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Face of the Surface  作者: 悟飯 粒
秋と言ったら味覚で章
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82/364

悪口マシンガン

ガラガラ


「こんにちはーー………おや?お客さんですか?」


扉を開けて翔石と私が生徒会室に入ってくる。


「……一応そのつもりだったんですけど…………」


そして、2人を見た後田所は長机の方に視線を向けた。


「そのつもりだった……ですか。そういえば会長も宏美さんもいないですね。……まさかあの2人のお客さんですか?」


「……一応そのつもりだったんですけど…………」


「………一体どういうことですか?ずっと2人が来るのをここで待っていたんですか?」


要件が分からず翔石は頭を悩ます。


「いや、そういうわけじゃないんです。2人とは20分ほど前に喋りましたから。」


「………えーっと、つまり?貴方とあの2人で何かをしてる途中に、あの2人に用事ができて1人取り残されているってことですか?」


「いや、そういうわけでもなく………」


「………要領を得ませんねぇ。それじゃあ生徒会室に来た理由とあの2人とのやり取りを全て話してください。そうじゃないと僕達は何もできない。」


田所は翔石に今までのことを全て話した。

翔石も私もさっきの狩虎と宏美と同じように田所の向かいに座り話を聞いた。


「なるほど……つまり田所さんは[フラれるのが目に見えているから安全策をとって、木原さんとは一生友達でいよう。]って考えているわけなんですね。」


翔石はバッグから水筒を取り出し、コップに液体を注ぐ。

緑色で妙にドロドロとしている。異臭はしないけれど、飲むのを躊躇われるような見た目だ。


「ま、まぁ、そういうことです。」


「そして、その回答に2人は[意見が定まってない]とか[後悔すんぞ馬鹿野郎が]と言って、貴方を置き去りにしてどっかに行っちゃったというわけですね。」


「いや、そこまで過激に言ってはいないですけど、ほとんど合ってます。」


しゅん。と、落ち込む田所。


「そんなに、僕の選択は情けないでしょうか?」


「さぁ?知らないですよそんなこと。」


翔石はそう言った後、コップの緑色の液体を飲み干した。


カツン

コップが机に置かれた時の音が妙に部屋中に響いた。


「僕は別に貴方の選択が悪いとは思ってはいないですよ。だって、世の中、貴方みたいな考え方で溢れてますからね。マジョリティという奴です。それを否定するのは僕にはできない。」


翔石の考え方を聞いて、田所は顔をしかめる。


「………なんか、生徒会長や副生徒会長が言ってたのと同じようなことを言ってますね。」


「……あの人達なら、言ったとしても、[お前のは賢い選択だ]とかそこらへんのお褒めの言葉だと思うんですけどねぇ。」


「……………」


田所はまた、顔をしかめた。


「多分、あの人達は貴方の選択ではなくて、選択の仕方が気に入らなかったんだと思いますよ。」


翔石は立ち上がり、田所の前にあるコップを手に取り、水面台に向かう。


「自分の考え方を殺しすぎですよ。物事を客観的に見て、それっぽい数値をはたき出して、目に見えるものでしか物事を判断していない。」


「殺しすぎって言われても………僕のような立場に立ったら誰でもこの判断をすると思いますよ。可能性が低すぎる。」


翔石の言葉で少しイラついた田所は語調を強めて言った。


「………はぁ、また堂々巡りですか。好きですねぇ本当。こんなに問題点を明示しているのにどうして見ようとしないんですかね。自分で言ってるのになんで気づこうとしないんですかね。」


