占い師狩虎参上!
小説出さないと言いましたが、嘘です。
こんな期間だというのに少しずつ出していきたいと思います。更新ペースは遅くなると思いますが、仕方のないことです。
こんな小説に興味を持っていただき誠に有難うございます。
「元調理愛好会1年生の皆様は、田所さんが調理愛好会に復帰するのであれば自分達も復帰すると言っています。彼ら3人が辞めた理由は[田所さんが辞めるから、ついでに自分達も辞めた]だそうですので」
放課後、生徒会メンバーは生徒会室に集まり、昼休みの出来事を各々発表した。
「ひゃーー田所君。後輩に慕われてるじゃないの。俺と違って人望が厚くて羨ましいぜ」
俺は自分の席に深く腰掛け、生徒会室のドアの方をジーっと見続ける。去年の安いカレンダーが貼ってあった場所だ。絵柄とか全然なくて、1日の格言とか書いてあるやつ。[一日一善]とかそこらへんのありふれた言葉だ。今年のカレンダーは俺の後ろの壁に貼り付けられている。これもまた格言である。どうせあの壁山先生のよく分からない趣味だろう。あの人が持ってくるもので学生の趣味に合ったものがいままで一度も無かったからな。なんかちょっと抜けているのだ。抜けているというか頭がおかしいというのか………
「何言ってるんですか飯田さん。飯田さんはそれはもうそれはもう慕われているじゃないですか。ねぇ?皆さん」
コトンと俺の机にお茶を置いて、周りに呼びかける姫崎さん。
「………どうですかねぇ。会長、仕事全然しないですからね。慕われる要素なんて皆無じゃないですか」
「ん、そうだな。仕事全然しないし、学年集会の時はカンニングペーパー使って演説してるのにカミカミの棒読みだし、女子とまともに会話できないもんな。尊敬できるかってーと難しいかなぁ。」
「………私は全然、貶そうなんてそんな事、思っても言いませんよ。」
「……………男食っ気ありありです」
「ちょっと待ってくれ雪さん。俺をニューカマーみたく言うのはやめてください。真実でない事を言われるのは嫌なんですよ。貶されるのは本当のことですから別にいいですが」
「………………」
俺達のいつも通りのやり取りを見て、目を大きく見開く姫崎さん。
「あ、あの………飯田さんってこんなに自分を低く見てるんですか?ちょっと、予想以上で驚きなんですけど………」
そして、宏美によく分からない質問を投げかける
「そうなんだよ。狩虎は小学生の頃から泣きまくっちゃって自分に自信が持てないんだよ。んで自分に自信が持てないから人前に出られない。出たとしても噛みまくる。そのせいで人からの評価が下がる。また自信が持てなくなる。噛みまくる。これの悪循環さ。」
「な、なるほど………それは辛いですね」
「本当な………ここまでこじらせちゃったら治すのが大変でな。他人からの良い評価なんてまぁまず聞かないからさ。………大変だぞ鈴音ちゃん。こいつ、絶対防御の使い手だからな」
宏美は姫崎さんにニヤリと笑いかけた。
「………まぁ、俺がダメなやつだってことはよーく分かったからさ、今回の調理愛好会の情報をまとめようか」
俺は机の上のペンたてからボールペンを抜き出す。
「調理愛好会は現在部員が1名で、部長の木原明美さんのみである。そして、復旧の為に元部員の4名。1年生3人と2年生1人を引き込もうとしていて、1年生3人は2年生の田所君が再加入するのであれば入ってやっても良いと言っている。そして、田所君は木原さんに惚れていると…………」
「…………最後いらなくない?」
俺は宏美の言葉を無視して紙にサラサラと情報を棒人間をまじえながら書き込んでいく。
「と言うことは、田所さんさえどうにか出来れば部活を立て直すことはできると言うことですね。」
そう言うことだ。田所君さえどうにかできれば良いのだ。立て直しの目処が立ってきたな。
「どうするんだ?私なら[お前の好きな人をばら撒かれたくなかったら部活に入っちまえ]って脅すな。あいつ小心者って感じがしたから、脅したらすぐだと思うんだよ」
