戦開始まで残り30分ほど。そろそろ戻らないとな………
「初対面だから各々聞きたいことがたんまりあると思うけど、そろそろお城に戻らないとな。黒垓君、扉作っちゃって」
黒垓君は目の前に真っ白な扉を作り出した。
「上村さん、お先にどうぞ。レディーファーストってやつです。」
「おお、それじゃあ御言葉に甘えて!」
この1時間でこの空気にも馴染めてきたようだ。上村さんは笑いながら会釈をすると、扉に入っていった。……よく考えると、元からこんな感じか。
「……さて、黒垓君、染島さん。どう思います?あの子。」
俺は隣にいる黒垓君と染島さんに話しかける。
「………やばいっすねぇ。」
黒垓君は「うーむ」と唸った。
「隠そうとしていても、私達の前じゃ意味を成しませんね。」
俺と黒垓君と染島さんは互いに見つめ合い、そして、ニヤッと笑った。
「「「………めっちゃくちゃ可愛い!」」」
3人の声がハモった。
「あーーやばいな。運動が出来るショートカットの女の子ってなぜああも可愛いんだろうか。」
胸も控えめでね………大切なことなのでもう一度言うぞ。上村さんの胸は控え目Aカップだ。Aカップだ!
「日本人にしか理解できない遥か高みの存在……貧乳。困ったっすねぇ。あれで僕っ子ならなお最高だったんすけど……」
「僕っ子など人工物のようなものです。言わば作られし存在……シリコンを入れた偽乳みたいなものです。私はそのようなものは求めません。認めません。神の与えし芸術品を変えるなど………あってはならないからです。」
「梅雨美………それは認められないっすね。その、まるで天然記念物じゃないと全て認められないと言う、情報を鵜呑みにして知ったかをかますミーハーみたいな発言、気に入らないっす。」
「私をそんなゴミクズと一緒にしないで貰いたいですね。私は全てを、貧乳というカテゴリー全てを極めた上で言っているのです。目が肥えた人にはその良さが分かる、肥えていなければ……分からない。それが天然素材ですよ。」
バチバチ………と2人の間で火花が飛び交う!!(俺が魔法で生み出している)
「はいはい、バカ言ってないでさっさと帰ろう。なんだかんだ言って時間が押してるんだし………」
俺達3人のやりとりを見て、鼻で笑いながらこっちへとイリナは歩いてくる。
「バカだって?バカだと言ったのか?おいおい、この議論は至極大切なことだぜ?……なぁ、分かるだろ?貧乳の部類に属するお前なら」
ブチッッ
イリナの顔付近から何か景気のいい音がした。
………あーーあ、やっちまったぜコンチクショウ。
それから3分間、俺は黒垓君の白色の扉をくぐることはなかった。
重要関連作品
カイが死んだあの事件とそれ以降をイリナの視点で追っていた作品。全4話約94000文字→https://ncode.syosetu.com/n6173dd/
カイが死んだあの事件とそれ以降を狩虎視点で追っていった作品。全15話約60000文字→https://ncode.syosetu.com/n1982dm/
小さな村で起こる不思議な事件。それを機にグレンと亜花が出会い、そこから始まった彼らのゆったりとした物語を書きました→https://ncode.syosetu.com/n4920ek/