急須を傾け、コップにお茶を淹れる翔石。


「………田所、気持ち悪いからそれ以上喋るのをやめてくれない?」


「…………え?」


翔石と田所が会話をしていると、いままで黙っていた私が声を出した。

そして、その言葉が予想外すぎて、田所は少し固まった。それもそのはず。私みたいな無口な人間が、いきなり辛辣な言葉を叩きつけたら誰だって驚く。きっと彼も驚く。


「頭の良いふりして、可能性なんて幼稚な言葉を使って、せっせと言い訳する人間が私って嫌いなの。吐き気がする。とっとと私の前から去ってくれない?」


「ちょっと雪さん……」


やれやれと言った感じで、翔石は私をなだめようとする。いつものことだから、翔石はこうなることがなんとなくわかっていたのだろう。


「翔石は黙ってて。翔石が擁護するとこいつがつけあがる。」


だけれど、私は翔石の制止を振り払う。


「つけあがるって……僕はそんなこと」


田所は私の目を見てはっきりと言った。少しイラついているんでしょどうせ。


「また自分の傷を舐めるんだ。中途半端に大きいプライドだね。保身に生きて保身の為に身を切る良い例だよ本当。……あ、そうそう。翔石、私の分のお茶も淹れてね。田所と喋っちゃったから口直しをしなきゃ。口の中が不快。」


「な、なんで僕が後輩相手にそこまで言われなきゃいけないんだ!」


バン!!


私の言葉によってとうとう我慢の限界に達したのか、田所は机を叩いて立ち上がった。

目から怒りがはっきりと見れる。……だからなんだという話なのだけれど。


「だって気持ち悪い。明美ちゃんを好きになって、部活に加入して、でも無理だと諦めて、それでも気持ちを抑えられなくて、私達の言葉に反応してまた明美ちゃんに告白しようと思ったのに、また諦めて、現状維持しようとしているんでしょ?なに、大脳皮質が腐って膿んでるの?まともな思考力じゃない。」


私の、無表情で放たれる激しい言葉に田所は身じろぎする。

今はもう怒りよりも焦りの方が強い。


「そもそも自分は傷つきたくないくせに利益を得ようなんていうのがムシのいい話。まるで夢を見始めた小学2年生。独りよがりもいいところ。知性が貧弱すぎ。」


「そ、それは………」


私の言葉に田所はさらに身を縮ませる。

完璧に押し負けている。私の言葉でプライドがへし折られたんでしょ。


「そして傷つけられたら怒り出すところなんてバカ丸出し。しかもその時に年齢を使うなんてアホ丸出し。年齢以外に誇れるところがないと自分で告白しているのとなんら変わりがない。」


さらに縮こまる田所。

もはや縮こまりすぎて両肩がくっつきそう。


「まぁまぁ、雪さん。もういいでしょう。田所さんも色々と自分の問題点に気づけたでしょうから。………さ、お茶です。」


「………ん、ありがとう。」


翔石が田所と私の前にお茶を置き、再度私の隣に座った。


「………田所さん。雪さんは口が悪いですけど、貴方の問題点を赤裸々に吐き捨ててくれました。さすがにもう自分のどこら辺がダメだったかはわかっていますよね?」


田所はじーーっとお茶を見続けていた。


「………保身に走りすぎたこと。それのせいで何もかもダメにしていたこと。」


「保身がダメってわけじゃない。本心を保身の為に隠すのがダメだといってるの。田所は本当に私達の言葉を聞いてたの?耳と脳が神経系で繋がってないんじゃないの?」


「ちょっと雪さん!さすがにそれ以上は言い過ぎですよ!」


さすがに翔石に怒られた。仕方ない、黙ってよ。


「……自分の気持ちを蔑ろにして決断をすると、長期的に見ると後悔します。会長はここ最近それを嫌という程体験しましたからね。貴方に同じような思いをしてほしくないんでしょう。」