「………宏美、それは短期的な見方をすれば最適だけれど、長期的に見れば悪手だ。イヤイヤな気持ちでやってたらどうせいつか辞めてしまう。そしてまた今回みたいなことが起こって、今度は辞めた奴らを再加入させることもできないから学校駆け回って4人も集めなきゃいけなくなるんだ。つまり二度手間で二度目が最悪なんだ。それはなるべく避けなきゃいけないことだぜ」
昔の偉人も言ってたことだ。目先の利益に囚われて、その後の事を見れずに結果損することほどバカバカしいことはないと。
………まぁ、それが1番手っ取り早いことは確かなんだけどな。
「僕なら逆ですね。木原さんに田所さんに対して意識があるような行動をしてもらって、田所さんをその気にさせますかね。これなら田所さんは嫌な思いをしません。木原さんは少し本意ではないことをさせられて気を患うかもしれませんが、目的の為に仕方のないことだと割り切ってもらえば耐えられるでしょうし」
「……………ミートゥー」
翔石君と雪さんはこの案か………
「………うーーん、確かに良い案ですけれど俺は嫌ですかね。田所君が可愛そうだし、木原さんにも微かにだけれど嫌な思いをさせてしまう。こんな微妙なことで胸にしこりができてしまって一生引っかかって生活なんて嫌でしょう」
「何言ってるんですか会長。そんなことに一生気を使うと思ってるんですか?世間知らずですねー。みんながみんな会長みたく誰に対しても気を利かしてどんな些細なことにも心を痛めるような善良な人間なわけがないじゃないでしょうが。」
「…………私も、そう思います。」
イリナまで賛成してきやがったぞ
「目的の為なら手段を選ばない。それが人間ですよ。とくにこんな勉強しかできない学校でなら顕著に見られるじゃないですか。」
「………酷い言い草じゃないの。まるで人間が獣であるみたいに………まぁ、うん。獣だな。ごめん、否定できないわ。所詮人間も動物だよ。理性があるとか言ってるけど理性以外で動いてるやつの方が多いもんな。確かに翔石くんの言う通りだ、それに関しては俺は何も言えない」
勉強しなきゃいけないのにゲームに走る人間とかな。あれはただ快楽を貪って、長期的に見た大きな幸福を逃している。それほど理性的でないこともあるまい。
「けれどさ、それこそ特に、全員が全員そうだと決めつけるのはいけないことだと思うぞ。俺が思うに木原さんは職人気質だ。他の人よりも感性が敏感なんだよ。ああ言う人は些細な感情で色んなことを感じてしまうと思うんだ。俺達が僅かだと思うような小さな罪悪感が、後々の彼女の人生に影響を与えかねない。………まぁ、彼女の性格がこうであると決めつけるのも正しいことじゃないけれどね」
俺みたいな人間が言うと価値が下がるが、木原さんは料理に関しては天才的だ。将来、プロとして活躍しているかもしれない。プロとかのレベルになるとメンタル面で差が出てきてしまう。それだと言うのにそんな中途半端なよく分からない罪悪感で質が落ちて評価されなくなってしまうのは、宏美が言う通り悲しいことだ。
考え過ぎかもしれないが、考え過ぎが何事においても丁度良い。人間に残された武器は[考えること]と[生み出すこと]の2つ程度なのだから。
「………姫崎さんとイリナさん。2人はどうですか?何か案を言ってください。俺は全員の意見を尊重したいんです。全員の意見を聞いて、全員で決めたいんですよ。………まぁ、宏美や翔石君と同じ意見だと言うのならそう言ってください。無理して変な意見を言われても恥かくだけですからね」
そして、話をほとんど黙って聞いていた姫崎さんとイリナに話を振る。
「………やっぱり、おかしいですよこんなの」
ボソッと、姫崎さんが何かを言った。
「何か言いましたか姫崎さん?」
「………いえ、何でもありません。私の意見ですよね。………そうですね、私なら2人をくっつけちゃいますかね。やっぱり何事においても恋愛感情って言うのは大切じゃないですか。2人が互いに愛し合う………うーーん!最高ですね飯田さん!」
俺の方を見て目を輝かせる姫崎さん。
………なんで?