田所はずーっとお茶を見続けている。


「………な」「雪さん。ダメですよ。」


私が喋ろうとすると、翔石が釘をさす。

……そうなるよね、もう喋らない。


「………分かりました。確かに、僕は自分の気持ちを押し殺してこの選択をしました。というか今までずっとそうやって生きてきました。自分が可愛かったからでしょう。」


でしょうじゃなくてそう。

私は心の中で相槌を打つ。


「……もしかしたら、木原さん以上に自分が好きなのかもしれません。」


しれませんじゃなくてそう。

人間誰だってそうだ。自分が1番大切なのは普通のこと。


「でも自分を見つめ直して、これで少しはマシな判断ができそうです。ありがとうございます。」


田所は私達に頭を下げる。

顔は……未だ晴れていない。それはそうだ、そもそもこれは考える方法を教えただけ。答えは教えていないのだから。


「………僕達に頭を下げるのは間違いですよ。僕達は貴方の成長の機会を奪った。他人から知識を貰うだけじゃ人は成長しないんですよ。………会長達は、貴方自身でこの事に気付いて欲しかったんでしょうね。成長してほしくて。」


翔石はウンウンと頷きながら話をする。


「うんと悩んでから決めてください。一生友達でも良しですし、一か八か告白するのも良し。要はそこに貴方の意思が介在しているか、貴方自身に後悔はないか、自分の選択に胸を張れるか、それが大切なんですから。」


「………分かりました。適切なアドバイス、ありがとうございます。」


また頭を下げる田所。

そして、立ち上がりドアへと歩いていく。外に出るのだろう。


「あ、そうそう。会長達ならきっと屋上にいますよ。あの人達あそこが大好きですから。」


空が好きらしい。でも宇宙は嫌いだと言ってたな………私が言える事じゃないけれど、変人だ。


「分かりました、ありがとうございます。」


そう言うと田所は生徒会室を後にした。


「………雪さん、そろそろ言葉遣いを矯正しません?色んなところで損していると思うんですよ。」


翔石は自分のコップと田所のコップを片付けながら私に話しかける。


「嫌いな人に対して辛く言った所で私は損してない。私から離れてくれるからどちらかと言うと利益しかない。だから直す気はない。」


ズズッとお茶に口をつける。


「そう言うのは回り回って自分に………まぁいいや。いずれ自分の身をもって気づくでしょうから僕が口出す必要はないでしょう。」


ガラガラガラ


翔石が言い終わると、扉が開かれた。


「ごめんなさい………人に囲まれてしまって、抜け出すのに時間がかかりました。本当に申し訳ありません!」


息を切らせながらイリナちゃんが部屋に入ってきた。

人に囲まれて………イリナファンクラブのメンバーかな。大変だなイリナちゃんは。


「そんな謝らなくていいですよ。僕達もさっき来たばかりですし、会長も宏美さんも今はいないですからね。………ね?雪さん」


翔石が私に話を振って来た。


「………………そうです。」


だから私はいつものように、たっぷりと間を置いて返事をした。




「だからぁ!カブトムシなんかよりもクワガタの方が強いに決まってんだろうが!!二刀流に一刀流が敵うわけがねぇ!!」


「なんだと!?それじゃ狩虎お前、両手で私に殴りかかってこい!!私が片手で応戦してやるから!!お前負けないんだよな!?両手だったら絶対負けないんだよなぁ!?」


宏美が空に向かって左手でジャブを放つ!!

スッゴイ速い!!1秒間に6発ぐらい駆り出されてるぞ!!こいつ人間じゃねぇ!!


「………や、やってやらぁぁあああ!!!」


パンパンパンパン!!!

ジャブが綺麗に俺の鳩尾に決まり、俺は一瞬で倒れた。


「分かったか狩虎。二刀流だろうとなんだろうと、圧倒的身体能力の前では全てが無意味。差異がないのさ。」


………これは身体能力とか以前に生物学的に差異があるんじゃないか?鮭が熊に喧嘩売ってるみたいな感じ。まぁまず食われるのは予想がつくよな。


「だからカブトムシはクワガタよりも強いんだ。分かったか?」


納得し辛い!!けど、これ以上逆らったら体がもたない気がしたので仕方なく認めてやった。


俺と宏美は暇すぎたので屋上で談笑していた。談笑と言っても本当にくだらない。さっきみたいなのが大半だ。建設的じゃない。


てか田所君が決断するのに2時間はかかると俺は予想しているので、あと1時間20分ほど俺達は時間を潰さなきゃいけない。

………えぇ、長すぎね?