「………私もそれが良いです。それの方が後腐れもなくて成功さえすれば今後も部活の人数が減るような事もないと思うんですよ。」
イリナもこの意見か
「成功[さえ]すれば………だけどね。これは確かに成功さえすれば最高だけれど、失敗したら終わりだ。また一から人集めになる。言ってしまえば賭けだ。伏せカードが何かもわからずにリミッター解除で攻撃しているようなものだ。死ぬか生き残るか、まさに相手しか結果を知らない博打だよ」
「…………で、狩虎。お前の意見は何なんだ?」
そして、宏美は俺の顔を見てきた。
分かってるぞ。って感じの顔だ。付き合い長いとこういうところで直ぐにバレてしまうんだよなぁ。
「………やっぱりよ、やるなら最高の結果を残さなきゃいけないと思わないか?例えそれには最悪のリスクがあろうとさ。」
「その最悪のリスクというのが僕からすれば本当に最悪だと思うのですが?」
「ああ、俺も最悪だと思うよ。なってしまったら俺たちの1、2週間。もしかしたら1ヶ月が消えてしまうだろうな。………けれどさ、やる前からそのリスクに怯える必要はないだろ?無理っぽかったら方針を変えて妥協策にすれば良いんだからさ」
「………つまり、くっつけるのと同時並行で木原さんに探りを入れて脈があるかどうかを確認すると?」
「ああ、同時並行だ。別々に行うと時間がかかり過ぎてしまう。2人をくっ付けつつ、探りを入れ、脈ありならくっつける。脈なしなら木原さんに演技をしてもらうか、田所君を脅迫する。……これが俺の意見だ。」
みんなの意見をまとめただけでズルイ。と言われそうだが、俺はそれが悪いことだと全然思わない。まとめることもまた大切なことなんだ
「それじゃあどの意見にしますか?」
「………全員の意見でいいんじゃないですかね。」
翔石君がポツリと言う
「そうだな。後腐れがないもんな」
誰1人として[俺の意見]とは言わない。うむ、それでいい。これはみんなの意見だからな。[俺の意見]だと言ってしまうと、それこそ後腐れが出来てしまう。
他の人たちも賛成してくれる。
………よし、意見はまとまったな。
「それじゃあさっさと行動しよう。何人かは通常業務に回ってくれ。……そうだな、翔石君と雪さん、あとイリナさんが良いかな。君達作業効率がいいからね。んで宏美と姫崎さんは木原さんから色々と情報を引き出してくれ。君達フレンドリーだからさ、楽しく会話して何となく脈アリかなしかを探ってくれない?気づかれないようにね」
ピッピッと全員の役割を紙に書く
「んで俺は田所君だ。君達、ちゃんと仕事してよ?俺サボるからさ。」
俺は机の横にある自分のバッグを持ち上げる。
あ、でもそうか。俺毎日仕事してないからこれといったマイナスはないのか。
「それじゃあまた明日ね」
俺はさっさと生徒会室を出て、田所君の教室に向かった。
「おーっとっとっと!田所君!そのまま帰るんじゃないよ。」
ガッ
俺は、下駄箱で靴を履き替えている途中の田所君の肩を掴む。
「!?……な、なんだ。生徒会長ですか。驚かさないで下さいよ」
「悪いねぇ。俺って気が利かなくってさ。ほら、よく言うじゃん?生徒会長ほど気が利かないって」
「………言わないですよね?」
「うん、言わない。俺も今日初めて言ったからね。」
「………で?なんですか。僕に一体何の用ですか」
タァン、タン
田所君は靴を床に放り投げる
冷たいなー。宏美がいる時はもうちょっとオドオドしてたんだがな……
「何の用って……分かってるくせにねぇ。部活だよ部活。君に再加入してもらいたいって話さ。昼間にしただろ?」
「しましたけれど、昼間も言ったはずですよ。調理愛好会にはもう入りませんって。」
田所君はしゃがみ、靴を履き始める。
「………なんで辞めたのか俺にはイマイチわからないんだよ。部活の活動が酷いわけでもないし、話を聞く限り部長が厳しいわけでもないんだろ?それに木原さんに惚れてるんだったら一層やめるなんてこと………」
「ちょっ、あんた!何言ってるんですか!」
俺の口を慌てて塞ぐ田所君。
ここは下駄箱だ。周りには大量の生徒がいるからな。ここでそんなことを話されたら情報があっという間に拡散してしまうよな。そりゃ俺の言葉をシャットしたくなるよな。
「………いやらしい人ですね。これで主導権でも握ったつもりですか」
「主導権?ごめん、俺ちょっとバカだからそう言うのは分からないんだよ。頭良さそうなことをするのは宏美の役目だ。俺の役目じゃない。………で、どうする?場所を変えて話でもする?そこら辺のお店にでも行ってみる?」
「………仕方ないですね」
そうして俺達は近くのマックに行くことになった。
「………しかし、僕のイメージでは生徒会長は情けなくて初対面の人とは全然喋れない口下手人間だと思ってたのに、案外喋れるんですね。」
マックに行く途中に歩きながら田所君が聞いてくる。
「ん?ああ、俺は内弁慶で多人数相手に会話がするのが苦手なだけなんだ。引っ込み思案なのよ。」
「………生徒会長に向いてないと思うんですが」
「向いてないね。……だからさ、タメ口でいいんじゃないかな。てか生徒会長だから。とか、副生徒会長だから。とかで敬語を使う必要はないんじゃない?同い年なんだからさ」
「………いいんですか?」
「いいよ別に。俺よりも優れていることがひとつでもある人間は全員俺に対してタメ口OKっていうのが俺の中でのルールだからね。」
「優れているって………一体どこらへんがですか」
「俺よりも女性と喋れているところだな。あとちゃんと恋愛してるところ。俺なんかよりもよっぽど優れていると言えるね」
ピクッ
田所君の肩が一瞬跳ねる
「…………そ、そうですか?そう思いますか?それじゃあ仕方ないですね。タメ口にしようかな」
「ああ、そうしてくれ。」
そしてマックに辿り着き、各々何か品を頼む。俺はテリヤキバーガーを頼んだ。田所君は普通のバンバーガーを2つ頼んだ。
「やっぱりバンバーガーと言ったらテリヤキバーガーだよなぁ。ソースが美味いんだよなぁソースが。この甘めのソース、持ち帰って成分研究して作りたいぜ!」
「………そうかな。照り焼きソースなんて作ろうと思えば簡単に作れるじゃん。味が複雑じゃないからさ」
「………へぇ。これって複雑じゃないのか。俺の舌って狂ってるからさ、味がよく分からないんだよ。マヨネーズが入ってるってことは分かるんだけど………」
「…………ぷっ、あっはっはっ!マヨネーズって!それはソースに入ってるんじゃなくて、ソースと一緒にバンバーガーに塗られてるんだよ!原材料じゃないよ全然!」
バンバン!と机を叩いて笑う田所君。
「ほーーなるほどねぇ。確かにそう言われれば、マヨネーズとソースが単体同士で入ってるな。………やっぱダメだなぁ、俺って!あっはっはっはっ!!」
俺は笑いながらテリヤキバーガーを食べた。田所君も笑いながらバンバーガーを食べた。
「…………それで、部活についてな」
「それよりもさ、実は俺って占いが得意なんだよ。部活の話をする前に、少し俺に占われてみない?」
「胡散臭いなぁ。どうせなんかの雑誌の裏に書いてあるようなしょうもないものでしょ?」
「そんなわけないだろう。俺は雑誌を読まないタチでね、そういうの知らないんだ。………いいか?俺がするのは自分独自の占いだ。これが結構当たるんだよ。生徒会役員達に披露した時なんて、的中率が100%でさ。しかもそれが役員達にとって凄く大切なことを占ってたんだ。彼らの一生を左右するような凄いことでさ。………どうよ、やってみない?部活の話なんて田所君からすれば気を落とす嫌な話題だろ?それの前に元気を養っておこうと思わないか?」
的中率100%ねぇ………宏美にやって当たっただけなんだけどな。それでも、まぁ、確率は100%だ。嘘は全然ついてない。
田所君はついでに買っておいたジュースを飲みながら真剣に考えている。
が、すぐに決心がついたのだろう。快く引き受けてくれた。
「いいねぇいいねぇ。………それじゃあまずルールから説明するぜ。」