「………仕方ない、遼鋭でも呼ぶか?あいつどうせ暇を持て余してるだろ。」


「さぁ、どうなんだろうな。遼鋭って色んなことに手を出してるからなんだかんだ言って暇じゃないと思うぞ。」


………まぁ、多趣味な人間だからな。しかもその数多い趣味をやり通すだけのポテンシャルを持っているのだから恐れ多い。


「じゃあどうするのさ。あと1時間ちょいを一体どう潰せばいいというのさ。」


「それはもう、私と楽しく会話をするしかないんじゃない?」


「楽しく会話と言ってもネタが………そう言えばまだ目の長さと鼻の高さを測れてなかったな。」


俺は胸ポケットから定規を取り出す。


「………狩虎、お前まさか」


「ぐっふっふっふっ………やらせてもらうぜぇぇえ!!!」


俺は定規を片手に宏美に飛びかかる!


「本当お前マジでやめろ!定規が生温かくて気持ち悪いんだよ!私の顔に近づけるな!」


だが、さすがの宏美である。俺の両腕をしっかりと掴み、俺の動きを止める。なんという握る力だ!手首の骨が砕けそうだ!


「ぶわっはっはっはっ!甘い。甘いぜ宏美!この俺は知的欲求を満たすためなら、鬼にもイカにもタコにも、椎茸にでもなってやるぜぇえ!!」


俺は自分の体ごと宏美の体を右に傾けるのと同時に、宏美の足を右足で払う!


ドシン!!

宏美の体が傾き地面に尻餅をつく!


「いったぁ………鬼は分かるがなんでタコとイカと椎茸が入ってるんだ!弱体化しすぎだろ!」


「弱体化!?俺の大っ嫌いなもの達を弱いと言っているのか!?」


俺は宏美の上に跨る。


「ああ、そう言えばお前の嫌いな食べ物だったな………って違う!私から離れろ!なんだよこの体勢!今ここで人が来たら勘違いされるだろ!!」


「知るかそんなもの!!俺はお前の顔のパーツを測れればそれでいいんだよ!!」


ちょっとずつちょっとずつ、俺の手が、俺の定規が、宏美の顔に近づいていく。


「気持ち悪い!本当に気持ち悪いからやめろ!」


宏美が必死に抵抗するが、ふははは!この俺の体重67キログラムを両腕だけで押し返すのはたとえ宏美であろうと難しいことだ。俺の定規が顔に近づいてく。

あとちょっと!あとちょっとだ!あとちょっとで顔を測れるぞ!!


ギギギ………

俺の定規と宏美の顔の距離が残り10センチメートルぐらいの時、屋上の扉が開かれた。


「………あ、あの、お楽しみ中のところすいませんでした!!」


なんと扉を開けて中に入ろうとして来たのは田所君だった。

だが、今の俺達の光景を見て、何かを察したのだろう。扉を閉めて屋上から出ようとしていた。


「ああ、まったくだ。こちとら欲求を満たそうとしている時……」


「そんなわけ!」


グン!!

俺の体が宙に浮く。宏美の両腕に持ち上げられたからだろう。………は?いや、えっと、え?

そのまますぐに宏美は立ち上がると、俺をまるでタオルみたいにぶん回し、


「ないだろうが!!」


田所君めがけて俺をぶん投げた!


「えぇぇえ!?なんっっ!!!」


ガシャァアンン!!!

そして、俺は高速で田所君に衝突した!

重要関連作品

カイが死んだあの事件とそれ以降をイリナの視点で追っていた作品。全4話約94000文字→https://ncode.syosetu.com/n6173dd/

カイが死んだあの事件とそれ以降を狩虎視点で追っていった作品。全15話約60000文字→https://ncode.syosetu.com/n1982dm/

小さな村で起こる不思議な事件。それを機にグレンと亜花が出会い、そこから始まった彼らのゆったりとした物語を書きました→https://ncode.syosetu.com/n4920ek/

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