「ルール?結構凝ってるんだね」
「タネと仕掛けだらけだからな。ルールを設けておかないとそのタネも仕掛けも発動できないのよ」
「自分で言ってしまうの……」
「じゃあ逆にタネも仕掛けもないなんて言って本当に信じるか?」
「全然」
「ほら、信じてもらえないんだからタネも仕掛けもあるって言っておいたほうが楽なんだよ」
俺はバッグからルーズリーフとボールペンを取り出し、机の上に置く。
「ルールその1、[本当だったら素直に認める。]これほど大切なことはないな。」
サラサラと紙に書く。
「ルールその2、[占い中はスマートフォンを使ってはいけない。]これもまた重要なことだ。」
俺は田所君の目をしっかりと覗き込む。
「そして、最後のルール。[例えどんな結果であろうと、イチャモンはつけない]これもまた重要なことだ。どうよ、簡単だろ?」
俺は全てのルールをデカデカと書かかれた紙を田所君に渡す。
「………1、2はともかく最後のルールはおかしいとおもうんだけど」
「これはね、俺は本当の占い師じゃないからさ、デタラメな結果を占ってしまうかもしれないんだ。その時は罵倒しないでってことね。アマチュアの行いだから優しく見守ってあげてねってことさ」
俺はボールペンを田所君の前に置く。
「それじゃあルールを把握してくれたと思うから、本格的に占いの方法を説明していくぞ。」
俺は、バッグからまたA4サイズのルーズリーフを出して田所君の前に置く。
「まず、田所君がこの紙に適当な4桁の数字を書く。0〜9の数字だったらなんでもいいよ。そして、それを俺が見て君を占う。………どうかな、簡単だろ?」
「…………」
田所君は俺のボールペンをじーっと見ていた。
「あ、そのボールペン握りやすいでしょ。結構高かったんだよ。俺ってボールペンで勉強するからさ、奮発してお高めのを買ったんだよ。いやーーシャーペンだと俺の筆圧と、書くスピードに耐えれなくてシャー芯がブチ折れるんだよね」
「………なるほど、通りで握りやすいわけだ。………わかりました、それじゃあ書いてみるかな」
そう言うと田所君は紙に向かってボールペンを走らせる。
シャシャシャシャ!
「はい、どうぞ」
田所君から受け渡された紙には[0037]と、紙全てを使ってデカデカと書かれていた。
「ぜ、0037だとぉ!?」
バシィ!
俺は紙を田所君に投げつけた!
「な、なんてことだ………0037だとぉ。こいつはやばいぜ。」
俺は頭を抱えてアバアバし始める!
「え、え?………え?ちょっ、何がどうなっているんですか?」
それを見て田所君も狼狽える。
「や、やばいんだ………これはマジでヤバいんだ。この字の大きさで0037はマジでヤバいんだ………」
「な、なに!?なんでそんな不安になるようなことをいうん!?お、教えてくださいよ!一体何が書いてあったんですか!」
俺の襟首を掴みブンブン振る田所君。
「ま、まぁ落ち着け。いいか?落ち着くんだ。田所君。そして俺も、落ち着くんだ。まずはとにかく落ち着くところから始めるんだ」
俺は田所君に静止を促す。
そうすると、田所君も渋々と俺から手を離してくれる。
「………もしかしたら俺のミスかもしれない。俺はアマチュアだ。俺の占いにはミスがあるかもしれない。………だから、いいか。少し確認させてくれ。」
心が落ち着いてきた田所君に向き直る。しっかりと、目を見つめる。「これからマジで大切なことを聞くぞ」と、言うかのように目を見つめる。
「………田所君。君、ここ最近寝れてないんじゃないか?」
「………!!!な、な、なんでわかるんですか!!!」
「あーーー…………そうか。やっぱりか…………」
俺は右手で顔面を抑え、項垂れる。
それを見て、田所君はゴクンと唾を飲み込んだ。
「だ、だがまだだ。今ので確証はもてない。正直さっきの質問はテキトウに言っていれば当たるような当たり前のことだからな。………他のことを聞いてみるか」
俺は、スーーッと、深呼吸をした。
「………君、ここ最近のテストで平均10点ほど点数が下がっているんじゃないか?」
「……………ま、まぐれですよね?」
俺は、田所君のことを直視できなくって、彼が飲んでいたジュースの容れ物をずっと見つめる。
「な、なんでこっちを見てくれないんですか…………やめてくださいよ、そうやって不安にさせるの…………」
苦笑いを浮かべながら田所君が突っ込んでくる。
だが、それでも俺は田所君の目を見てやれなかった。
まさか、こんなことを占ってしまうなんて………まいったなぁ。彼の事を見てらんないよ。だ、だが、間違いかもしれない。全然間違いかもしれない。
「ほ、本当、早くこっちを見てくださいよ。なんでずっと飲み物を見てるんですか?飲みたいんですか?」
俺ははぁーっと、深いため息をつきながら、飲み物を見続ける。哀れむように、見続ける。
「…………は、はやく何か聞いてくださいよ!ふふふ、不安になるじゃな、ないですか!ただですらここ最近悩みだらけだってのに!!」
…………なるほどねぇ。
「ま、まぁ落ち着くんだ。そう声を荒らげるんじゃない。何よりも大切なことは冷静であることだ。………それじゃあ君が落ち着いたら、最後の質問をするぞ。これは核心をついた質問だ。これが当たるか当たらないかで俺の占いが当たっているかどうかが決まる。」
俺は田所君をなだめる。すると、すぐに田所君は深呼吸をして気持ちを落ち着かせた。
………よし、いいな。
「…………聞くぞ」
ゴクリ
田所君が音を立てながら唾を飲み込んだ。
「……君さ………ここ1ヶ月の間にマカロンを沢山食べただろう。10……いや、違うな。そんなに少ないはずがない。30個は食べたんじゃないか?」
ビシッと、俺は3本指を立てて田所君の前に突き出す!
「な、な、な、な、………」
田所君は俺の言葉を聞いてから、[な]ばかりを言うようになってしまった。
「………お、おい。返事をしてくれ!まさか田所君、俺が言ったことが当たっていたんじゃ…………あっ、ちょっと待って!」
田所君は自分のバッグをひっ掴み、ダッシュで店を出て行ってしまう!!
「ちょっと待てよ!」
俺は彼のトレーと自分のトレーを下げて、後を追いかける!
はぁはぁはぁ……………
10分ほど走った。田所君は結構足が速かったから後を追うのが大変だった。けれど、スタミナが切れたのだろう。俺の家近くのバス停で立ち止まり呼吸を整えていた。
「………田所君。そう慌てるなよ。」
「あ、あわてますよさすがに!人生を左右するような占いなんですよね!?しかもそれが酷いなんて言われたら、どんな人でも取り乱しますよ!」
「お、落ち着くんだ田所君。何も俺の占いが当たっているかどうかなんて分からないじゃないか。俺はアマチュアなんだ、当たっている可能性の方が少ないんだぞ」
「で、でも!3つも僕の事で的中させたじゃないですか!それこそ的中率100%だ!………どうせ、あんたの占いは当たってるんだよ!」
真剣な顔で怒鳴り散らす田所君。
………うへーーマジにしてるよ。全部推測と勘だってのに。
睡眠不足なんて恋しているやつと死について考え始めた子供に典型的に現れる症状だし、さっきのマカロンの事だって彼の本気度を確かめる為だったのに………まさか当たってしまうなんてな。
占いなんて嘘だよ嘘。それっぽくルールとか設けたけれど、ルールなんて必要なかったし、紙に数字を書いてもらったのもテキトウだ。正直そんなことに意味はないんだよ。占いをするに至るまでの君の行動を観察して推測を立てただけなんだよ。
「もうここ最近は散々だよ!全然寝れないし、勉強は捗らないし、お金はすぐに消えるし、タンスの角に小指をぶつけるし!よくお腹すくし!あんたから不幸になりそうな占いをされるし!」
彼は1ヶ月前から後悔して考え続けていたんだ。それがここ30分でよーくわかった。本当は彼は部活を辞めたくなかったし、木原さんから離れるようなこともしたくなかったんだ。「ちゃんと恋愛している」で少し反応があった。つまり田所君はそのフレーズに何かしらの意識があるってことだ。そして、反応するやつに多いのは、意識していて、本当は[ちゃんとした恋愛]をしたいんだけれど、できてないってことだ。それを確かめるためのマカロン。
マカロンは木原さんの十八番といっても過言ではないほどの一品だった。販売の時もどの商品よりも推していたからな。それを田所君は忘れられなかったのだろう。あの味を、木原さんの味を忘れられなかったのだろう。だから、店で買ってきて食べていた、と…………木原さんの味には到底及ばないであろうことを分かりながら、食べ続けたのだろう。少しでも木原さんに近づきたくて。
これで確定だ。田所君は木原さんの事が大好きだ。けれど、何かしらの理由で部活を辞めた。
それを取り除けば部活に必ず戻ってくる。これは確証を持って言える。
俺は未だ愚痴を垂れる田所君の所に歩み寄る。
何か言葉をかけなくてはならない。幸い、占いの結果をまだ俺は言っていない。それを利用して田所君を部活動復帰、もしくは木原さんとくっつけるところまで持っていかなくては…………
俺はポンと、彼の肩に手を置いた。
「………落ち着くんだ田所君。俺はまだ占いを言っていない。」
「だから!それもどうせ俺が不幸になるような……」
「そうだ、不幸になる。俺の占いは的中率が100%で、不幸になると言われたら絶対に不幸になるんだ。それは変えようのない事実だ」
俺はストレートに、まるでそれが真実であるかのように、嘘をぶつける。
「ほ、ほら!やっぱり!かえようが……」
「だがな、俺の占いにはもう1つ特徴があるんだ。」
俺は、大きく息を吸った。
「それはな、俺の占いは、原因と結果を同時に占うんだ。結果だけじゃない、原因すらも占ってしまうんだ。………これが何を言っているか分かるか?」
「………ま、まさか!」
田所君が大きく目を見開いて、口を開く、
「ああ、そのまさかだ。………俺の占いはな、避ける事ができるんだよ。お前が頑張って行動すれば、避ける事ができるんだ。………[お前、このまま自分の気持ちを隠して逃げ続けていたら、お前の人生の中で最高の奥さんを取り逃がしちまうことになるぞ]。」
俺は、ポン。と、もう一度田所君の肩を叩いた。
「最高の………奥さん…………」
「ああ、最高の奥さんだ。俺はそれが誰だか分からない。最初は木原さんかと思ったんだが、木原さんが好きだったらお前は部活なんて辞めてないもんな。お前には別の好きな人がいるんだろう。………ただ、そいつだけは絶対に取り逃がすな。お前の人生を変える最高の人間だ。それだけは確信をもって言える。」
占いが出来ようができまいが、木原さんが最高の奥さんであることなんて誰だって分かることだ。料理が絶品で顔も良いんだぜ?木原さんが最高の奥さんじゃなかったら一体誰が最高の奥さんだというのだ。
「もしさ、こんなこと言うのもあれだけどさ、覚悟決まって好きな人にアタックかまそうと思ったならさ、生徒会にきなよ。俺達は全力でお前の恋路を応援して支援して、絶対に成功させてやるからよ。」
俺は自分の家の方を向く。
「最近は不幸だらけだった?それじゃあ幸福に満たそうじゃないか、今日以降をさ………それじゃあね、また明日」
俺はそのまま自分の家に向かって歩き出した。
後ろから「…取り逃がすな……」と言う言葉が聞こえてきた。
………本格的に応援したくなってきたな。
重要関連作品
カイが死んだあの事件とそれ以降をイリナの視点で追っていた作品。全4話約94000文字→https://ncode.syosetu.com/n6173dd/
カイが死んだあの事件とそれ以降を狩虎視点で追っていった作品。全15話約60000文字→https://ncode.syosetu.com/n1982dm/
小さな村で起こる不思議な事件。それを機にグレンと亜花が出会い、そこから始まった彼らのゆったりとした物語を書きました→https://ncode.syosetu.com/n4920ek/




